今朝、「同伊(トンイ)最終回直前スペシャル」を視聴しました。
最終回放映の日に「気持ちの良い朝」で特集されたものですが、
yocchanさんのドラマ生活BLOGに日本語字幕付き動画リンクがあります!
出演者へのインタビューやNG集などで構成されたとても楽しい番組ですよ(^^)

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何度も見ているドラマ、どのシーンにも見覚えがありますが、
また泣いたり笑ったり…、やっぱりいいドラマでしたね。
NGシーンでは、チ・ジニ氏がNG王と…!
でも、「イ・ビョンフンの世界」を見た後では、当然でしょうと思えます。
ただでさえギリギリの撮影スケジュールなのに、
それでも脚本の90%を書きなおさせるような監督の下では、NGがないほうが不思議。
幼いヨニングンもよくセリフを覚えたものです。
チャン・ヒジェ役のキム・ユソクは、このドラマで印象的な演技を披露した一人ですが、
年末の演技大賞で、助演俳優部門で黄金演技賞を受賞!
そのとき受賞スピーチで彼の流した涙がまだ心に残っていて…。
キムユソク、"賞受けると知っていた"重要な所感を発表「涙浮かべ」
それ以来、憎々しい悪役というよりちょっと素敵に見えるようになってしまいました(^^)
スペシャル番組や演技大賞の楽しみの一つは、役柄と違うその俳優さんの顔が見えること。
チェ尚宮役のイム・ソンミンはそのままでしたが、
エジョン役のカン・ユミは、だいぶ違う印象でした。
ハン・ヒョジュも結構アネゴ肌なんですね^^
そして、イ・ソヨンとは仲良し!?!
そうそう過去にチャン・ヒビンの毒を飲むシーンも一挙に!
キム・ヘス、イ・ミスクは知っていましたが、これほどたくさんとは…。
そして、他では皆飲むのを拒んで無理やりスッカラ?で口をこじ開けられてました。
同伊では穏やかな最後をイ・ソヨンが演じていましたが、
おそらく実際は違っていたのでしょうね。
他にもいろいろ!
同伊ファンの方、必見のスペシャル番組です♪
王から平民に身分下落(?)を経験した俳優チ・ジニ(39)が、ハン・ヒョジュをはじめとする‘同伊’の同僚俳優らと昼間酒集いを作る予定だと明らかにした。
チ・ジニは20日午後、ソウル三清洞(サムチョンドン)のあるカフェで行ったインタビューで、最近放映終了したMBC TVドラマ‘同伊’を終えた所感を伝えた。この日チ・ジニは、“ドラマ後最も記憶に残ったのはやはり同僚俳優ら”としながら、数ヶ月の間苦楽を共にした同僚俳優らとの厚い義理と友情を表わした。
引き続き彼は、“互いに情がとても多く、着実に連絡して過ごそうと意見が集められて昼間酒兼登山会を作ることにした”と話した。この会の構成員はチ・ジニをはじめとして、ハン・ヒョジュ、イ・ソヨン パク・ハソン、ペ・スビン、チョン・ジニョンなど‘同伊’に共に出演した6人が主軸になる予定だと。
周辺の人々との関係を重要視するというチ・ジニに、ハン・ヒョジュ、イ・ソヨンなどとの関係を尋ねた。彼は“演技に対する助言は私の役割でないと考える。ただドラマ開始前、全員一緒にいる席で‘私たちは同伊のためのドラマを撮影している。後のほうでもがっかりしないて’で話してくれた”と答えた。
俳優らのあいだのチームワークは最高だったが、劇に没頭していたら、粛宗駅のチ・ジニを間に置いて女優らの間に妙な神経戦があったことも事実.
“皆作品に十分に没頭してみると、知らず知らずそのような競争構図がないことはなかったようだ。同伊(ハン・ヒョジュの方)ラン撮影して中間中間冗談を言ってみるならば、あの遠くからヒビン(イ・ソヨンの方)がひそやかな目つきで見つめていた。(笑い)”
一方チ・ジニは‘同伊’を通じて人気が急上昇して最近化粧品広告撮影まで終えた‘チベット女官’に対しても言及した。
“あまりにもに眼に触れたし毎日見る人々だと当然分かった。ただし突然大衆の集中と関心によりその方に被害が行かなかったら良いだろう。”
1701年10月8日 御命により就善堂に腸薬(毒薬)を持っていく都承旨。
しかし、ヒビンは「世子を殺せ!彼を殺すまでは、腸薬など飲まぬ!」と。
そして、賜薬の入った器を投げ捨て、こう言います。
「国母である私に、何をする。世子を殺すまで私に手出しはさせぬ。
殿下につたえよ。私は絶対に賜薬など飲まぬと…。」
そして、さらに尚宮を通し、ヒジェと何とか助かる道を探そうとするヒビン。
ヒジェに金を掴まされた臣下達は、粛宗にヒビンを助けるよう上奉を。
2日後の10月10日、粛宗は上奉を出した者を処罰し、再度ヒビンに腸薬を。
しかし、前回同様ヒビンは、器を叩き割り飲むことを拒みます。
怒った粛宗は、自分で毒を飲ませてやると就善堂へ。
世子は、淑嬪に母を助けてと頼みに行きます。
それを止める嬪宮。
しかし、淑嬪は「もう遅過ぎます。」と世子を追い返します。
途中、就善堂に向かう粛宗に出会った世子は、
「母を助けてください。私が代わりに罪を償います…。」と嬪宮と共に土下座を。
しかし、粛宗は
「二人とも部屋に戻っておれ。これは家族の問題ではなく王室の問題なのだ。」
就善堂に着いた粛宗は、中のヒビンに声をかけます。
「罪人はただちに外に出よ。引きずり出されたいか。」
仕方なく外に出てきたヒビンに、粛棟は言います。
「自分の罪は自分でわかっているだろう。お前が罪を償ってこそ世子が救われるのだ。臣下が見ている。国母としての威厳を示せ。」
ヒビンは言います。
「殿下、お会いするのは実に久しぶりです。妻が夫に寄り添いたいと言うのは自然なことです。せめて3日、いえ10日に一度でも来てくださったら…。殿下の傍にいたいと思う妻の気持ちを責めないでください。一人の女が、夫を慕うのは罪ではありません。それは王妃とて同じことでございます。殿下、そんな私に、なぜ死ねなどとおっしゃるのですか。どうか助けてくだださい。世子を傷つけないでください。」
「世子の話はするな!」と粛宗。
「私はただ世子と殿下にお仕えし、末永く暮らしたかっただけなのです。かつて、優しく私を慈しんでくださった殿下が、なぜそんなむごいことをなさるのですか?私を愛して下さったことを思えば、こんな仕打ちはできないはずです。私は、百歩譲ってもこのようなことは受け入れられません。」
その言葉に怒りを表す粛宗。
「無礼にもほどがある。実に極悪非道な女だ。おい、こやつに毒薬を飲ませよ。今すぐに。何をしておる。」
彼女に毒を飲ませようとする内侍と兵士達。
ヒビンは、それでも必死に抵抗を、そして叫び続けます。
「世子を殺すまでは、私に近づくな。下がれ、下がらぬか!!!」
「手足を縛りつけても毒薬をのませるのだ!」と粛宗。
彼女の抵抗に手を焼く男達に、今度は、「戸をはずして胸を押さえろ!」と粛棟。
「世子を殺してから来い!」と乱暴に叫び続けるヒビン。
「口をこじあけて飲ませろ。」と粛棟。
兵士は、棒を彼女の口にねじ込み、そこに毒薬を流し込みます。
「内侍は、戸をはずして下がれ!」と粛棟。
ようやく大人しくなったヒビンは、最後の力を振り絞りこう言います。
「殿下、私は殿下だけをお慕い申しておりました。殿下のご寵愛を願って参りました。殿下、私の不忠をお許しください。殿下、私達の世子に会いとうございます。世子に会いとうございます。世子に、世子に合わせてください…。」
壮絶な抵抗劇を続けた禧嬪。だが力尽き、自らの罪を許してほしいという言葉を残し、王世子の腕の中で死んでいく。王妃に続いて禧嬪まで失った粛宗は、明かりを消した部屋で1人、禧嬪に対する思いにむせび泣く。同じく、母を失って深い傷を負った王世子に粛宗は、国家のために仕方なく下した決断だったと告げた。さらに、王位を継承する者としての威厳を示すよう励ました。ジヌの尋問によりキム・テユンは口を開き、ヒジェの罪が明らかになる。ついに栄華を極めたチャン一族は、ヒジェの処刑を最後に絶え果て…。
とうとう終わってしまいましたね。
昨夜も午前1時ごろ、最初にアップされた動画で視聴しました。
セリフはほとんどわからないながらも、綺麗にまとめあげたなというのが最初に思ったこと。
視聴率最優先の韓国ドラマでは、毎回視聴者獲得のためにあれこれ策を講じるものの、
最終回でがっかりということが多いように思うのですが、
そういう意味では、美しくハッピーなラストでよかったのではないかと思います。
ただ59話同様、ここまできてもまだなぞ解き~~!?!と^^
これはもう、監督の意地でしょうかね(笑)
数字的には、イマひとつ…。
TNS全国版では、サッカー中継に次いで第3位でした。
AGBニールセンでは、24.3%で1位だったようですが。
とにかく3月から約7カ月間、
途中いろいろあったにせよ十分楽しませてもらいました。
そして個人的には、とっても勉強になったドラマでした。
出演者、そして監督・スタッフに心から感謝したいと思います。
途中から、急に存在感のなくなっていたチョンスも、
最後を締めくくる重要なシーンを担当できてよかったですね!
トンイの子役のキム・ユジョンが、トンイという子供の役で再登場してきました。
「欲望の花火」でも見ていましたが、役者として急成長、これからに期待大です。
人気者クムも最後まで顔を見せ、さらに英祖も出てきました。
ケバジョン粛宗も復活!
チ・ジニは、最初から最後まで素晴らしかったですね。
トンイは、最後までワンダーウーマン…^^。
演技論なども飛び交っていましたけれど、ハン・ヒョジュもよく頑張りました。
役柄上仕方がありませんが、ラストには登場しなかったオクチョン!
イ・ソヨンは、演技力・存在感ともに十分に魅力を発揮していましたね。
個人的には、ソ・ヨンギが一番好きな役どころでした(^^)
チョン・ジニヨンは、「王の男」と「同伊」しか知らないので、
現代劇の彼も見てみたいところ。
ハン尚膳のことを忘れてました(^^;)
彼が一番存在感があったかも^^
よく考えてみると、よくこれだけの内容を1時間に盛り込んだものだと、
あらためて感心するばかりです^^
後は、字幕を翻訳するときに、最後のセリフをじっくりと味わうことにします。
さて、来週からはどうしたものか…。
それは、すべての翻訳作業が終わってから、ゆっくり考えることにしましょう^^
最終回の復習はこちらで!
レモン色の雲:第60回あらすじ
チャイミのベッドストーリー:同伊最後の回 - 別の同伊が登場した理由
穏やかな表情で昔の記憶をたどるトンイ。
ジュシクとヨンダル。
「早くしてくださいよ!」
「私の靴はどこだ?」
「ナウリがそんなふうだから、私達の媽媽が…。」
「だが、靴を探さねばならんのだ!ヨンダル、どうして世の中にはこんなことが起こるんだ?ずっと案じていたのだが、とうとう私達の媽媽は宮中を出ることになってしまったんだぞ。」
「知りませんよ!先に行きますよ。ついて来たければ、来てください。」
トンイは、思い出の詰まった掌楽院の楽器倉庫へ。
懐かしそうに、ヘグムを手にするトンイ。
トンイの荷物の運び出しを見つめるポン尚宮に、エジョンは言います。
「まだ遅くはありません。どうか媽媽を説得してください。」
「説得?誰が、私がか?誰を、媽媽を?そんなこと言わないでよ。私はとっくに諦めたわ。」
「どうして媽媽はああなんでしょうか。こんないいところを出て行って、わざわざ辛い思いをしなくても…。」
「私だって同じ気持ちよ。これから楽しく暮らすというときに…。まったく…。」
「それなら、行って最後の説得をしてください、ママニム!」
「ちょっと…。殿下でさえ説得できなかったのに、どうやって私が媽媽のお気持ちを変えられるって言うのよ。」
そこにインウォンがやって来ます。
にこやかに彼女を迎えるトンイ。
スクチョンはまだ暗い表情で考え続けます。
インウォンは言います。
「どうか考え直してくれ、淑嬪。私宮での暮らしは、いろいろと不便であろう。王室での暮らしの後で、どのようにそれに耐えていけるというのだ?」
「媽媽。私は班村で生まれた賎民だったのです。ご存じですか?ここでの暮らしは、贅沢過ぎます。ですから、私のことは心配いりません、媽媽。私はときどき訪ねて来ますし、手紙も書かせていただきます。」
「私のせいなのか?私がヨニングンのことを言い出したからなのか?淑嬪、もしそういうことなら…。」
「媽媽…、そのせいではありません。これは、ずっと前から抱いていた私の夢なのです。それがあるから、私は宮中を出ていけるのです。」
考え込むスクチョン。彼は、トンイとの会話を思い出します。
<回想シーン>
「だが、それでも私は賛成できぬ。お前を私宮に住まわせるわけにはいかんのだ。」
「殿下!私が最初に宮中に入ったのは、生き延びるためでした。父や兄を突然失い、私のあとを追う人達から逃げ込めるところは、この国で宮中だけだったのです。そしてここで殿下とお会いしました。ここで、殿下からたくさんのお心を頂きました。そして、自分の命よりも大切な子供まで授かったのです。」
「それで、どうしてお前は宮中を出ると言うのだ?ここには、私もヨニングンもいる。それなのになぜだ?」
「それは、新しい人生を始めたいからです、殿下。私の父と兄の罪を明らかにするために、最初に宮中に来たときのように、今度は苦しんでいる人々のために、私は宮中を出て行きたいのです、殿下。殿下の生きるさまをヨニングンに見せたいのです。ですからお願いです。私の意志をどうかわかってください。宮中を出たら、私の父と兄がしていたように、生きる力もないこの国の人々のために過ごしていくつもりです。そうすれば、将来ヨニングンがこの国の君主になったとき、人々のことを忘れることはないと思います。」
首を振るスクチョン。
「私に止めさせないためにそのようなことを言ったのだろう、トンイ。まったく忌々しい奴だ。」
クムはトンイに言います。
「私は、オモニのいない宮中なんて嫌です。オモニと一緒に暮らしたいのです。」
「イヒョン宮は、ここからそれほど遠くはない。私に会いたければ、いつでも来られるのだ。それに、私からもお前を訪ねることもできる。」
「嘘です。これからは、チュンジョン媽媽が私のオモニだと言ったじゃありませんか。だから、オモニは私を捨てるつもりなのでしょう。」
「クム。それは違う。私は今でもお前の母だ。たとえ死んでも、それでもお前の母親なのだ。私がどれほどお前を愛しているか知っているだろう?そうだ、だからもう泣くことはない。そして、母がした約束を忘れてはならぬ。チュンジョン媽媽に、誠意を尽くさねばならぬ。これからは、私よりも媽媽にお心を注がねばならぬのだ。」
外に出て涙を堪えるトンイ。
そこに世子がやって来ます。
「媽媽!ヨニングンンのことは心配しないでください。あの子は、私が面倒をみます。ヨニングンは、私の愛しい弟なのですから、傷つくことのないよう私が守ります。今まで一度も申し上げませんでしたが、本当にありがとうございました、媽媽。媽媽が私にして下さったことは、決して忘れません。」
「ありがとうございます、殿下。本当にありがとうございます。」
こうしてトンイは、皆に見送られて宮中を後にします。
イヒョン宮の庭で、一人呟くトンイ。
「やっぱり私は頑固なのです、殿下。ですが、どうか私の真意を分かってください。私が、殿下のお傍を離れたのではないことを。」
そこにスクチョンが。
「それで、やはり私のことを考えているのか?」
渋い表情のスクチョンに、思わず笑みをもらすトンイ。
「今笑ったのか?笑ってるのか?こんなときか?」
「どうなさったのですか?殿下。」
「あぁ、お前はここに来たことがひどく嬉しいようだな。私の心は怒りでいっぱいだというのに、お前はそうやって口を緩めて…。」
「そうじゃありません。」
「お前の前では自分の気持ちを出さないように、出さないようにとしていたが、あんまりじゃないか。宮中を出たことが、そんなに嬉しいのか?私がこれほどまでに辛い思いをしているというのに、お前はそれが嬉しいのか?心配してお前に会いたがっているのは私だけなのか?一体私はお前の何なのだ?私はお前にとってそれだけの人間なのか?」
「殿下。殿下が私の何なのかとお聞きになるのですか?殿下は私のすべてです。ご存じでしょう?」
「知らないというわけではないが…。」
「だから笑ったんですよ。そうです、私は本当に嬉しいんです。殿下にお会いできて、本当に嬉しいんです。以前のように簡単ではありませんが、こうして会える…。だから笑ったのです。ですから、もう怒りを収めてください。イヒョン宮は、宮中にとっても近いんですよ。知らない人は、まるで私が日本か中国にいるかと思いますよ。」
苦笑いをするスクチョン。
「だが、それでもまだ心が穏やかではないのだ。お前が傍にいないと考えると、宮中が空っぽで何かを失ったような気がするのだ。」
ため息をつく二人。
「殿下…。ありがとうございます。たとえそうだとしても、私の夢をお許し下さって…。いつも私の我儘を聞いてくださって…。」
「そんな顔で私を見るな。それでもお前に対する怒りには変わりがない。見ているがよい、私は宮中に私を置き去りにした仕返しをしてやるぞ。外に出かけることがあっても、お前に会いに来たりはしないからな。」
「本当ですか?」
「何だ?私にできないと思ってるのか?」
「いえ、できないことはないでしょうけれど、難しいでしょう!私がお会いしたいように、殿下も私のことをお考えでしょう!毎日このイヒョン宮のことをお考えになるはずです。そして、私がプンサンで、噛みついたら放さないことを思い出すのです。」
「何だと?私が噛まれると言うのか?私が?」
「はい。それを思うと、何だか申し訳ない気分です。」
「トンイ、一体何を言っているのだ?何が言いたいのだ?」
にっこり微笑むトンイ。
何やら始めるトンイは、「ここが一番いい。」と。
そこにポン尚宮が。
「ポン尚宮、ここだ。早くここに来い。」とトンイ。そして、「この者達が、都城で一番達者な者達だな?」と。
「はい、媽媽。ですが、どうして彼らをここに連れてこさせたんですか?ここに何か塔を建てるおつもりですか?」
「塔?」
「はい。ここはとっても景色がいいですから…。ここに建てれば、夏の景色はすばらしいですよ。」
「塔ではないのだ。」
「違うんですか?あぁ、それじゃ池でも掘るんですか?」
「池でもない、ポン尚宮!実は、騒々しいことになる。」
「騒々しい…ですか?」
トンイは、男達に言います。
「道具は持って来たな?それでは、まずこの壁を壊してくれ。」
驚く男達、そしてポン尚宮。
「媽媽!何ですって?壁を壊すんですか?」
「何をしておる?早く、この壁を壊してくれぬか!」とトンイ。
「何をなさるんですか?媽媽、いけません。絶対にいけません、媽媽!」とポン尚宮。
「お前達がやらぬのなら、まず私がやって見せよう。」
そう言って、塀を壊し始めるトンイ。
「さぁ、ここから始めるのだ!大きな道を開くのだ。誰でもここに入って来られるように!誰でもいつでもイヒョン宮に入って来られるようにするのだ!さぁ、始めてくれ。早く!」
トンイの言葉に、塀を壊し始める男達。
1年後、イヒョン宮の前に列をなす人々。
一人の女の子が、「父さん!」と泣きながら走っています。
集まった大勢の民衆に、「並ぶのだ!」と叫ぶポン尚宮。
「ママニム!本当に大変なんです。私の可哀そうな子供が、捕まってしまうんです!」と男。
「わかった。だからまず並んでくれ。皆同じ状況なのだ。」とポン尚宮。
しかし、前へと進もうとうする民衆。
そこに尚宮の服装のエジョンが。
「来てくれたのか、助けてくれ!急いでこれを静めてくれ。誰も話を聞いてくれんのだ。」とポン尚宮。
前に進み、民衆を並ばせるエジョン。
「皆の者!すぐにちゃんと並ばぬか!下がれ!お前は、今来たばかりだろう。後ろに並ぶのだ。来た順番にちゃんと並ぶのだ。列に並べ!う~ん、それでよい。」
喜ぶポン尚宮に、エジョンは言います。
「ママニム。本当にお辛そうですね。こんな生活をなさってるとは…。」
「エジョン!一体何回ちゃんと並べと言ったのかわからないのよ。」
「ママニム、前にも同じことを言いませんでしたか?前に何度も聞いたような気がします。どこでだったかは思い出せませんが。」
「くだらないことを言っていないで、ここにいるんだから、手伝いなさい!」
「えっ?まず淑嬪媽媽にお会いしなければなりません。お伝えすることがあるんです。」
「ちょっと!媽媽はお食事をする時間もないのよ。とにかく手伝いなさい。早く来て!」
女の子の話を聞くトンイ。
「それでは、お前の父親がホジョを殺した罪で捕えられていると言うのか?」
「はい、媽媽。ですが、父さんはそんなことはしていません。私の父さんは、アリだって殺せないんです。それなのに、お役人が父さんを捕まえて、人殺しの罪で処刑するって言うんです。媽媽、お願いですから、父さんを助けてください。」
「お前はヨニだったな?わかった、ヨニ!私の言う通りにするのだ。お前の父は、生贄にされたのだ。だから、私が行ってどうなっているのかを調べて来る。」
「本当ですか?媽媽。本当に、私の父さんを助けてくれるんですか?」
「もちろんだ。私は監察府の女なのだ。お前は監察府を知っているか?それなら、私を信じればいいのだ。わかったか?」
「はい。ありがとうございます。」と女の子。
家の外でおろろおするテプン夫婦。
「あぁ、今度こそ上手くやらねば…。」
そこにホヤンが飛び出してきます。
「父さん!あれは一体誰なんですか?私の横で寝ている女は?オモニ!教えてください。私の妻はどこですか?淑嬪媽媽に似ている娘は、一体どこに行ってしまったんですか?あんな娘が、どうして私の横に寝ているんですか?」
「あの娘が、お前の妻なのよ。ホヤン!」
「えっ?」と考えるホヤン。そして彼は過去の記憶をたどります。
<回想シーン>
ホヤンの結婚式。現れた花嫁に、
「父さん!本当に淑嬪媽媽にそっくりですね?」
「もちろんだ。どうして私がお前に嘘など言うものか。最初に見たときには、媽媽と叫びそうになったくらいだ。」
「そのようです。ですが、顔を覆っているので、彼女がよく見えませんよ。」
「いえ、ホヤン。本当にそっくりなのよ。」
彼に酒を飲ませるテプン夫婦。
そして翌朝、妻の顔を見たホヤンは、「この結婚は詐欺ですよ!」と。
宥める夫婦。(ここは省略します)
部下の知らせに困り果てる捕盗庁従事官。
「何?媽媽がまたいらしただと?」
「はい、ナウリ。」
「まったく、もう気が狂いそうだぞ。」
トンイは、死体を検めます。
「刺傷が深いようだ。」
「はい、媽媽。手慣れた者に刺されたに違いありません。」
「だが、刺傷の角度が少し妙ではないか?」
そこに従事官が。
「媽媽!いらしたのですか。」
「また会ったな、従事官!」とトンイ。
トンイは、従事官に言います。
「兵曹算士を殺した人間は左利きだ。だが、この記録によれば、明らかに右利きだ。」
「それは、おそらく彼が右利きに見せかけようとしたのかもしれません。このことで事件を結論づけることはできません、媽媽。」
「もちろんその通りです。ですが、その証拠は説得力がありません。死体からは、布片が…。それはそこに持ち込まれたものではありませんか?」
顔を顰める従事官。
「ですが、媽媽!申し訳ありませんが、これは捕盗庁の仕事です。王室の後宮媽媽が調査に出しゃばって来られるのは越権行為ではないかと…。」
「…従事官!私は、王室の後宮としてここに来ているのではなく、外知部(외지부:ウィジブ)として来ているのです。だから、越権とは言えないはずです。そうではありませんか?」
外に出た従事官は、部下に言います。
「もうこのようなことはやっておられん。これで何度目だ?後宮は後宮らしく、大人しくしているべきだろう。どうしてしゃしゃり出て来て問題を起こすのだ?」
「誰かが言っていましたが、淑嬪媽媽は賎民の生まれだからではありませんか?」
「賎民を助けるることにばかり熱心で、それが両班達には問題なのだ。」
「どうなさるおつもりですか?ナウリ。」
「いつまでもこんなことをさせておくわけにはいかん。急いで…にお知らせするのだ。」
ヨニの父親の顔を見たトンイは、そのひどい有様に、
「一体この者に何をしたのだ?どうしてこんなことをしたのだ?」と。
「それは、この者が罪を認めなかったからです。それでアプソで拷問されたのです。」
「壓膝(압슬:アプソ)だと?それでは、お前達は、罪人が罪を認めるまで拷問をするというのか?国法でも、過度の拷問はしてはならぬとある。お前はそれを知らんのか?何をしておる?早く医員を連れて来るのだ。それと私はこのことをそのままにはしておかぬ。」
トンイの怒りに、慌てて走り出す男。
ヨニの父親は、トンイに言います。
「どなたですか?一体どなたが、私をこんなに気遣ってくださるのですか?」
「お前がヨニの父親だな?」
「ヨニですか?私の娘に会われたのですね。あの子はどうしていますか?ひょっとして、私のせいであの子が拷問を受けているのですか?」
「いいや、あの子は無事だ。もう心配するな。私がお前を助けてやる。だから諦めてはいけないぞ。わかったか?」
「ひょっとして、イヒョン宮の淑嬪媽媽ではありませんか?そうでしょう、聞いたことがあります。媽媽は、私のような賎民を助けてくださると。」
「そのように申すな。覚えておくけ、私も賎民の出身なのだ。だから、耐えるのだ。わかったか?」
泣きだすヨニの父。
男達に武術の指導をするヨンギ。
「腹に辺りに力を入れ、重心を探すのだ。」
その様子を見つめるトンイ。
ポン尚宮は、「前よりずっとよくなりましたよ!」と。
「これもヨンガンがしっかり教えてくださるからだ。」
「本当に、ヨンガンは素晴らしいです。公務かどうかに関係なく、ここで人々に武術を教えてくださるんですから。媽媽のなさっていることと同じことをなさっているんですよ。」
「ええ、ヨンガンは昔から私の父を兄と慕ってくれたのだ。」
そこにヨンギが。
「以前よりお元気そうですね。」とトンイ。
「はい。私も媽媽のように宮中が性に合わなかったのです。こうして彼らと食べたり飲んだりする、このような暮しは実に楽しいものです。」
「はい、そのようですね。ヨンガンの前世は、賎民だったに違いありません。」
「どうやらそのようです。どのような血が流れていようと、一番大切なのは人の心と気高さなのです。チェ・ヒョウォンは常々そう言っていたではありませんか?それで、どうしてこちらにいらしたのですか?私に何か手を貸して欲しいことがあるようですが。」
「わかるんですか?」
「はい。その様子を見からすると、私だけではなく他の人間も集めたいようですな。」
「そうしたいのですが、私は宮中の外に暮らす後宮なのです。宮中の人間など使ったりできないではありませんか。大問題になります。」
「それでは、こっそりすればいいことではありませんか。」
「それでは、それをこっそりやっていただけますか?」
笑いながら、「はい、もちろんこっそりやらせていただきます。」とヨンギ。
チョンスは、ハンとファンのところに。
「私は、イヒョン宮に行かねばならぬ。その間、命令どおりにやってくれ。」
仕事を片づけたウンテク。
「さぁ、私の仕事は全て終わった。いいか?それでは先に帰る。お前達は仕事を続けてくれ。」
それを見た官吏。
「どうやらナウリは、お宅で急な用事があるようだ。」
チョン尚宮とチョンイムも着替えてトンイのところへ向かいます。
こうしてイヒョン宮に集まる5人!
トンイの話を聞いたチョン尚宮は、「それでは、これは単純な殺人ではないのですか?」と。
「そうだ。捕えられた奴婢は、奴婢身貢(노비신공)と欺かれ、それでホジョサンサ殺害の罪に問われたのだ。」
「だが、私の調査によれば、サンサは実に興味深い人間だ。」
と書類をウンテクに渡すヨンギ。
「いやぁ、ただのサンサだが、財産は実にすごい!何か怪しいですね。」とウンテク。
「そうなんです。サンサのいるホジョは、奴婢身貢を担当しています。もしその人が多くの財を築いたとすれば、奴婢身貢のときに多くの賄賂を受けとっていたことになります。」とチョンイム。
「そして、これによる犠牲者は一人だけではないはずです。」
「はい。私もそう推測しています。犠牲となったサンサは、奴婢身貢のときに宮中の高官と取引きをしたのでしょう。そうだとすれば、殺害されたサンサはそのうちの一人に違いありません。そして自分の罪を賎民になすりつけたのです。」
スクチョンは、ハン尚膳に言います。
「先の事件のために、この場所は少々使いにくくなった。すぐにもっとよい場所を探すようにしてくれ。それと、民衆のために視察を行うつもりだ。仁政殿に集まる準備をしてくれ。」
そこでいきなり、「おや、これはイヒョン宮への道ではないか?」とスクチョン。
「ご存じではなかったのですか?私はわざとこちらに戻られたのかと…。」とハン尚膳。
「おい、わざとはどういうことだ?ただ歩いていたらここにいたのだ。だが、ここまで来てしまったのだか「ら、ちょっと寄ってみることにするか?」
笑いを堪えるハン尚膳。
一心に書物を読んでいたトンイは、突然鼻血を。
それを見て、「トンイ!血が…!」と大声を上げるスクチョン。
彼はすぐに御医を呼び、彼女を診せます。
「どうだ、大丈夫か?」
「殿下。私は何ともありません。どうして御医を呼んだりしたんですか?」
「静かにしろ!」と怒鳴るスクチョンに、口をとがらせるトンイ。
「おそらくお仕事のし過ぎかと思われます。それ以外は大丈夫です。」と御医。
「そうか、本当か?」
「ほら、私は大丈夫だと言ったのに、信じでくださらないんですから…。」
「おい、こら!」とスクチョン。
そしてスクチョンは言います。
「警告だ!もしまた私に血を見せたりしたら…。」
「はい。宮中に戻ります!」と手を上げるトンイ。
「本当だな?」
と笑い出す二人。
「わかった。それで今度はどうしたのだ?昨夜はあまり寝ていないようだ。何か重要なことがあったのだろう。」
「殿下は、このことに関わってはいけません。しばしばイヒョン宮を訪ねているという噂でお困りなのではありませんか?」
「一体何をするつもりだ?」
「やらねばいけないことなのですが、後宮が手を出すべきではないことなのです。」
「ちゃんとわかっているのか。」
「はい。ですから、見て見ないふりをしていてくださると助かるんです、殿下。それとこれから先も知らないふりをしてください。そうすれば、私が他の人達に叱られないですみますから。」
「だが、助けが必要なときにはいつでも私に話してくれ。それが何であれ、それがこの国の君主として私がすべきことなのだから。」
「はい、殿下。わかっております。」
宮殿に戻ったスクチョンは、「内禁衛将を呼んでくれ。」とハン尚膳に。
チョンイムは、ホジョへ。
「監察府の者だ。宮中に入ったばかりの内人達のことで、ホジョの記録を調べに参ったのだ。」
彼女を中に案内した官吏は、「入ったばかりの者達の記録は、そこにあります。」と。
「時間がない。有効に使うのだ。」と記録簿を探し始めるチョンイム達。
チョンスも調査を開始します。
「内禁衛軍事の奴婢の件について調べに参った。」
男は、現れた捕盗庁の従事官に言います。
「今、淑嬪媽媽は何をしている?」
「前回いらしてからは、幸い特にお知らせすることはありません。」
「だが、イヒョン宮が口を出してきている…。」
「心配はいりません。誰にもわからないはずです。」
「死んだサンサの帳簿は見つかったのか?」
「まだ捜査中です。」
「あんなに欲張らなければ、このように大事にはならなかったのだ。あの帳簿を見つけ出さねばならぬ。もし他の人間の手に渡れば、都城の両班だけでなく、忠臣達も巻き込まれる。」
ジュシクとヨンダルの報告に驚くウンテク。
「捕庁の従事官が、ホジョの…に会っていたのか?」
「はい。ある者にホジョ…を見張るよう頼んでおいたところ、彼らはしばしば会っているそうです。」
「だが、これをやった人間が従事官に会っていたとは…。」
「どうですか?ナウリ。我々の情報はお役に立ちましたか?」
「もちろんだ。二人ともよくやったぞ。これから媽媽に会って来なくては…。ご苦労だった。」
と出て行くウンテク。
ヨンダルは、嬉しそうに言います。
「ナウリ!我々は媽媽のお役に立ちましたよ。最初から最後まで、我々は媽媽の右腕と左腕なんです。」
「おい、どうしてお前が右腕なんだ?私が右腕で、お前は左腕だろう。」
「まったく…。右腕でも左腕でもどっちでもいいじゃないですか。」
「右腕のほうがいいんだ、まったく…。」
チョンスから報告を聞いたトンイは、「イジョが…?」と。
「はい、媽媽。両班は、自分達の利益のために奴婢身貢(노비신공)を操作して悪事を働いているようです。」」
「それがさらに奴婢達を苦しめているのですね。それで、儲けた金は、両班と死んだ男とで分け合ったと…。」
「そして、従事官とホジョの…が会っていたのは、明らかに何か関連があるにちがいありません。」とウンテク。
「チョン尚宮の話によれば、ホジョで一番怪しい人物は、ホジョ…だそうです。殺されたサンサは、彼の部下でした。捕庁の従事官が何か掴む前に、事を終わらせる必要があります、オラボニ。」
従事官は、部下に訊ねます。
「何者かが帳簿を探しているというのは本当か?」
「死んだサンサの執事は、トンハドンに住んでいます。間違いなく彼に渡しているはずです。」
「探しに行け、急げ!」
チョンスは、兵士達に指示を。
「1班と2班は東…へ。3班と4班はマンシドンへ、それからトンハドンへ行く。間違いのないようにせねばならぬ。」
ハンとファンは、兵士を連れて出発します。
そこにウンテクが。
「従事官(?)、何をしているのだ?権限もなく出兵したりして…?媽媽が困ったことになるかも知れんぞ。」
「いいえ、そんなことにはなりません。私は、殿下の御命に従っているのです。」
「何だと?殿下の御命だと?」
執事を脅し、帳簿のありかを聞き出そうとする捕庁従事官。
「家族が殺されてもいいのか?それなら、正直に言うんだ!」
「いけません、ナウリ。私がすべてを話したら、私も家族も殺すんでしょう?」
「よかろう。お前がそんなに死にたいのなら、願いを叶えてやろう。」
と刀を振り上げる従事官。
そこにチョンスら兵士がやって来ます。
そして、チョンスも同じことを従事官に!
「それほど死にたいのなら、願いを叶えてあげましょう、従事官!」
がっくりと首を落とす従事官。
知らせに驚くトンイ。
「何?内禁衛軍が?」
「はい、内禁衛軍がすべてを指揮し、捕庁従事官ら全員捕えました。」とポン尚宮。
「内禁衛とは、まさか殿下が?」とトンイ。
そこにスクチョンが、「そうだ、私が命じたのだ。」と現れます。
「殿下、一体どうなっているのですか?どうして殿下が…?」
「驚く必要はない。私がお前の計画に加わりたかっただけだ。さぁ、私の出番だ!」
スクチョンは、重臣達を集めこう言います。
「これは、両班達が密かに企んだことで、奴婢を辛い目に遭わせるものだ。これら両班達は、彼らの苦しみを無視しただけでなく、自分達の身勝手のために賎民達の汗と血を利用した。このような者どもが、我が国を導いてなどいけようか。」
「申し訳ございません、殿下!」と重臣達。
「賎民を守れないということは、神を冒涜するのと同じことだ。これを胸に刻み込め。これからは、奴婢達の年貢を半分に減らすこととする。今後重臣達の怠慢によりこのような問題がまた起これば、人民とこの国家に対する重罪として扱う。」
釈放された父親に駆け寄るヨニ。
二人は抱き合って再会を喜び合います。そこにトンイが。
「媽媽!ありがとうございます、媽媽!このご恩をどうお返ししたらいいのですか?」
「いいのだ。私は自分のやるべきことを果たしただけだ。」
「淑嬪媽媽、ありがとうございました。」
「父さんの世話をしっかりするのだぞ。かなりひどい怪我をしているのだから。」とトンイ。
何度も何度もトンイに頭を下げる父と娘。
イヒョン宮に集まって来る民衆に驚くトンイとポン尚宮。
「一体どうしたというのだ?」
一人の男がトンイに言います。
「媽媽、私を覚えておいでですか?以前、恵民署(혜민서:ヘミンソ)で私の手当てをしてくださったでしょう!」
「覚えているぞ。足のほうはもう大丈夫か?」とトンイ。
「はい。お陰ですっかりよくなりました。もう20の山に登っても何の問題もありません。」
「それで、今日はどうしたのだ?」
「今日は、陳情ではありません。媽媽にちょっと贈り物をしたくて来たんです。」
「贈り物?」と驚くトンイに、別の男がこう言います。
「明日は、媽媽のお誕生日ではありませんか。我々は何もできませんが、代わりに我々の力で亭子(정자 :チョンジャ、あずまや)を建てて差し上げようと思いまして…。」
「この者達みんなでか?」とポン尚宮。
「みな媽媽のお世話を受けた者ばかりです。これを聞いて、皆喜んでやって来たんです。」
嬉しさに涙を浮かべるトンイに、男は言います。
「ちょっと待っててください、媽媽。我々は最高の亭子を建てますから。さぁ、急いで仕事にかかろう!」
「媽媽!これを受け取らないわけにはいきませんよ!」とポン尚宮。
「そうだ、このような尊い申し出をどうして断ることなどできようか。」
その様子を見ていたウナクは、クムに言います。
「ご覧になりましたか?媽媽。今日の講義はこれです。今日のこの場面を忘れてはなりませんぞ。数千の書物より、どんな言葉より、最も尊い教えがこれなのです。」
二人に気付いたトンイに駆け寄るクム。
「どうしたのだ?どうしてここに来たのだ?」
「明日はオモニの誕生日ではありませんか。今日はここに泊っていいと、チュンジョン媽媽が許して下さったのです。」
「本当か?」
「はい、オモニ。今夜は朝までオモニとお話をするつもりです。」
「わかった、そうしよう!」
「オモニ、私は今日決めました。今日からは、オモニに会いたいと不満を言いません。やっとわかったんです。オモニがなぜここに来たのかが。私に例えを見せようとなさったのでしょう。将来、私がどう生きるべきかがわかるように…。私は、決して忘れません。決して忘れず、オモニの教えを心に刻んでおきます。」
「そうか、礼を言うぞ。ありがとう、クム。」
「私がお礼を言うべきです。オモニが私の母であることを、本当に感謝しています。」
嬉しそうにクムを抱き締めるトンイ。
その様子をスクチョンは遠くから見つめます。
にっこり微笑むハン尚膳。
市中の店で、「これにします!」とノリゲを選ぶトンイ。
「トンイ!もっと高そうな物にしたらどうだ。」とスクチョン。
「高い物がいいんですか?これでいいのです。」
「わかった。それなら他にもっと選べ。」
「いいんです。ひとつで十分です。」
「だめだ。おい、これを全部包んでくれ。」
驚く店の主人。トンイは小声でスクチョンに言います。
「何をなさるんですか?殿下。」
「どうしてお前はこうなんだ?明日はお前の誕生日なのに、祝うことができないとは。お前に物を贈ることもいけないと言うのか?たった一つでいいなどと、私が許さん。」
「それでも全部買うなんていけません。」
そしてトンイは、「これ一つだけにしてくれ。すまない。」と店の主人に。
トンイに不満をぶつけるスクチョン。
「お前は男の気持ちが本当にわかっておらん。愛する女がいれば、何でもしてやりたい、それが真の男というものだ。私は君主ではないか。そして君主というのは、この国で最高位の男なのだ。その私が、お前に最高のものを与えようとしているのに、お前はいらないと言うとは…。」
「もう私に最高のものを下さったではありませんか、殿下。この指輪です。ずっと以前、この指輪を下さったとき、殿下はお心も下さいました。だから、本当に他に何も欲しいものはないんです。」
「トンイ!」
「ですから、このことで私にすまないと思う必要などないのです、殿下。今年は年貢も少ないのですから、無駄使いをなさっていはいけません。今年だけじゃなく、来年もその欲年も、そして10年後も20年後も、私はずっと殿下のお傍にいますから…。そのときに、祝宴を開いて私に贈り物を下さればいいんです。」
「わかった。私の負けだ。それにしても、いつになったらお前に勝てるのだ?だが、この約束だけは守ってくれ。来年もその次も、そして20年先も、ずっと私の傍にいなければならぬ。わかった、それで十分だ。これだけがお前への頼みだ。おい、トンイ。こうして見ると、お前は美しいな。本当に美しい!」
そのとき物音に気付いたトンイ。
彼女の指差す方向には、人らしき包みを担いだ男達が。
「あっ、あれは人間だぞ!待て、ちょっと待て。」
スクチョンは、すぐにハン尚膳に言います。
「人がさらわれたようだ。すぐ捕庁にこのことを知らせよ。」
そして、トンイがいなくなったことに気付き慌てるスクチョン。
「淑嬪…、淑嬪はどこだ?」
スクチョンは、塀越しに屋敷を覗いているトンイを見つけます。
「静かにしてください。見つかってしまいます。」とトンイ。
「何をしているのだ?行かなくては!」
「中の様子がおかしいんです。私が密かに調べていた事件のようなんです。中で何が起こっているのか見なくてはいけません。」
「ちょっと待て!まもなく捕庁が兵を寄越すはずだ。」
「殿下。それまでに証拠はなくなってしまいます。今彼らは証拠を消そうとしているんですよ。」
「どうしたらよいのだ…。」
はっと閃くトンイ。
「殿下!1回だけどうですか?」とトンイは塀を指差します。
「まさか私に上に登れと言うのではあるまいな?」
「どうして殿下にそんなことを…。私が上がりますから、殿下は地面に屈んでください。」
「私に屈んで欲しいだと?私は君主だ。この前は知らなかったとして、またも私に屈めと言うのか?」
「君主でも、男でしょう?どちらか選んでください。今は、君主なんですか、それとも男ですか?」
「わ、わかった。私が屈めばいいのだろう?早く登れ!」
「行きますよ!」と、トンイはスクチョンの背中に足をかけます。
「殿下!もっと高く…!」
「どうして前より重いのだ?」
「殿下!もっと力を入れてくださいよ。どうして今でもそんなにお弱いんですか?」
そして年月は流れ、クムの即位の儀式が行われます。
晴れて英祖となるクムを傍で見つめる年老いたチョンス。
二人は、トンイの墓に。
「昨晩、夢の中でオモニに会いました、ウェス。オモニと抱き合うことができて、どんない嬉しかったか。私が王になった後のことを心配しておられました。嬉しくもあり、悲しくもありました。オモニが私に何と言われたかわかりますか?」
「何と言われたのですか?」
「笑いながら、とにかく頑張りなさいとおっしゃいました。ここにいらしても、やはり同じなのです。オモニに言われたくなければ、全力を尽くした方がいいようです。ええ、私はやりますよ、ウェス。オモニのためにも、私はこの国で一番の王になります。」
そのとき草むらを走る音が。
「殿下をお守りせよ!」と兵士に命じるチョンス。
そして彼は、すぐに物音のしたほうに走り出します。
走っていた女の子に声をかけるチョンス。
「ここで何をしているのだ?」
「虫を捕まえていたんです。お金のためにやっているんじゃありません。」
「ここで虫を採っていたのか?」
「はい。村の子供達はいつも小さな溝で虫を捕まえるんです。」
「そうか。それでどうしてお前はこんなことをしているのだ?」
「ここは淑嬪媽媽の廟所じゃありませんか。媽媽は生きていらしたときに、私達賎民の面倒を見てくださいました。それをどうしてやらないでいられましょうか。父さんもそうしなくてはいけないと言っていました。」
「そうか、礼を言うぞ。そのような心がけのお前なら、大きくなったら人の役に立つ人間になるはずだ。」
「えっ?私がですか?でもナウリ、私はただの賎民なのに、どうやって人の役に立つ人間になどなれるんですか?」
「大きな志を持っていれば、なれるのだ。」とチョンス。
トンイの墓を後にする英祖。
草むらを歩く女の子に、「トンイ!」と父親が声をかけます。
チョンスとのことを父に話すトンイ。
「そうか、その両班ナウリがそんなことをお前に…?」
「はい、私に大きな志を持つようにとおっしゃったんです。人は身分や生まれではなく、心が大切なのだと。大きな志を持っていれば、役に立つ人間になれると…。」
「そのように行ってくださるとは、有り難いお方のようだ。」
「でも父さん、それは本当ですか?身分に関係なく、大切なのは心だというのは…。本当に私が大きな志を持ったら、賎民ではなく役立つ人間になれるんですか?」
「もちろん、そうだとも。淑嬪媽媽と殿下もそうして立派なお方になったのだ。さぁ、行こう。殿下のお祝を見に行くんだ!」
「はい、父さん!」とトンイ。
終わり!
昨夜はあちこち動画を探し、珍しくJoonMediaで視聴!
58話ですべてが解決したと思っていたのに、ムヨルの件、引っ張りましたね。
30分を過ぎても、まだムヨルの拷問をやっていたときには、
今回は、これだけで終わってしまうのかしらと、ハラハラするばかり。
冒頭で、少論派も捕まりムヨルは斬首となったとナレーションくらいあれば済んだ話…。
トンイとスクチョンのロマンス話でまとめるのなら、
この辺りは、もうちょっと端折って先に進んでもよかったのではないでしょうか。
視聴率は若干上昇したものの、ジャイアントには大きく引き離されてしまいました。
しかし、関連ニュースは山ほど…^^。
明日の記事は一体どれほどになるのか。
その中に、地味な記事を発見!
ファンブジャン役パクギルス、分かってみれば、大学路のスター!
へぇ~、なるほど(笑)
結局、トンイがスクチョンの禪位のことも含めすべての真実を話したことが
彼女の心をトンイに向けたきっかけになった様子。
チュンジョンのヨニングンへの想いを聞いたトンイは、
一人宮中を出ていくことを決断、それをスクチョンに話します。
トンイに心を開いたチュンジョンの顔が優しく見えてきたことが不思議でした(笑)
そうそうキム・ジョンソンの史実の中に歴史を読むの記事に、
このあたりの解説があります。
36番目の物語:張禧嬪死んでから後同伊も'捨て'受けた
37番目の物語:同伊は張禧嬪を殺すべきではなかった
彼によれば、ヒビンの死後、チャン・ヒビン対スクビン・チェ氏の構図が壊れ、
仁元王妃を中心に新たな尚宮が出現する中、トンイは力を失っていったのだとか。
これは、スクチョンの権力欲のため…。
トンイは30代前半でヨニングンとも離れ、
一人寂しくイヒョン宮(이현궁:梨峴宮)で暮らすことになったとあります。
インヒョン、ヒビン亡き後、スクビンの影響力が大きくなることを恐れ、
彼女をけん制するために、スクチョンは「後宮が中殿になれない」と御命を出したというのです。
信頼しながらも、その彼女が権力を持つことを恐れた結果スクビンを放り出したスクチョン。
10年ほど一人寂しく過ごしたスクビンは、再びスクチョンの命により、
ヨニングン夫婦の暮らす宮殿(창의궁:彰義宮)に移ることになります。
チェ氏にとっては嬉しいことだったでしょう。
しかし実は、スクチョンがこの命を下したのは、憐みではなく、
彼女が一人でイヒョン宮に暮らすのが無駄だという理由だったそうな…。
ドラマと違い、何とも寂しい晩年だったようです。
59話の復習はこちらで!
レモン色の雲:第59回あらすじ
チャイミのベッドストーリー:第59部-反転導いた仁応王后はキングメーカーだった
ムヨルは、「何をしておる?淑嬪媽媽を捕えぬか!」と。
「淑嬪媽媽を捕らえるのだ!」とミン軍官。
しかし、動かぬ兵士。
「何をしているんだ?ヨンガンの命令が聞こえなかったのか?」とミン軍官。
トンイは言います。
「彼らはお前の命令には従いません、ヨンガン。彼らは私の命令でここに来ているのです。ヨンガンを捕えるために…。」
「何ですと?」とムヨル。
「何をしているのだ?直ちにこの罪人を捕えぬか!」とポン尚宮。
兵士達は、ムヨルとミン軍官を取り囲みます。
兵士の話に驚くエジョン。
「えっ?それでは、媽媽を捕えに来たのではなく、居処を守るために来たのですか?」
「はい、その通りです。」
抵抗するムヨルとミン軍官。
「放せ!私を捕えるとは何事だ?何をしているのかわかっているのか?お前達が捕えなくてはいけないのは、私ではなく淑嬪だ!チュンジョン媽媽が内旨標信を発し、淑嬪を捕えるよう命じられたのだ!」
「内旨標信だと?もしや、これのことを言っているのですか?ヨンガン。」とトンイ。
そこに都承旨がやって来ます。
箱から内旨と書かれた木札を取り出すトンイ。
「その通りです、ヨンガン。チュンジョン媽媽は、ヨンガンの提案通り、今日内旨標信を発せられ、世子殿下に危害を加えた罪人を捕えるようお命じになりました。そしてその罪人というのは、兵曹参判チャン・ムヨル、あなたのことです。」
「何ですと?チュンジョン媽媽が誰を捕えろと…?そんなはずはない!チュンジョン媽媽が…。そんな馬鹿な。ありえない、チュンジョン媽媽がそのような命令を出すはずがない!偽の命令だ。」
喚き散らすムヨルに、「違う!」とインウォンが。そして、
「私が下したのだ。これは間違いなく私の下した命令だ。」と。
「チュンジョン媽媽!一体どうなっているのですか?どうして私にこんなことをなさるのですか?」
「兵曹参判、命令に従うのだ!私の言葉が聞こえぬのか?」とインウォン。
知らせを聞き驚く少論派首長。
「チュンジョン媽媽が、兵曹参判を捕えさせただと?一体どうなっているのだ?」
「現在状況を調べているところです。淑嬪が何か裏工作をしたに違いありません。」
縄をかけられてもまだ喚き散らすミン軍官。ムヨルは
「どうなっているのだ?どうしてこんなことが…?」
そして彼は、トンイに訊ねます。
「どんな手を使ったのだ?どんな裏工作をしたのだ?」
「そのようなことはヨンガンのほうがよく知っているはずです。以前私が、世間は皆があなたのような人間ではないと申し上げたことを覚えてますか?他人のことには構わず目先の利益だけを追い求めることが、政治であり権力だと考える人間。いいえ違うのです、ヨンガン。そのような人間を罰することが真の政治なのです。政治は無力だと言いましたね?いいえ、違います。政治には、何よりも誠意が必要なのです。ですから今ヨンガンは、はっきりと本当の力というものがわかったでしょう。」
反論するムヨル。
「これで私を本当に終わりにできると信じているのですか?証拠はどこです?私のしたことを証明する証拠があるのですか?最後に死ぬのは媽媽なのです。おわかりですか?媽媽は世子殿下に危害を加えようとしたのですから。」
「あなたは、私があなたの隠れた動機を知らないと本気で思っているのですか?そうなのですか?」
トンイは、インウォンのところへ。
「兵曹参はどうしてる?」
「この予想もしない展開にうろたえているようでした。」
「そうであろう。こんなことになるとは思ってもいなかったはずだ。淑嬪が殿下の禪位のことを私に話してくれるまでは、私もこのようなことは想像もしていなかったのだ。私は常に兵曹参判チャン・ムヨルの言葉を信じていたのだから。とにかく大事は避けられた、淑嬪。」
「実は、媽媽のご命令を受け取るまで、私は本当に必死でした。」
<回想シーン>
トンイはインウォンに言います。
「お願いがあります、媽媽。ひょっとして、私を早く出宮させること、それはチャン・ムヨルのせいですか?私が世子殿下に危害を加えると今でも信じていらっしゃるからなのですか?そのせいなのですか?媽媽、昨夜私がお話があると申し上げたことを覚えていらっしゃいますか?」
頷くインウォン。
「媽媽。殿下は、禪位をなさるおつもりなのです。世子殿下とヨニン宮を守るために、殿下はそう決心なさったのです。」
「何だと?禪位?」
「ですが、チャン・ムヨルがそれを知ったのです。そして今、彼が案じているのは、私が世子殿下に危害を加えることではありません。ヨニングンが今後彼の敵となることなのです。彼はそれを恐れているのです。彼が私を宮中から追い出したいのなら、間違いなくそこに何か理由があるに違いありません。つまり、本当に出宮したら彼の真の動機が何かわかるということです。ですがその前に、私が真実を言っていると信じていただけますか?どうか私の願いをお聞き届けください、媽媽。少し私にお時間を頂けませんか?媽媽、すぐに私が兵曹参判の動機を暴きます。」
トンイは、チョン尚宮から渡された書状をインウォンに渡します。
「これは、監察府内人が私の命令で調べたものです。それは、世子殿下が耆老宴へ行かれるときの道筋が書かれたものです。ですが昨夜、突然その行程が変更に変えられました。そしてそれは、私が今日向かうはずだったインヒョン宮への行程と同じものだったのです。そこには明らかに何か陰謀があるのです。…、どうか私を信じてください。」
ムヨルは、インウォンに言います。
「媽媽。彼らが逃げてしまわないうちに、捕えなければなりません。」
「私がか?」
「はい。内旨標信をお使いください。それで淑嬪媽媽とクム媽媽、そしてその周囲の者達全員を捕える命令を出して下さい。」
「内旨標信?」
「はい。世子殿下がいらっしゃらない今、チュンジョン媽媽の内旨標信は、殿下の御命と同じです。時間がありません、媽媽。逃げられる前に、世子殿下殺害の罪で彼らを捕えなければならないのです。」
考え込むインウォンに、尚宮が言います。
「チュンジョン媽媽、どうなさるおつもりですか?都承旨ヨンガンが、外でお待ちになっていらっしゃいます。」
トンイとムヨルの言葉を交互に思い出すインウォン。
「誰を信じればいいのだ?信じられるのは誰なのだ?」
そして彼女は、筆をとります。
インウォンは、トンイに言います。
「あのときどうしてああ決断したのかはわからぬ。お前ではなく兵曹参判を捕えるよう命令をくだした訳がわからぬのだ。他の者でなくお前が世子を守りたいと言うのは、馬鹿げた嘘のように感じるべきだったが、私はお前の本心だと感じたのだ。嘘には思えなかったのだ。だから、お前は私に証明せねばならぬ、淑嬪。お前が言っていることが嘘ではなく真実だということを…。」
「はい、そういたします。私は、媽媽の私への信頼を裏切るようなことはいたしません。」
釈放されるチョンス。
「ナウリ、大丈夫ですか?」と迎えるファンに、「大丈夫だ!」とチョンス。
「たいへんだったでしょう。さぁ、寶慶堂へ行ってください。媽媽がお待ちです。」
チョンスとウンテクは、トンイのところへ。
「それでは、最初から私兵を集めなかったのは、媽媽は兵曹参判チャン・ムヨルの陰謀をわかっていたのですか?」とウンテク。
「その通りです。彼があのように必死で脅しにかかった理由は、我々を躍らせるためだったのです。」
「つまり、わざと彼の陰謀にかかったふりをしたということなのか…。」
「ですが、それで世子殿下に危害が及ぶとは思っていませんでした。」とトンイ。
ウンテクは言います。
「つまり、本当の問題はこれからですね。どうやって彼の罪の証拠を見つけるか、それが問題です。」
「それなら、もう始めています、シム持平。」とトンイ。
「えっ?もう始められたのですか?」
馬を走らせるヨンギとスクチョン。
トンイの話に驚くウンテク。
「えっ?殿下が?殿下が証拠を見つけられるのですか?」
「はい。今頃殿下が、最も重要な証拠を探しておられるはずです。」
「殿下が証拠を…。義禁府都事、これは一体どういうことだ?」
「チャン・ムヨルが軍部の全権を握ったとき、私とオラボニは、彼の動きがおかしいことに気付きました。」
<回想シーン>
宮中を歩き回る大勢の兵士を見たトンイは、チョンスに言います。
「間違いなくこの背後にはなにかあるに違いありません、オラボニ。彼のような人間が、逃げ道を塞ぐようなことをするはずがないのです。無謀にもヨニングンと私の命を狙うとは思えません。」
「それでは、宮中に何か騒動を起こそうとしているのではないでしょうか。」
「はい、そうに違いありません。それで、内禁衛軍事が戻らないのです。」
「それでは、内禁衛軍は他の問題に関わっていると…。」
「オラボニ。私宮に密使を送らなくてはなりません。」
トンイからの書状をスクチョンに届ける兵士。
「これはトンイからだ。」と手紙を読み始め、顔色を変えるスクチョン。
彼は、その手紙をヨンギに見せます。
「これは、淑嬪が私に寄越した手紙だ。お前はどう思う?内禁衛将。」
「私も、媽媽のご判断が正しいと思います。私の知るチャン・ムヨルなら、媽媽のお命に直接手をだすことはしないはずです。つまり、殿下にとって、彼が軍力を握ったことが問題なのではないでしょうか。殿下、淑嬪媽媽は…。」
「淑嬪とヨニングンの命が危なくない。つまり、私に宮中の外で待てと言っているのだ。チャン・ムヨルと関わりのある者の動きを探るために…。間違いなく全ての答えがそこにあるのだ。大勢の兵が彼らを追って宮中を出れば、何があると感づかれてしまう。だが、内禁衛軍は既に宮中の外にいる。私の言っていることがわかるか?」
「はい、王室最強の軍隊内禁衛は人目に触れずに行動することができるということではありませんか。」
トンイは、監察府へ。
「頼んだことはわかったのか?」
「はい、間違いありません。籠の運び手の飲み水の中に、毒キノコが発見されました。」
「何者かが毒を盛ったということです、媽媽。」
ユ尚宮は、籠の運び手に言います。
「お前達に水を与えた者を見つけ出すのだ。」
監察府内人と人物の確認をする男達。
トンイはその様子を見つめます。
少論派重臣を見張るチョンス、そしてハン達。
やって来た重臣達に、首長は言います。
「兵曹参判チャン・ムヨルはどうしている?」
「義禁府に捕えられています。まもなく取り調べが始まるようです。」
「チュンジョン媽媽の内旨標信のお陰で、我々にはどうすることもできません。」
「このままではいかん。黙って放っておくわけにはいかんのだチャン・ムヨルが全てを白状したら、我々も巻き込まれる。我々全員おしまいだ。」
「大監。まず証拠をできるだけ破棄しなくては?」
「急がねばならぬ。彼らが見つける前に、急ぐのだ。」
火薬商人のところへ現れた少論派重臣の下男。
「こんなところまでどうしたのですか?」と男。
「お前達全員、しばらく都城から離れてもらわねばならん。この金は、お前達が身を隠すのに十分なはずだ。」
「どういうことですか?まず理由を聞かせて貰いましょう!ただ出て行けと言われて、出ていけると思ってるんですか?」
「このままここにいたら、皆死ぬことになるんだ。」
そのとき、矢が男の胸に。
男達を追い詰めるヨンギ率いる内禁衛達。
抵抗する男達。
そこにハンが駆け付けます。
「大丈夫ですか?ヨンガン。」
「私は大丈夫だ。早くその者達を捕えよ。」
「これは、右相の家の下男だ。早くひっ捕らえて義禁府に連れていけ!」とハン。
空を見上げるヨンギ。
「昨夜の流れ星は、この事件のことを指していたのだ。そして人々の願いも叶えられるということも…。」
「人々の迷信が理に叶うこともあるのです。」とハン。
執事を待つ少論派首長。
「どうしてチャン執事はまだ戻らんのだ?」
「私が行って見て来ます。」と男。
「大監!何かあったのではないでしょうか。」
「無駄にしている時間はない。家に戻り、宮中に行く支度をするのだ。殿下が戻られる前に、チュンジョン媽媽にお会いしなければならぬ。それから…。」
そこにスクチョンが。
「急ぐ必要はない。私はまだ宮中には戻っておらん。」
「殿下!」と頭を下げる重臣達に、スクチョンはさらに言います。
「それに、官服に着替える必要はない。右相、ピョンパン、そして義禁府事!内禁衛がお前達と一緒に行くのだから…。」
地面にひれ伏す重臣達。
「殿下、それはどういうことでございますか?おっしゃっていることの意味が理解できません。」
「黙れ!私の前で自分の罪を否定しない方がよいぞ、右相。少しでも長く生きていたいのなら。」
宮中に戻り、トンイを抱き締めるスクチョン。
「大丈夫か?どこも怪我はないか?」
「はい、殿下。私は何ともありません。」
「すまなかった。お前一人を残しておけば、このようなことが起こることを考えるべきだった。」
「違います、殿下。殿下がすべてを解決してくださったではありませんか?」
「トンイ!私は絶対に彼らを許さぬ。お前とヨニングン、世子とこの国の王室に対して彼らがしたことを、決してそのままにはしておかぬ。」
チョンスは、ムヨルに言います。
「ヨンガンの道は終わったようですね。義禁府の拷問場に連れていけ!」
そして、チョンスは彼らの拷問を始めます。
そこにスクチョンが。
「殿下!私は何も知りません。これは陰謀です、殿下。私は世子殿下に危害を加えようとはしていません。これは淑嬪媽媽の策略なのです。」と叫ぶムヨル。
「お前はまだ、なぜ私がここに来たかわかっていないようだな、兵曹参判。よく聞け、ピョンチャン。私は、お前の言いわけを聞きに来たのではない。お前の自白を聞きに来たのだ。お前は自分の私利私欲のために、畏れ多くも君主を欺いたのだ。その罪がどれほどのものかわかっているのか?お前をそうやすやすとは死なせはしない。何をしておる?拷問を続けぬか!」
トンイは、インウォンのところへ。
「結局お前はすべてを解決した。どうやってそれを予測し、必要な準備を整えたのだ?」
「私がそうできたのも、媽媽のお陰でございます。媽媽が私の真意を信じてくださらなかったら、こうはなりませんでした。」
「そのように申すな、淑嬪。今一番感謝しているのは私だ。私は、王室に対して許し難い罪を犯すところだった。そんな私を信じ救ってくれたのは、お前なのだ。」
便殿に集まった重臣達に、スクチョンは言います。
「私は、どんな抗議や請願も聞くつもりはない。畏れ多くも王室を欺き許し難い罪を犯した彼らを、私は情け容赦なく処罰する。わかったか?都承旨、処罰を発表せよ。」
都承旨は、教旨を読み上げます。
「罪人兵曹参判チャン・ムヨル、罪人右議政イム・サンヒョン、兵曹判書カン・ウジュ、…イ・ソンジュンは、王室と朝廷を揺るがす重大な罪を犯した。それゆえ国法に従い、最も重い罪を申し渡す。兵曹参判チャン・ムヨルおよび軍官ミン・ホンジュンは、直ちに斬首とし、その首は都城の門に掲げるものとする。そして右議政イム・サンヒョンおよび残りの者は、流刑としその後処刑されるものとする。これにより、我が国の王室と朝廷の権威は回復されるものである。」
連行されるムヨルに、ヨンギは言います。
「お前のこのような姿を見ることになるとは、本当に残念だ。その頭脳をもっとよいことに使えばよかったものを。」
「よいことに…?あなたにもすぐにわかりますよ、ヨンガン。ヨニングンが世弟になる?賎民出身の後宮の子孫が王位を継ぐ…?目を覚まして下さい、ヨンガン。この国で本当にそんなことが可能だとお思いなんですか?淑嬪もヨニングンもあなたも、世子が王位を継げば、誰も生き残ることはできないんです。世子がそれを許すと思ってるんですか?少論重臣達がそれを許すと思ってるんですか?全員殺されるんです。見ててください。あなた方は、私よりひどい最後を迎えるはずです。」
「私の最後はどうなるのか、どのような世界が始まるのか…。それは私があの世に行ったとき、お前に話してやろう。連れていけ。」
トンイはチョンスに言います。
「これから、どれほど多くの血を見なければならないのでしょう。ヒビン媽媽も兵曹参判も、皆死にました。誰も権力のために争ったり陰謀を企てたりしない世の中を私は夢見ていました。そのために血を流したりしない世の中を…。私は一体彼らとどこが違うのでしょう、オラボニ。」
「いいえ、そんなことはありません。媽媽は彼らとは全く違います。亡くなられた首長も、同じことを言っていました。自分が夢見る社会のために剣を持つことが正しいのかどうかと…。ですが、紛争や戦うことなしに、理想の社会が実現することはないともおっしゃっていました。だから我々は剣を持って戦っているのです。媽媽は、安易な道をずっと拒んできました。権力を得るために彼らの基準に決して合わせることはしませんでした。そして媽媽は、その権力を自分のために決して利用したりしませんでした。媽媽は今、最も困難な戦いをなさっているのです。そこには、媽媽に共感し媽媽の夢を大切にする我々がいることを忘れてはなりません。どうかこの戦いを恐れないでください。」
都承旨を召喚するスクチョン。
世子はスクチョンの真意を知り驚きます。
「禪位だと?チャン尚宮、何だと?アバ媽媽が何をなさるだと?」
「禪位でございます、殿下。今重臣達を集め、教旨が下されました。」
当然の発表に驚く重臣達。
「殿下!禪位などと、それはあってはならないことでございます。我々は、これを受け入れることはできかねます。どうかお考え直しください。」とイングク。
「私は自分の意志をはっきりと申した。私の目的は、お前達の反応をみるためでも朝廷を揺さぶるためでもない。これは王室と朝廷のために、君主として私が決断したことだ。そしてそれを変えるつもりないことを覚えておけ。」
「殿下!これは絶対にあってはならないことです。絶対にこの事実を受け入れることはできません。」と重臣達。
ヨンギは、スクチョンに言います。
「恐れ入りますが、殿下。どうか考え直してください。」
「私の意志は変わらん、内禁衛将。私の命令に従って、宮中とイヒョン宮の警備をしっかりするよう準備してくれ。」
イングクは、ウンテクに言います。
「では、お前は殿下のお気持ちを知っていたのか?」
「はい。殿下は既にこのことを淑嬪媽媽にお話になっています。」
「たとえそれがヨニングンの将来のためだとしても、禪位など絶対にあってはならぬ。殿下が禪位後も国を治めるとしても、朝廷の混乱は避けられぬ。殿下の忠臣として、このようなことを許すわけにはいかんのだ。」
トンイは、スクチョンのところへ。
「殿下!殿下もこのことがどれほど無理なことかおわかりでしょう。どうか命令を撤回してください。」
「それはできないのだ、トンイ。私がほんの少し宮中を留守にしただけで、お前がどんな目に遭わねばならなかったか、もう忘れたのか?これが現実なのだ。常に王位をめぐる戦いがあるのだ。これだけがそれを止める方法なら、たとえそれが無理なことであろうと、私は自分の意志を変えるつもりはない。」
世子は、仁政殿の前でスクチョンに訴えます。
「殿下、私は御命を受け入れることはできません。どうか御命を取り下げて、この国の統治を続けてください。殿下、どうか撤回なさってください。」
その様子を見ていたトンイは、「チュンジョン媽媽に会わねばならぬ。」と。
イ尚宮は、インウォンに言います。
「世子殿下は嘆願を続け、重臣や儒学者達も抗議しました。ですが、殿下のお心は変わりませんでした。チュンジョン媽媽、どうしてここで黙って見ていらっしゃるのですか?媽媽が殿下にお会いになって…。」
「支度してくれ、イ尚宮。出かけねばならん。」
ウナクは、勉強に身の入らないクムに言います。
「媽媽、次の句をお読みください。」
「申し訳ありません、師匠様。私は本に集中できません。」
「宮中の出来事のせいですか?」
「はい。アバ媽媽が禪位なさるそうですが、それは一体どういうことなのですか?あってはならないことでしょう?」
答えに困るウナク。
そこにインウォンが。
「そうだ。あってはならぬことなのだ、ヨニングン。」
慌てて彼女に挨拶をするクムとウナク。
「お前がヨニングンの師匠ウナクだな。」
「はい、その通りでございます。」
「チュンジョン媽媽!どうしてここにいらしたのですか?」とクム。
「お前に会いに来たのだ。私はヨニングンが勉強しているところを見たくて来たのだ。少しの間邪魔をしても構わぬか?」
怪訝な表情で、「わかりました、媽媽。」とウナク。
中宮殿でそのことを知らされるトンイ。
「つまりチュンジョン媽媽が、ヨニングンに会いに行ったというのか?」
「媽媽。一体どういうことだと思われますか?」とポン尚宮。
そこにインウォンが戻って来ます。
「ちょうどお前を呼ぼうとしていたところだ。ちょうどよいところに来た。」
トンイは、インウォンに訊ねます。
「申し訳ありませんが、どうしてヨニングンに会いに行かれたのかお聞きしてもよろしいですか?何か間違いでもいたしましたか?」
「そうではない。決断を下す前にヨニングンの勉強する姿を見てみたかったのだ。お前が私に会いに来たのは、殿下のお気持ちを変えて欲しいと私に頼みに来たのであろう。禪位はよくないと言って欲しいと…。そうだ、淑嬪。私もそのようなことはあってはならぬと感じている。だが、殿下のお気持ちを変えるためには、その前に私が決心しなければならないことがあるのだ。」
「決心ですか?媽媽、それはどういうことでございますか?」
にっこり微笑むインウォン。
チョン尚宮は、ユ尚宮に言います。
「宮中は噂でもちきりだ。そのようなことがないようしっかりと見張ってくれ。」
そこにチョンイムが。
「中宮殿が、緊急の命令を寄越しました。」
インウォンの話に驚くトンイ。
「チュンジョン媽媽!媽媽がヨニングンを養子になさりたいとおっしゃったのですか?」
「その通りだ。世子が王位に上がったら、チュンジョンの長男であるヨニングンは、間違いなく世子の権利を有することになるのだ。どう思う?淑嬪。ヨニングンを私に任せてくれぬか?」
そしてインウォンは、スクチョンにもその話を。
「これが考えた末、慎重に下した私の結論です。ヨニングンの地位が安定すれば、殿下が禪位なさらなくても、世子もヨニングンもどちらも守られることになります。」
「だが、チュンジョン。どうしてこのような結論に至ったのだ?」
「おそらく淑嬪、あの人のせいでしょう。」
クムを寝かしつけながら、トンイは昼間の出来事を思い出します。
<回想シーン>
「ですが、媽媽。どうしてヨニングンのために、そのようなご決断をなさったのですか?一体どうして媽媽がヨニングンのためにこのようなことを…?」
「おそらく、お前を失いたくないためではないか。この国の最高の地位を諦め、世子を守ろうとするお前の本心が知り、私は自分を恥じた。そのようなことを決断できる人間がいることすら想像できなかった自分が恥ずかしかった。お前はチュンジョンの地位を諦め、世子を守ってくれたのだ。これからはこの地位にいる私がお前の代わりにヨニングンを守りたいのだ、淑嬪。そしてお前が、それは犠牲ではないと言ったこと、私はようやくその意味がわかったのだ。この決断をして、私の心は喜びに満ち溢れている。これを私に教えてくれたお前に、心から礼を言うぞ。」
クムを見つめながら、トンイは呟きます。
「媽媽!私はどうやってご恩をお返しすればよいのですか?媽媽のご親切に報いるにはどうしたらいいのですか?」
スクチョンは、ハン尚膳に言います。
「ヨニングンを守るために養子にするとは…。どうしてチュンジョンはそのようなことを…?」
「おそらく、淑嬪媽媽の誠意に心が動かされたからでございましょう。殿下や媽媽の周囲の者達がそうであったように…。殿下、こういうことになったのですから、もう禪位の命令は取り下げてもよろしいのではありませんか?世子殿下もチュンジョン媽媽も、それを願っていらっしゃいます。世子殿下のためにもクム媽媽のためにも、殿下はこの国の基盤を安定させなければならないのです。」
喜ぶジュシクとヨンダル。
「チュンジョン媽媽の養子になるんですよ。ナウリ。それはつまり将来王位を継ぐってことじゃありませんか?もうこれで世子殿下の地位も安泰ですね。」
「その通りだ。まったく驚くじゃないか。チュンジョン媽媽がそのような重大な決断をなさるなんて、誰が考えた?」
「本当ですよ!彼女の目を見ていると、人は彼女が意地悪な人間だと思ってしまいますよ。」
「その通りだ。だが、今思えばそれは深く物事を考えていたからなのだ。だから…。」
そこにホヤンが。
「おい、ファン主簿!淑嬪媽媽だが、いつ私宮に行かれるんだ?来る来ると言いながら、どうして何の知らせもないんだ?」
「どうしてそれを待っているんだ?」とジュシク。ヨンダルも、
「そうですよ。どうしてあなたがそれを心配しなくちゃいけないんですか?」
「いや、ただちょっと…。とにかくわからんでよい。で、いつなのだ?」
「媽媽は、たぶん出て行かれませんよ。」とヨンダル。
「えっ?なぜだ?」
「いくら仕事もなく遊んでいる人間だとしても、この知らせを聞いていないのか?我々の媽媽が出宮なさりたかったのは、殿下が禪位なさるからだったのだ。我々のクム媽媽のお立場がはっきりした今、どうして淑嬪媽媽が出て行く必要があるのだ?」
「どうして…。私の傍に来ると思っていたのに…。」と泣き出すホヤン。
「こいつ、気でも狂ったのか?」とジュシク。
テプン達にそれを告げるホヤン。
テプンは、とにかく結婚しろと彼に言います。
「淑嬪媽媽以外の誰とも結婚したくありません。」
「媽媽は、君主のものなのだ。馬鹿なことを言うな。」
「ホヤン!私達が一生懸命お前の気に入る娘を捜すから。いえ、淑嬪媽媽にそっくりな娘を捜すわ。」
「そんなことできません。彼女ほど綺麗な人はいませんよ!」
外に出て話し合うテプンとパク夫人。
「たとえ朝鮮中を捜すことになっても、淑嬪媽媽に似た娘を見つけるんだ。」
「もうあの子を見ていると気が狂いそうですよ。清国に行くことになろうと、絶対見つけます!」
「言葉がわからんじゃないか。」
「顔さえ似ていれば、それでいいじゃないですか?」
話をするトンイとスクチョン。
「これは、ヨニングンの将来に最良だが、お前はあの子がチュンジョンの養子になるのは寂しいのではないか?」
「いいえ、殿下。私はあの子を産んだ母親です。この事実が変わることはありません。ヨニングンは母を二人持つことになるのです。あのようなお優しい媽媽がヨニングンの母になってくださるなんて、この喜びと感謝の気持ちをどうすればいいのかわかりません。」
「夜も更けて風が冷たくなってきた。もう中に入って休んだほうがよさそうだ。」
「ちょっとお待ちください、殿下。もう少しだけ、私と一緒にいてくださいませんか?ここでのすべてを心に刻んでおきたいのです。今ここで殿下とお話したこと、殿下と一緒にしたこと…、その全てを覚えておきたいのです。」
「一体どういうことだ?トンイ。全て覚えておきたいとは…。我々はいつでもここに来られる。まるでもうここに来ないような言い方ではないか。」
「殿下。私は元々のご命令通り宮中を出て行きます。殿下が下された命令通り、イヒョン宮に行きます。」
驚くスクチョン。
エジョンから、そのことを知らされるクム。
「何だと?オモニが出宮なさるだと?エジョン!そんなことはないと言わなかったか?アバ媽媽は既に御命を取り下げたのではなかったのか?」
スクチョンは言います。
「だめだ。絶対にだめだ。私がお前を外に出すと言ったのは、私も一緒に行くということだったのだ。だが、どうしてお前一人で私宮に行くなどと言いだすのだ?」
「これは、ヨニングンがチュンジョン媽媽の子として成長するためなのです。殿下、今ヨニングンが母としてお仕えし心を捧げなければならないのは、チュンジョン媽媽なのです。どうかヨニングンにそうさせてください。ヨニングンを守ってくださるというチュンジョン媽媽に心の全てを捧げさせてあげてください。私を行かせてください。」
「いや、絶対に許さぬ。それではお前はどうなるのだ?お前はすべてを諦めるつもりなのか?お前の夢とお前の子供を…。それじゃ、私はお前に何をしてあげたというのだ?何もないお前を行かせるなんて…。」
「殿下。今までずっと、殿下は私を愛し慈しんでくださったではありませんか。それをどうして何もしなかったなどとおっしゃるのですか?私の心は愛で満たされているのです。だから、私は全てを諦められるのです。いえ、殿下の愛が溢れているのです。ですから、その溢れる愛で世界を満たすことを許して下さい。殿下が私に与えてくださったお心を、この国の人々に分け与えることをお許しください。どうかそうさせてください。」
チョンスは、トンイに言います。
「殿下は、そう簡単にこれに賛成することはありません、媽媽。」
「そうでしょう。ですが、最後には私にお許しをくださるはずです。それが私の真意だとわかっていますから。考えて見たら、私はいつも自分のしたいことをねだる我儘な子供のように振舞っていたんです、オラボニ。」
「本当にこうしなくてはいけないんですか?宮中を出て行かなくても…。」
「いいえ。宮中で、ヨニングンの母は、チュンジョン媽媽お一人でなければなりません。私は媽媽を信じています。媽媽は必ずヨニングンを愛し、可愛がってくださいます。あの子を傍に置き、抱き締めたい…。毎日成長していくのを見ていたい…、私はきっとそう考えるでしょう。ですが、ヨニングンの母としての私の任務は、そういうことではないのです。あの子が王位を継いで君主になったら、そしてあの子がこの国の人々の父となったら、私は彼に教えたいのです。ヨニングンの身体に賎民の血が流れていることを恥じてはならないと。その血を忘れることなく、そのような人達の君主となることを…。」
深くため息をつき、頷くチョンス。
そして考え込むスクチョン。
第60話に続く!
なかなか緊迫した展開でしたが、残り2話でもまだこんな事件をと言う印象でした。
チャン・ムヨルにああまでさせる動機がいまひとつ理解できず、
一体彼は何がしたいのか、真の目的は何なのか…、
一貫性のない彼の行動を目の当たりにしている重臣達が、
あれほど簡単に彼に翻弄されることもあるまいと…。
どうも彼自体に入り込めない私の個人的な感想ですけどね^^
そんな彼が、粛宗より彼の出番が多かったことが気に入らなかっただけかも知れません(^^)
ここまで無理にスリリングな展開にもってこなくても、
もっと静かにトンイ、スクチョン、クム、世子にスポットを当てたらいいのにと。
それにしても、仁元王后には驚かされましたね。
そのインパクトを強めるために、あんなキツイ顔を選んだのかと思ったりして(笑)
これで何とか残り2話は、穏やかにことが進むのでしょうか。
予告編は何やら回想シーンばかりで^^。
昨日のものですが、久しぶりにタッパルの厳しい記事を発見!
タッパルのテレビを読む:同伊、大引け展開で自滅
まぁいつものように、ここまで言わなくてもという感じです^^。
いよいよ来週で最終回。
どういうラストを迎えるかということよりも、既に寂しさのほうが強い私。
いろいろと問題はありましたが、やっぱり好きですね、このドラマ(^^)
終わったら気が抜けてしまいそうです。
それより、最終回までにあらすじが追い付くかどうか…。
58話の復習はこちらで!
レモン色の雲:第58回あらすじ
チャイミのベッドストーリー:第58部-世紀のロマンチスト粛宗、彼の選択が重要な理由
宮中に残った兵力をすべて手中に収めたムヨル。
ファンは、チョンスに言います。
「ナウリ!どこも同じです。すべての兵力が兵曹参判チャン・ムヨルに移されています。内禁衛…が宮中にいない今、ここには義禁府の兵しか残っていません。ですが…。」
「そうだ。そして、全ての兵力がチャン・ムヨルの手にある。」
「その通りです。全ての兵力がです!」
ムヨルは言います。
「これであとは、チュンジョンの動きを待つだけだ。」
ポン尚宮は、インウォンがやって来たことをトンイに告げます。
「媽媽が?このような時間にどうなさったというのだ?」
そこにインウォンが。
「淑嬪!私はお前に確かめたいことある。」
ムヨルは、「注意深く命令を実行しなければならぬ。」とミン軍官に言います。
そこにチョンスが。
「あなたは、何をしようとしているのです?」
「一体どうしたのだ?あぁ、義禁府の兵のことを言っているのか?そのことなら、義禁府の首長…大監を捜すべきだ。これを要求したのは彼だからな。内禁衛が出て行ったので、宮中の兵力が半分になった。おそらく、中央の司令官が必要だとお感じになられたのだろう。それで全ての兵力を移動させたのだ。特に大騒ぎをするようなことではない。少し考え過ぎだ。」
「お忘れではないでしょうな、ヨンガン!私がいつでもあなたの命を奪えると前に言ったことを忘れないでください。ですから、悪いことは考えではいけません。」
「そうか…。それならやってみるがよい。私の命を奪ったりしたら、お前も無事では済まぬ。そうなったら、一体誰が淑嬪媽媽とクム媽媽を守るのだ?もう、他に誰も残っていないのだ。」
突然現れたインウォンに、トンイは言います。
「このように遅い時間に、どうして私を訪ねていらしたのですか?媽媽。」
「お前は、なぜチュンジョンの席を断ったのだ?お前が、この席に座るのは私でなくお前だと思っていることはわかっている。だからお前に聞きたいのだ。何を企んでいる?お前の隠れた動機は何なのだ?世子の地位を狙いながら、どうしてチュンジョンの席を断った?ヨニングンになぜあのような結婚をさせたのだ?それでどうやって世子の信頼など得ようとしたのだ?申してみよ。一体お前はどのような人間なのだ?そして、どうしてあのような噂があるのだ?」
「どうしてそのような質問をなさるのですか?媽媽。それは媽媽が、私とヨニングンに関する噂が少しおかしいと、既にお気づきだからでしょう。だから、このような時間に私を訪ねていらしたのではないのですか?」
ムヨルは、インウォンがトンイに会いに行ったことを知らされます。
インウォンは、再び訊ねます。
「それでは、なぜなのだ?世子のためにチュンジョンの席を犠牲にしたと言うのか?」
「いいえ、媽媽。犠牲だなとと言うつもりはありません。逆に、私の欲だったのです。世子殿下とヨニングンを二人とも守りたい、そして誰も失いたくない…。そんな大きな欲のためです。ですが、私は自分のこの欲のために、宮中にこのような危機をもたらすとは予想もしていませんでした。このことのために、このような…。」
「危機?どういうことだ?」
「媽媽、私は媽媽に申し上げなければならないことがございます。他の誰よりも、媽媽が先にこのことを知るべきなのです。」
そこにインウォン付きのイ尚宮が。
「媽媽。兵曹参判チャン・ムヨル様がお目通りを願っています。」
「今すぐか?」
「はい。大至急とのことでございます。」
現れたインウォンに、ムヨルは言います。
「至急お知らせすることがございます。」
トンイのところには、チョンスが。
ムヨルの話を聞くインウォン。
「それは一体どういうことだ?参判。寶慶堂の様子がただならぬとは?」
「殿下が、淑嬪媽媽の出宮をお決めになられた後、彼らは何かを諮っているようです。特に淑嬪媽媽の兄、義禁府都事チャ・チョンスの動きが怪しいのです。東宮殿に対し、何やら企んでいるようなのです。」
「東宮殿にか?ひょっとして世子に?」
「はい、その通りです、媽媽。」
「証拠は?それを証明する証拠はあるのか?」
「いいえ。まだはっきりとした証拠はございません。ですが、彼らの動きは明らかにただ事ではありません。それが脅威となるまえに、それを見つけ出し阻止するべきではありませんか?今殿下は宮中にいらっしゃらず、警備が手薄となっております。私は誰かこの機会を利用するのではと、それを案じているのです。」
「そうだ。彼らが何を企んでいるのか見つけ出す手立てはあるのか?」
「はい。それで媽媽にお会いしたかったのです。媽媽に助けていただきたいことがあるのです。」
トンイは、ウンテクとチョンスに言います。
「兵曹参判チャン・ムヨルが宮中の兵力を握っているというのですか?」
「はい、その通りです、媽媽。」とチョンス。
「彼らの動きがとても心配です。」とウンテク。
「殿下が出発なさった後、春秋殿に何かありました。殿下は禪位のために、太祖と太宗の記録を再編纂するようお命じになったのです。」
「そういうことなら、彼らは既に殿下のご計画を知っているかもしれません。」とトンイ。
「その通りです、媽媽。もし彼らが、世子殿下を寶位しヨニングンを世弟にさせるということを知れば、黙ってそのままにしておくはずはありません。そのようなときに、兵力をすべて握ったのです。」
「それなら、彼らは媽媽とクム媽媽に対し、この機会を利用するつもりかもしれません。」
トンイの宮殿を出たチョンスは、ウンテクに言います。
「ナウリは、老論派の重臣のところへ行き、助けをお願いして下さい。私は、私宮にいる内禁衛将に知らせ、どれくらいの兵を編成できるか調べて来ます。」
トンイは、ポン尚宮にヨニングンを連れて来るよう命じます。
チョンスは、部下に書状を渡し、「すぐ私宮に行き、これを内禁衛将に渡して来るのだ。」と。
すぐ馬で出かける兵士。
ムヨルは、ミン軍官に様子を訊ねます。
「ヨンガンのおっしゃった通り、彼らは動き始めました。」
「私宮に行くとなると、少なくとも半日はかかる。知らせを聞いた内禁衛将が戻るのにまだ半日…。我々にはたっぷり1日ある。その時間内に、全てを終わらせなければならないのだ。わかったか?」
ウンテクは、クムに言います。
「媽媽!明日私は、今日までに習ったことについて試験を行います。一生懸命勉強してください。」
「はい、師匠様。気を付けてお帰り下さい。」
そこにエジョンが、「媽媽!寶慶堂に行ってください。」と。
「一体何事だ?エジョン。こんな時間に、どうしてオモニの居処に行かねばならぬのだ?」
「それは…。媽媽は、久しぶりにクム媽媽と一緒にお休みになりたいのだと思いますよ。」
嬉しそうなクム。
ユ尚宮は、監察府内人達に言います。
「皆命令通り、注意深く周囲を見張るのだ!」
「ですが、ママニム。内禁衛はいなくても、まだ他にたくさん兵士がいるのに、どうして私達が寶慶堂を警護するのですか?」とイングム。シビも、
「そうですよ、ママニム。何かあったんですか?」
「いや、お前達は命令に従っていればよいのだ。」とユ尚宮。
ユ尚宮とチョンイムは、チョン尚宮のところへ。
「監察府内人達を、寶慶堂に配置しました。」
「私の調べたところ、兵曹が全ての兵士を支配しているようです。一体何が起きているのですか?ママニム!」とユ尚宮。
人数を数えるファン。
「一人、二人…、15人。あぁ、頭がおかしくなりそうだ。」
そこにチョンスが、「兵力は?」と。
「残っている内禁衛と義禁府を全部集めましたが、20人足らずです。」
「残っている兵士全員に武器を持たせるのだ。」
「はい、ナウリ。でもこんな少ない人数では、まったく…。」
考えるトンイ。
「ひょっとして、兵曹参判は宮中で無茶なことをしようとしているのか?だが、そうでないとしたら、なぜ軍力をすべて握ろうとしているのだ?殿下…。」
庭に佇むスクチョンに、ヨンギは声をかけます。
「殿下。どうして外にいらっしゃるのですか?」
「眠れないだけだ。おそらく、宮中の外にいるからだろう。」とスクチョン。
「殿下…、殿下は…。」と言いかけるヨンギの言葉を遮るスクチョン。
「おい、お前が何を言おうとしているのかわかっている。だが、そのようなことを言っても無駄だ。」
「殿下、禪位などということをなさってはいけません。どうかお考え直しください。」
「考え直せだと?これから、この言葉を幾度となく聞かねばならぬのというのに、お前までそういうのか?」
「殿下。このことが宮中にどのような影響を与えるかをお考えください。淑嬪媽媽も、そのようなことは望んでおられないはずです。」
「だが、これだけが解決策であることをお前もわかっているはずだ。違うか?私が王位を諦めることが、君主としての私の最良の決断なのだ。身体の弱い世子のは、風前の灯のようなものだ。今私が死んだら、体の弱い世子が王位に上がる。そして重臣達に揺さぶられでもすれば、王室は完全に破滅するのだ。だから太祖王がなさったように、ヨニングンが世子の後を無事に継げば、王室の権限は崩れることはない。だから、私はこの決断をしたのだ。お前も私の意志を理解してくれ、内禁衛将。お前が本当に君主としての私を助けたいのなら。」
「ですが、この国の基盤は殿下なのです。それをどうして退かれたりなさるのですか?」
「君主の何がいいのだ?王冠を手羽ないしても、私には淑嬪がいる。それは、この地位よりも、私にとっては大切なものなのだ。」
考え込むヨンギ、そしてスクチョン。
そこに、「査察(視察?)の準備ができました。」とハン尚膳が。
「わかった。この視察が済んだら、狩りの準備をしてくれ。鹿を捕まえて、唐鞋(당혜:タンへ、女性用の靴)を作りたいのだ。」
「はい、殿下。」とにっこり微笑むハン尚膳。
作らせた唐鞋を履いて、宮中に戻って来たトンイを思い出すスクチョン。
「今何時だ?」とムヨル。
「卯の刻でございます、ヨンガン。」と部下。
そこにミン軍官が。
「命じたことは?」とムヨル。
「全て命令どおり準備しました。何もぬかりはありません。」
「では後はチュンジョンの決断を待つだけだな。」
インウォンは、ムヨルとの会話を思い出します。
<回想シーン>
「私の助けとは、一体何だ?ヨンガン。」
「淑嬪媽媽の出宮を急ぐのです。淑嬪媽媽の出宮なさることは既に決められいます。ですから、明日出発させるのです。」
「だが、淑嬪は殿下のお帰りを待って出宮するはずだ。殿下がいらっしゃらないのに、どうして早く出宮させねばならぬのだ?」
「媽媽!まさに殿下が宮中にいらっしゃらないからです。殿下の留守中に彼らが何をするか、わからないではありませんか?いずれにせよ、彼女は宮中を出て行くのです。世子殿下のためにも、早く出すほうがいいのです。」
少論派首長は、ムヨルに言います。
「本当に我々はこれをお前に一任していいのか?」
「ご心配なら、諦めましょう。殿下は騒動を起こそうとこうしているのではありません。殿下の真意は、禪位なのです。禪位の後、ヨニングンが世弟になり、淑嬪が計り知れない権力を持つことになるのです。そうなれば、我々はおしまいです、大監。淑嬪とヨニングンを追い出すには、今が絶好の機会なのです。殿下が宮中に戻られたら、そのような機会は二度とありませんぞ、大監。」
チョンスは、「昨夜、奴らに何か動きはあったのか?」と部下に。
「チャン・ムヨルヨンガンの部下のミン軍官を尾行しましたが、見失いました。尾行されていることを知っていたようです。」
そこにファンが、「ナウリ、大変です!」と。
ポン尚宮の話に驚くトンイ。
「何?チュンジョン媽媽が、私に明日出宮するよう命じられただと?」
「はい、媽媽。たった今命令が届きました。」
ジュシクとヨンダル。
「これは、一体どういうことだ?まだ数日残っているじゃないか。」
「だから、気が変になりそうなんですよ。今日すぐに出て行くようにとの命令なんです。殿下は、今宮中にいらっしゃらないじゃないですか。明らかに淑嬪媽媽を痛めつけようとしているんです。」
「昨日は、殿下がおかしくなった。今日は、チュンジョン媽媽が…。それで、淑嬪媽媽は戦うつもりなのか?」
トンイは、インウォンのところへ。
チョンスから話を聞くウンテク。
「直ちに出宮だと?そんな理不尽な…。我々は、媽媽をお守りする軍官さえおらぬではないか。」
「これが、チャン・ムヨルの狙いだったのです。媽媽が今出宮なされば、ただでさえ少ない兵力を、。ヨニングン媽媽と淑嬪媽媽をお守りするために二つに分けなければならないのです。」
「我々は身動きが取れぬということか。まさか、お二人のお命を狙っているということではあるまいな?本当に気でも狂ったのか…?チャン・ムヨルの奴、どうしてそんな無茶なことを?」
トンイは言います。
「どうか私のお願いをお聞き届けください。ほんの数日、私に時間をいただけませんか?」
何も言わず横を向くインウォン。
下を向いて中宮殿を出て来たトンイに、声をかけるポン尚宮。
「いかがでした?チュンジョン媽媽は何と言われたのですか?」
「出宮の準備をしてくれ、ポン尚宮。」とトンイ。
「えっ?それじゃ、本当にすぐ出て行くということなんですか?」
クムは、トンイのところに駆け付けます。
「オモニ!出宮するんですか?一体どういうことなんですか?アバ媽媽が、オモニを宮中から追い出したがっているというのは、本当なんですか?それでオモニは、内人達に私に言うなと言われたのですか?」
「クム、こっちにおいで!」
「なぜですか?どうしてオモニが宮中を出て行かなくてはいけないんですか?嫌です。オモニが出て行くのなら、私も一緒に行きます。」
「クム!母が宮中を出て行ったからといって、二度と会えないわけではない。このようにお前は毎日私に会いに来ることができるし、私もお前に会いたいときには、宮中に来ることができる。」
「そんなの嫌です。オモニに宮中を出て行って欲しくないんです。」
「仕方のない子だ。母と離れるくらいのことでどうして泣いたりするのだ?母が前に何と言った?お前はもう婚令を済ませたのだ。だから、もっと大人にならなければならぬ。」
「オモニ!アバ媽媽は、どうしてオモニを外に出すのですか?私は、アバ媽媽が嫌いです。今までそんなことを考えたこともありませんでしたが、今は本当にアバ媽媽が嫌いです。」
「いいえ、クム。それはなりません。これはすべてお前のためなのだ。前に母とお前が私家に住んでいたときのように、アバ媽媽はお前のためにこうなさったのだ。」
「どうしてですか?どうして私のためにそんなことをしなくてはならないのですか?訳を話してください、オモニ。どうしてオモニが出て行かなくてはならないんですか?」
何も答えられないトンイ。
世子はインウォンのところへ。
「チュンジョン媽媽!どうか命令を取り下げてください。アバ媽媽がお戻りになったら、私は淑嬪媽媽が出て行かれるという御命の撤回をお願いするつもりです。ですから、殿下がお帰りになるまで待ってください。どうか、もう一度お考え治して下さい。」
「これはそのようなわけにはいかないのだ、世子。これは内命婦の問題だ。だから、決定は私に任されているのだ。世子の口出しできることではない。戻って自分のすべきことをするのだ。今殿下が宮中におらぬ。それゆえ、世子が殿下の代わりを務めなければならぬのだ。今日は、耆老宴(기로연:キロヨン、70歳以上の元老のために、春秋に開かれた宴)あると聞いた。殿下の代わりに出席するのだ。世子は戻って必要な準備をするのだ。行くのだ!」
チョンスの手紙をヨンギに届けに私宮に到着した部下は、ヨンギがスクチョンの警護で視察に出たことを聞かされます。
兵士達に、「ヨニングンを守らねばならぬのだ。わかったか?」とファン。
そこにチョンスが。
「兵士達はどうだ?」
「この兵士達は、クム媽媽の居処の警護のために、宮中に留まります。そして残りの者達が淑嬪媽媽を警護する予定です。」
「淑嬪媽媽を警護する兵士がもっと必要だ。」
「ですが、宮中をお守りする兵士もいないのに、他にはもう誰も見つかりませんよ、ナウリ!」
ムヨルは、部下を配置に。そして現れたトンイに言います。
「イヒョン宮まで媽媽のお供をする兵曹の軍官達です。この者達は、イヒョン宮でも警護をいたしますので、何も心配はありあmせん、媽媽。」
「こんなことをする理由は何ですか?軍権を握り、私に圧迫を加える理由です。」
「圧迫ですと?媽媽。私はただ、媽媽の身の安全を心配しているだけです。それなのに、どうしてそのようなことをおっしゃるのですか?それに申し訳ありませんが、このようなことを招いたのは、私ではなく媽媽なのです。殿下を操り、何か驚くべきことを準備なさいませんでしたか?ですが、媽媽の思うようにさせるつもりはありません。」
そして、ムヨルは兵士達に「媽媽の安全が何より重要だ。しっかりとお守りしろ!」と。
トンイは、現れたチョンスとウンテクに言います。
「兵曹参判は知っています。殿下のなさろうとしていることを知っているのです。」
チョンスは言います。
「チャン・ムヨルがこのことを知っているなら、何か企んでいるに違いありません。クム媽媽が世弟になれば、彼は終わりだということを他の誰よりよくわかっています。」
「媽媽、どうしても出宮を遅らせることができませんでした。」とウンテク。
「その必要はありません。私は決められたとおり出て行きます。全ての兵士はここに残し、ヨニングンを守ってください。」
「媽媽!ですが…。」とチョンス。
「彼は追い込まれていますが、公の場で私に何かすることはないはずです。ですから、あなた方はここでヨニングンを守ってください。私の言う通りにしてください、オラボニ!」
ムヨルは、「今彼らはどうしている?」とミン軍官に。
「混乱して、どうしていいかわからないようです。ヨンガンの計画通り、すべてが進んでいます。」
「そうか。脅したから、私達の思うようになるはずだ。」
ウンテクは言います。
「このままでは、媽媽の安全を保障できぬ、チャ都事。イヒョン宮への道筋には山がある。もし彼らが媽媽のお命を狙っているなら、そこで襲撃しかけるかもしれん。」
「ナウリ、私兵を使う必要があります。重臣達の私兵を集められるよう手伝ってください。」
「老論重臣の私兵を?」
「はい。今ごろには、内禁衛将に知らせが届いているはずです。内禁衛軍が到着するまで、我々が淑嬪媽媽をお守りしなくてはならないんです、ナウリ。」
ヨンギは、兵士達に指示を。
「1班と2班、行動の準備をせよ!すぐに出発だ。」
そしてハンに手紙を渡します。
「殿下が戻られたら、これを渡してくれ。」
そこにスクチョンが、「内禁衛将!ちょっと待て!」と。
その手に握り閉められた手紙…。
イングクは、男に言います。
「これを老論派重臣に届けよ。できるだけ多くの私兵が必要だと伝えるのだ。」
チョン尚宮は、トンイに言います。
「監察府が、媽媽を警護いたします。そして、義禁府都事ナウリができるだけ多くの私兵を集めて媽媽をお守りします。」
「私兵か?」
「はい、その通りです。これが今できる最良の方法なのです。」とチョンイム。
トンイは、ムヨルの言葉を思い出します。
「悪いのは私ではなく媽媽なのです。媽媽は、殿下を唆して何か驚くようなことをなさいませんでしたか?ですが、媽媽の思い通りにはさせません。」
「そうだとしても、あのような冷静な男が、そんな無謀なことをするはずはない。何なのだ?あの男は一体何をしようとしているのだ?」
ムヨルは、少論派首長に言います。
「うまくいきました。全て予定通りに進んでいます。」
「本当に上手くいっているのか?もし誰かに、お前が淑嬪とヨニングンの命を狙っていることを知られたら…。」
「大監、私が淑嬪とヨニングンの命を狙うとはどういうことですか?私は一度もそのようなことは申しておりません、大監。」
「一体何を言っているのだ?そうでなかったら、これは一体どういう計画なのだ?彼らの命を狙っているのではないのか?」
「もちろん、私は淑嬪とヨニングンを始末するためにこの機会を利用するつもりです。彼らを支援する者達もすべて…。ですが、私は一度も自分でそれをすると言ったつもりはありません。私はそれほど無謀ではありませんから。」
「それじゃ、一体誰がやるのだ?」
「殿下ご自身です。淑嬪とヨニングンを始末するのは、殿下ご自身なのです。」
言葉を失う首長。
ヨンギは、スクチョンの手にしていた手紙を読みます。
「殿下、これは…。」
怒りを抑えきれない表情のスクチョン。
服を着替えたトンイは、「準備は全て終わったのか?」とポン尚宮に。そして、
「出発の前に、世子殿下にお会いしたい。東宮殿に知らせてくれ。」と。
一人空を見上げるクム。
世子はその姿を見つめます。
「殿下、出発のお時間です。耆老宴(기로연:キロヨン)がまもなく始まります。」と尚宮。
チョンイムの報告を聞いたトンイは、「出宮の時間を遅らせるだと?」
「はい。籠の運び手の一人が倒れたとか、それで代わりを捜さねばならないのです。」
「籠の運び手が倒れた?」
「はい、そう聞きましたですからしばらくお待ちいただかねばなりません。」
「そうか、わかった。」とトンイ。
山道で、男達に指示をするチョンス。
「イヒョン宮へ向かうこの二か所を見張らねばならぬ。ここは木が茂っているから、ここから襲撃するかも知れぬ。わかったか?今頃は籠が出発しているはずだから、彼らはまもなくここにやってくる。1班は、そっちを守れ。2班は私と一緒にこちらを守る。皆気を抜いてはいかん。わかったか?」
トンイは東宮殿へ。
「世子殿下はいらっしゃるか。会いに来たのだ。お伝えしてくれ。」
「申し訳ありません。殿下はこちらにはいらっしゃいません。」
「そうか。それでは便殿にいらっしゃるのか?」
「いいえ違います。殿下は、お出かけになられたのです。」
「外出だと?どちらに行かれたのだ?」
籠に乗って出発する世子。
「耆老宴(기로연:キロヨン)だと?」とトンイ。
「はい。今日は耆老宴(기로연:キロヨン)があり、殿下の代わりにそれに出席なさるのです。」
「殿下にお別れを言いたかったが、少し遅かったようだ。」
そう言って、帰ろうとうするトンイに、ポン尚宮が言います。
「イヒョン宮に行く途中にお会いできますから、心配いりません、媽媽。世子殿下は、耆老宴(기로연:キロヨン)に行かれたのでしょう?연하방(ヨナバン?)なら、インヒョン宮の途中ですから、お会いになれますよ。」
「耆老宴は、연하방で開かれているのか?」
「はい、いつもそこで開かれていますから。」
「待て…。연하방は…。それは私が向かうイヒョン宮と同じ道筋ではないか…。ひょっとして…、まさか…。」
と不安げに走り出すトンイ。
ムヨルはミン軍官に言います。
「世子殿下は、絶対に傷つけてはならぬ。わかったか?」
「手抜かりはありません。どうかご心配なく、ヨンガン。」
少論派首長はムヨルに訊ねます。
「殿下ご自身が、淑嬪とヨニングンの命を奪うとは、一体どういうことだ?」
「淑嬪が、世子殿下に危害を加えようとしているからです。今日、淑嬪達は殿下の留守を利用して、世子殿下の命を奪うつもりなのです。これが理由です。だから私が軍を指揮し、淑嬪の出発を急がせたのです。彼らは彼女を守るためと私兵を集め、世子殿下を襲うつもりなのです。ですが、心配なさらないでください。世子殿下が危害を加えられることはありません。結局彼らは、世子の暗殺を企てたことで、自分達の命を失うことになるのです。」
森の中に集合するチョンス達。
「何も見つかりませんでした。」と男。
「わかった、行こう!」とチョンス。
ホヤンの嫁を捜すテプン夫婦。
…省略。
「ところであの子はどこだ?」
「淑嬪媽媽が宮中を出発するから、会いにでも行ったんでしょう!」とユン夫人。
世子の乗る籠の行列を見つめるホヤン。
「アイゴー…、淑嬪媽媽!おや、何だ?あれは淑嬪媽媽じゃないじゃないか。だが、淑嬪媽媽はいつやって来るんだ?」
トンイは、チョン尚宮に言います。
「罠です。これが彼の動機なんです!彼らの狙いは、私でもヨニングンでもないのです。世子殿下を襲い、それで私達を罠に陥れるつもりなのです。急いでこれを知らせなくては…。すぐに彼らを追うのです!」
すぐに出かけるチョン尚宮達。
不安げなトンイ。
「お願いです、オラボニ。何も行動を起こしてはなりません。」
森の中を進む世子一行を見つめるチョンス。
「しっかり見張れ!待て…。あれは…。私が調べて来る。お前達はここにいろ。」
チョンスは、一人で一向に近づき籠の中を確かめようとします。
そこに、「ナウリ!これは罠です。何もするなとの淑嬪媽媽からのご命令です。」と男が。
「どういうことだ?どうして私が動いてはならぬのだ?」
そのとき、世子の一行の周囲で爆音が。
倒れる兵士、そして「火薬だ!殿下を守れ!」と叫ぶ声。
遠くでそれを見ていたチョンスの私兵達は、
「襲撃だ!淑嬪媽媽が襲撃された。行くぞ!」と刀を抜き走り出して行きます。
世子の警備兵と戦う私兵達を見て愕然とするチョンス。
「いけない!止めろ!!!止めるんだ!これは罠だ!」
そこに現れる大勢の兵士。
「これなのか?チャン・ムヨル、これがお前の計画だったのか?」とチョンス。
イライラと知らせを待つトンイ。
チョン尚宮は、チョンイムに手紙を渡し、こう言います。
「急いでこれを媽媽に届けてくれ。」
ムヨルから報告を受けるインウォン。
「何だと?世子の一行が襲撃を受けただと?それで世子は?世子は大丈夫なのか?」
「はい。幸いお怪我は免れました。我々の不安が現実となったのです。そのようなことはあるまいと思っていたのですが、本当に淑嬪媽媽は世子殿下に危害を加えようとしたのです。」
「本当なのか?本当に淑嬪が関わっていたのか?」
「淑嬪媽媽の兄義禁府チャ都事が、その場で捕まりました。彼らは老論派の私兵を集め、世子殿下の一行を襲撃したのです、媽媽!」
連行されるチョンス。
ウンテクは、トンイに言います。
「兵曹参判の動機は、これだったのです、媽媽。武装させ、我々を罠に落としたのです。それを媽媽と我々のせいにしようとしているのです。」
ムヨルは言います。
「媽媽。彼らが逃げてしまわないうちに、すぐに捕まえなければなりません。」
「私がか?」ちインウォン。
「はい、媽媽。内旨標信(내지표신:ネジシッピン)です。それを使って、すぐ淑嬪媽媽、クム媽媽、そしてその支援者を逮捕する命令をお出しください。」
「内旨標信?」
「はい。世子殿下がいらっしゃらない今、チュンジョン媽媽の内旨標信は御命と同じ権限があるのです。時間がありません、媽媽。彼らが逃げる前に、世子殿下に危害を加えようとした罪人を逮捕しなくてはいけないのです。」
何も答えないインウォン。
ウンテクは言います。
「媽媽!すぐに避難してください。殿下がお戻りになってこの調査を始めるまでは…。急いでください!」
「いいえ。私はそんなことをするつもりはありません。」
「媽媽!罠に陥れられるんですよ!急いでください。」とポン尚宮。
インウォンは言います。
「わかった。そうしよう。兵曹参判の申し出どおり内旨標信を使い、関わった罪人をすべて捕えるのだ。」
「賢明なご判断です。」
「畏れ多くも世子に対して罪を犯し、王室を揺さぶったのだ。彼らはこの罪を問われなければならぬ。戻って、私の命令を待て、参判。すぐに教旨を用意する。」
外に出たムヨルは、ミン軍官に言います。
「よくやった。後のことは、チュンジョン媽媽が我々のためにやってくださる。いろいろと問題を起こしてきたが、これであの賎民の運も終りだろう。」
インウォンは、都承旨を呼ぶよう尚宮に命じます。
兵士に命令するムヨル。
「ヨニングンと淑嬪、そして彼らの支持者達全員を逮捕しろ。」
エジョンから話を聞くクム。
「何?世子殿下が、大変な目に遭われただと?それで、ヒョンニムはご無事だったのか?」
「はい、ご無事でした、媽媽。」
そのとき外に騒ぎ声が。
現れた兵士の前に立つエジョン。
「一体何事です?どうして兵士がここに?」
「何をしておる?クム媽媽の居処を包囲しろ!」
トンイは、兵士達の前に出て行きます。
そこにムヨル。
「以前私が何と申し上げましたか?媽媽。私を手放せば後悔すると申し上げたはずです。」
「そうです。本当に後悔しています。ヨンガンの手をしっかりと掴んでおくべきでした。そうすれば、今日このようなことは起きなかったのです。」
「ですが、もう後悔するには遅すぎます、媽媽。何をしておる?早く淑嬪媽媽を捕えぬか!」
「はい。淑嬪媽媽を捕らえよ!」
しかし、動かぬ兵士。
「何をしているんだ?ヨンガンの命令が聞こえなかったのか?」とミン軍官。
トンイが言います。
「彼らはあなたの命令には従いません、ヨンガン。彼らは、私の命令でここに来ているのです。ヨンガンを捕えるために…。」
「何ですと?」とムヨル。
「何をしているのだ?直ちにこの罪人を捕えぬか!」とポン尚宮。
兵士達は、ムヨルとミン軍官を取り囲みます。
兵士の話に驚くエジョン。
「えっ?それでは、媽媽を捕えに来たのではなく、居処を守りに来たのですか?」
「はい、その通りです。」
抵抗するムヨル。
「放せ!私を捕えるとは何事だ?何をしているのかわかっているのか?お前達が捕えなくてはいけないのは、私ではなく淑嬪だ!チュンジョン媽媽が内旨標信を発し、淑嬪を捕えるよう命じられたのだ!」
「内旨標信だと?あぁ、これのことを言っているのですか?ヨンガン。」とトンイ。
そこに都承旨がやって来ます。
箱から内旨と書かれた木札を取り出すトンイ。
「その通りです、ヨンガン。チュンジョン媽媽は、ヨンガンの提案通り、今日内旨標信を発せられたのです。世子殿下に危害を加えた罪人を捕えるためにです。そしてその罪人というのは、兵曹参判チャン・ムヨル、あなたのことです。」
第59話に続く!
55話と56話をmysojuの英語字幕付きで視聴、
今朝字幕なしで57話を視聴しました。
留守の間に、いろいろなことが起こっていたのですね。
そして視聴率も劇的に低下…。
久々にskagnsの厳しいレビューも見つけました。
さて57話…、びっくりするような展開になってきました。
スクチョンは、何日も考えた挙句驚くような決意を固めます。
世子、クム、そしてトンイを救うためとは言え、
禪位を決め、トンイと宮中を出る!?!
韓国版wikipediaでは、1716年に床に伏したスクチョンの代わりに世子が政治を行い、
1720年、スクチョン崩御で世子が王位を継承したとあります。
そして、1721年仁元王后の息子となったクムを王世弟としたと…。
さらに仁元王后は、クムをとても可愛がり、英祖は自分の母以上に慕っていたとも。
まぁ史実はともかく、残り3話でどうまとまめるのでしょうか。
気になりますね。
ただどうにも仁元王后役の女優さんは…。
ケバジョンスクチョンもずっと固い表情のまま…。
最後は二人の笑顔で追われるのか…。
トンイを敵対視する仁元王后がいる限り、それは難しいように思えますが。
今夜も楽しみですね。
これ以上視聴率が下がりませんように。
57話の復習はこちらで!
レモン色の雲:第57回あらすじ
チャイミのベッドストーリー:第57部-世紀のロマンチスト粛宗、彼の選択が重要な理由
skagnsの第3の視野:同伊視聴率下落の主犯は同伊
※ 第54話から56話までの記事は、あらすじと一緒にアップします。
「私は、お前に重要な質問がある、トンイ。君主としてではなく一人の父として、あの子の母であるお前に…。お前の本当の望みは何だ?トンイ。ヨニングンが王位に上がることではないのか?それだけが、あの子が宮中を生き延びる方法なのだ。」
「殿下の次にこの国の王位を継ぐことができるのは、世子殿下だけです。何があろうと、そうならなければなりません。ですが、ヨニングンを救う道がそれだけなら、ヨニングンもまた王にならねばなりません。はい、そのとおりです、殿下。これが、あの子の母としての私の願いです。」
「世子とヨニングンの二人を王位に上がらせることが、二人とも生き続けることになる。よかろう、お前らしい考えだ。先に踏まねば踏まれるこの宮で・・・それが本心か?お前には・・・お前だけが描けるそんな夢・・・と言っているのだ。」
執務室に戻ったスクチョンは、ハン尚膳に「しばらく一人になりたい。」と。
スクチョンの言葉を思い出すトンイ。
スクチョンは、トンイの言葉を思い出します。そして、
「だが、それはあり得ないのだ、トンイ。我が国の王位に上がることのできる王子が、同時に二人ということはあり得ないのだ。」
クムは、ヘインと共に中宮殿にやって来ます。
「チュンジョン媽媽にご挨拶に参った。」とクム。
尚宮は、二人を中に案内します。
外でため息をつくポン尚宮。
「毎朝本当に緊張するんです。こんなことなら、宮中の外に出た方がよかったですよ。」とエジョン。
「その通りね。私も毎朝どれほど恐ろしか…。あの女狐、媽媽をいじめたりしないかしら?」
クムは、インウォンに挨拶を。
「私、ヨニングン、チュンジョン媽媽にご挨拶をいたします。よくお休みになれましたか?」
「よくお休みになられましたか?チュンジョン媽媽。」とヘイン。
ムヨルは、インウォンのところへ。
「申し訳ございません、チュンジョン媽媽。ヨニングンを宮中から追い出すために、もっとうまくやるべきでございました。ですが、淑嬪がこのような巧妙な策を持ち出してくるとは思いもしませんでした。」
「巧妙な策?そういうことだ。王気の流れる家とは…。それで民衆の心情を利用したのだ。」
「ですが、ご心配いりません。淑嬪が世子殿下の地位を狙うとしても…。」
「それなのだ、参判。参判は気付かなかったか?淑嬪の行動が少し妙だと…。」
「奇妙ですと?それはどういうことでございますか?媽媽。」
「淑嬪は、間違いなく権力のある一族との婚姻するものと思っていた。だが、進士を選ぶとは…。それが理解できぬのだ。」
「媽媽、それはソ・ジョンジェの家を利用しようと…。」
「いいえ。それを利用するつもりだったのなら、ヨニングンを私家に移したはずだ。そうすれば民衆は、ヨニングンを未来の王として考えただろう。それではないか?だから、わからぬのだ。淑嬪のような賢い女は、それがわかっていたはずだ。もし本当に世子の地位を狙っていたのなら、どうしてこの機会を逃したのか…。」
「媽媽!それ故に、淑嬪は悪賢いと考えられるのです。予測することは不可能なのです。」
兵士の訓練を見つめるヨンギ。
そこにファンとハンが駆け込んで来ます。
「ヨンガン!命令を下されました。殿下が内禁衛の視察を中止するそうです。これです。」
「1ヶ月も準備をしてきたのに、一体何事なのですか?」とハン。
「何、便殿…を延期するだと?」とイングク。
「それだけではありません。内禁衛の恒例の視察や他の行事も中止になさったのです。」
「どうしてだ?お加減でもお悪いのか?」
「シム…が、内医院に問い合わせております。」
チョンスは、ウンテクのところに。
「都事、聞いたか?殿下が突然全ての約束を取り消されたのだ。お加減が悪いのか…、このようなときに殿下がお倒れにでもなられたら、本当に…。」
「ナウリ、殿下はお加減が悪いのではありません。殿下が全ての約束事を取りやめられたのには、他の理由があるに違いありません。」
「一体どういうことなのだ?」
トンイの話に驚くウンテクとヨンギ。
「それでは、媽媽はそれを殿下にお話なさったのですか?」
「はい、私が言いました。」
「ですが、媽媽!それは危険なことです。殿下は、媽媽のご性格をご存じかもしれませんが、誤解なさったかもしれません。」
「わかっています。私の言葉がどう聞こえたかはわかっているのです。ですが、私の意とすることが危険であるからと、殿下に嘘は申し上げられませんでした。」
ウンテクは、ヨンギに言います。
「ヨンガン、どう思われますか?これは、世子殿下に対する反逆と受け止められたかもわかりませんぞ。」
「いや、殿下は淑嬪媽媽のご性格を、他の誰より良くご存じだ。そのように考えるはずがない。それに、殿下は誰よりも、クム媽媽が生き残るためには寶位に上がらねばならぬことをご存じなのだ。」
「それでは、今殿下が考え込んでいらっしゃるのは、一体どういうことなのしょう。」
「決断だ。王としての決断を下さねばならぬのだ。」
チョンスは、トンイの話を聞きます。
「それを夢とおっしゃったのですか?」
「はい。殿下はそうおっしゃいました。それは私だけがたどり着くことのできる夢だとおっしゃったのです。それが何を意味すると思われますか?オラボニ。私は長いこと殿下を存じていますが、殿下の意とすることが想像できないのです。世子殿下とヨニングンの両方を守ることが、どれほど愚かなことかはわかっています。それを実現することがどれほど難しいことかわかっているのです。でも、私は絶対に諦めません。だからこそ、怖いのです。殿下が何を考え、どんな決断をくだされるのかが怖いのです。」
少論派首長は、ムヨルに言います。
「予定を全て中止なさったのか?そんなことは今まで一度もなかったことだ。なぜこのようなことをなさったのだ?」
「おそらく、世子殿下とクム媽媽のためではありませんか?殿下は、今までずっと静かに全てを見守ってこられました。息詰まるほど風のない日の後には、いつも嵐がやって来るものです。」
「それはつまり…。」
「はい。間違いなく殿下は、あるご決断をなさろうとしているのです。」
都承旨は、ハン尚膳に訊ねます。
「今日もどなたにも会われぬのか?」
「はい、ヨンガン。殿下は誰も中に入れぬようお命じになりました。」
「一体殿下は何をなさろうとしているのだ?」
決意を固めるスクチョン。
ムヨルは、ミン軍官に言います。
「宮中全体が緊張している。何が大きなことが起きるに違いない。大きな嵐がやって来るのだ。計画のほうはどうなっている?」
「すべて準備が整っております。」
「急がねばならぬ。あらゆる準備が必要だ。」
夜道を歩くチョンスのあとをつける男達。
ポン尚宮の話を聞くトンイ。
「殿下が、ご決断をなさったと?」
「はい、その通りです、媽媽。たった今大殿をお出になりました。ですが、媽媽。少し妙なのです。それが、殿下が最初に向かわれたのは、中宮殿なのです。」
「そうか…、中宮殿に向かわれたのか?」
スクチョンは、インウォンに言います。
「私はチュンジョンに重要な話がある。」
イングムは、ユ尚宮に言います。
「殿下が真っ先に中宮殿に行かれるなんて、おかしいと思いませんか?ママニム!」
「それがそんなにおかしいって、どうしてなの?」とシビ。
「馬鹿ね!こんな時にそこへ行くからじゃないの。あれほど長くお考えになられた後に、どうして寶慶堂でなく中宮殿に行かれたの?そうじゃありませんか?ママニム。」
「そうだ。私もふに落ちない。普通なら、まず淑嬪媽媽とお話しなさるはずだ。」とユ尚宮。
中宮殿を出たスクチョンに、
「殿下。今度は寶慶堂に行かれますか?」とハン尚膳。
「いや、寶慶堂には行かぬ。行くぞ。やらねばならぬことがいろいろあるのだ。」
スクチョンの話に驚きを隠せないインウォン。
「どうして突然このようなご決断をなさったのだ?ひょっとして、殿下は淑嬪を…。」
便殿に集まる重臣達。
イングクは、ウンテクに言います。
「どうして我々を招集したのだ?どのようなご決心をなされたのだ?」
スクチョンは、現れた世子に、「よく来た。中に入ろう!」と。
「私もでございますか?」と驚く世子に、「そうだ!」とスクチョン。
インウォンは、「寶慶堂へ行くぞ。」と。
スクチョンは、重臣達に言います。
「お前達と世子をここに呼んだ理由は、私がたどり着いた結論を知らせるためだ。それ故、世子は私の言葉を胸に刻むのだ。」
「はい、殿下。」と世子。
インウォンは、「中に入ろう。殿下からの伝言がある。」と寶慶堂の中に。
「媽媽!今何と言われたのですか?殿下からの伝言が…?」と驚くトンイ。
スクチョンは、話を続けます。
「ヨニングンが宮中に入って以来、どのような噂が広まっていたかはわかっておる。さらに、その噂のために、お前達重臣達の間に争いがあったこともわかっていた。だがこれより、私の後継者について、どんな風評も議論も許すつもりはない。我が国における国本で私の王位を継ぐのは、世子なのだ。わかったか?それが私の真意だ。私は、世子に関してのどのような政治的争いも許すつもりはない。それゆえ、世子が国家を支配することに関しての経験が不足しているが、以後、全ての会議に世子を同席させる。…と…に関して決める際には、世子の意見を先に聞くこととする。世子は私に提言をする立場となるのだ。」
「ですが、殿下。それはあまりにも早過ぎるのでは…。」とイングク。
「まだ話は終わっていないぞ、…!それともう一つ、皆にはっきりさせておくべきことがある。それは、寶慶堂淑嬪に関することだ。」
インウォンの話に驚くトンイ。
「それは本当に殿下のご意志なのですか?」
「そうだ、その通りだ。それで殿下は、私の意見を聞きに来られたのだ。私はそれを認めて差し上げた。だから、これからお前は私宮で暮らすことになるのだ。」
スクチョンの話を聞いたウンテクは、
「恐れ入りますが、殿下。今淑嬪媽媽を宮中の外に送りだすとおっしゃったのですか?ですが、殿下。なぜでございますか?」
「淑嬪は、それがなぜかわかっているはずだ、シム…。そして、お前もその訳を知っていると考えている。これが今日、私がお前達全員に言いたかったことだ。淑嬪は今後、ここから離れたイヒョン宮(이현궁:梨峴宮)を住まいとする。…曹は、イヒョン宮の準備に取り掛からねばならぬ。それが済み次第、…曹は、淑嬪の出立の準備をするのだ。」
トンイのところに駆け込んで来たポン尚宮。
「媽媽!この突然の知らせはどういうことですか?どうして出て行かなければならないのですか?媽媽が、どうして…?」
「何が誤解があるに違いありません。殿下がそんなことをなさるはずがないんです。」とエジョン。
「エジョン、行ってどうなっているのか調べて来るのだ!」とポン尚宮。そして、
「媽媽!絶対に何かの間違いです。中宮殿が嘘を言ったに違いありません。嘘に決まってます!」
便殿を出た少論派首長。
「殿下は、世子殿下を守るご決断をくだされた。淑嬪を追い出し、世子殿下を立てることをお決めになったのだ。」
安堵の笑みをもらす少論派の面々。
一人、ふに落ちない表情のムヨル。
イングクは言います。
「一体、どういうことだ?何が…。」
ジュシクとヨンダル。
「一体どういうことだ?媽媽がどこへ行くって?」
「イヒョン宮ですよ!私達の媽媽を宮中から追い出すんです。」
「だ、誰が…。どこの馬鹿が媽媽を追い出そうとしているんだ?あっ、チュンジョン媽媽だ。そうなんだろう?」
「違いますよ。殿下です、ナウリ。殿下なんですよ!」
「殿下が?でもなぜだ?」
「頭がおかしくなったんですよ。きっとおかしくなってしまったんですよ。」
監察府にやって来たウンテクに詰め寄るチョン尚宮。
「淑嬪媽媽をイヒョン宮に送る準備をせよという命令です。一体どうなっているんですか?」
「もう監察府に届いているとは、殿下は本当に決定されたに違いない。」
「それでは、これは本当に殿下のご意志なんですか?」とチョンイム。
「あぁ、そうだ。」
世子は、スクチョンに言います。
「アバ媽媽!どうしてあのようなご決断をなさったのですか?ひょっとして、宮中の恐ろしい噂のせいですか?」
「そうだ、その通りだ。」
「ですが、アバ媽媽。それは淑嬪媽媽の意志ではありません。それは私が知っています。一時、私は淑嬪にもヨニングンにも腹を立てていました。ですが、それは私の不安が招いたことです。私は不安から、自分に向けるべき怒りを淑嬪媽媽とヨニングンに向けていたのです。ですが、淑嬪媽媽は、ヨニングンを殺そうとした私の母のことさえ許してくださいました。そして、敵の息子である私のことまで気にかけてくださったのです。宮中の誰よりも私のことを守り愛して下さったのは、淑嬪媽媽なのです。ですから、どうか命令を取り下げてください、アバ媽媽!私のせいで、淑嬪媽媽を追い出さないでください。」
「お前がそう感じてくれたことに、礼を言うぞ、世子。それを聞いて安心した。だが、お前の気持ちがわかった今、この決定が覆ることはない。わかるか?この命令は、取り消されることはないのだ。」
チョン尚宮とチョンイムは、トンイに言います。
「この命令を受けることはできません、媽媽。」
「その通りです。私達は、納得できない命令を実行することはできません。監察府は、このことに抗議します。」
「いいえ、そんなことはしてはならぬ。お願いだ。これが大ごとにならぬよう私を助けてくれ。」
「理由はなんですか?媽媽。どうして媽媽がこのような目に…?」
「理由がおありなのだ。だから、命令に従ってくれ。それがお前達の仕事だ!」
工事の進むイヒョン宮にやって来るテプン一家。
「あら、ヨンガン。ホヤンの言っていることは本当だったようですよ。」
「まったく…。どうして自分の息子がそんなに信用できないんですか?殿下は、本当に淑嬪媽媽を追い出すことにしたんです!」とホヤン。
「いやいや、お前を信用してないわけじゃないんだ。だが、あれほど彼女を寵愛していらしたのに、なぜなんだ?」
「だから腹を立ててるんじゃありませんか。殿下は我々が一緒になる寸前に、媽媽を奪ったんです。それなのに今度は、古い靴みたいに捨てるなんて…。君主だからって、そんなことをしてもいいんですか?」
「気でも狂ったのか?死にたいのか?」とテプンとパク夫人。
「オモニ、アボジ!私を止めないでください。今度こそ私は彼女を家に連れて帰り、幸せにしてあげるんです。」
と駆け出して行くホヤン。
「おい、あいつが本当に馬鹿なことをしでかす前に、結婚させたほうがいい。」
「ですが、誰とも結婚したがらないんですから、ヨンガン!」
「縄を付けてでもさせるのだ!あの狂った目を見なかったのか?我々全員命がなくなるぞ。」
ヨンギは、ウンテクに様子を訊ねます。
「…と…参判様が、不服の申し立てをしようとしましたが、差し戻されました。ですが、そんなことは問題ではありません、ヨンガン。淑嬪媽媽のお傍にいる者全員が解雇されるという噂が流れています。殿下は、間違いなく淑嬪媽媽を誤解なさっているのです。それで罰を与えようとなさっているのです。」
「いや、そうではない。そのようなことを望んでおられるはずはないのだ。」
「ヨンガン!こんな状況に直面しているのに、どうしてそんなことが言えるのですか?」
スクチョンは、都承旨に言います。
「ここに書かれたとおりやってくれ。」
「殿下。本当にそれが殿下のご意志なのですか?」
「そうだ。」
「殿下、恐れ入りますが、突然これをお決めになられた訳をお聞かせいただけますか?」
「今は、私の命令に従えばいいのだ、都承旨。だが、すべて内密に行わねばならぬ。わかったか?」
「はい。」と下がる都承旨。
「淑嬪の反応はどうだ?」とハン尚膳に訊ねるスクチョン。
「命令に反対する監察府を止め、それを実行するようお命じになりました。そして、ずっと居処をお出にならなかったそうです。」
チョンスは、トンイに言います。
「どうして殿下をお訪ねにならなかったのですか?どうしてこの命令が下されたのか、媽媽は訳を知るべきではないのですか?」
「殿下は、私に待つようにと言われたのです、オラボニ。わかりませんか?チュンジョン媽媽に伝言を与えたということは、私に待てというご命令なのです。今私のすべきことは、殿下の望むようにこの命令を受け入れることなのです。」
気持ちの収まらないチョンス。
彼を見つめるムヨルは、ミン軍官に言います。
「明らかにこれは、彼らにとっても予想外のことだったのだ。」
「殿下が彼らに背を向けるとは思ってもいませんでした。彼がご寵愛になっていたのは、淑嬪ではありませんか。」
「そうだ。だから妙なのだ。誰にも殿下の動機がわからぬとは、そこに何か隠されているに違いない。」
チョンスは、スクチョンに会いに行きます。
「どうかもう一度お願いしてくれ。殿下とお話しせねばならぬのだ。」
「申し訳ありませんが、誰も中にいれるなとのご命令なのです。」
「殿下はどこにおられるのだ?」
チョンスは、宮殿に向かって叫びます。
「殿下!私は、都事チャ・チョンスでございます。殿下にお話しすることがあるのです。」
「ナウリ!こんなことをなさると、兵を呼ばねばならなくなります。」
内官は、兵士を呼びます。
そこにスクチョンが。
宮殿を出ようとするトンイを止めるポン尚宮。
「いけません、行ってはいけません!媽媽はどうしてそんなに欲がないんですか?どうして今東宮殿に行ったりなさるんです?わけもなく追い出されるんですよ。それなのに、どうして媽媽は世子殿下の心配などなさるんですか?」
「下がっておれ、ポン尚宮。お前は本当に私の意志を曲げられると思っているのか?」
こうしてトンイは、いつものように東宮殿に。
そこにインウォンが。
「お前がここで何をしているのだ?それは何だ?」
「世子殿下へのお粥でございます、媽媽。」
「何?」とエジョンの持つ食事を検めるインウォン。
「お前がなぜこんなことをするのだ?これは一体どういうことだ!淑嬪が世子殿下に食事をだすことどうして許されるのだ!世子の食事がどれほど大切なものか、わからぬのか?これは、世子の健康を危うくするものだ。恐れ多くも世子の食事に手をだすとは…。直ちにこれを持ち帰るのだ!」
そこに世子が出て来ます。
「お願いですから、そのようなことはなさらないでください、チュンジョン媽媽。申し訳ありませんが、淑嬪媽媽にそのような言い方はなさらないでください。淑嬪媽媽は、他の誰よりも私が信頼している方なのです、チュンジョン媽媽。」
「何だと?」
「ですから、チュンジョン媽媽もどうか嬪媽媽の誠意をわかってください。」
宮殿に戻って来たトンイを笑顔で迎えるスクチョン。
「一緒に散歩をしてからずいぶんになる。」
「どうなったのだ?」とミン軍官に訊ねるムヨル。
「ヨンガンの推測が正しかったようです。明らかに都承旨は、御命を受け取っています。ですが、それがどのような御命なのかは誰も知りません。」
「調べ出せ、何があろうと…。どんな御命で、それが誰のところへ行ったのか調べるのだ。」
トンイをイヒョン宮に連れて行くスクチョン。
「ここだ。これがお前が宮中を出た後、暮らすところだ。どうだ?気に入ったか?」
「はい。ですが、私一人で暮らすには少し大き過ぎるようです。」
「何やらどうでもいいような言い方だな。この私宮に追われるとわかっても、それでも何事もなかったかのような受け答えをしておる。どうして私に訊ねないのだ?トンイ。どうしてそんなに待っていられるのだ?」
「怖いからです。殿下が私におっしゃることを恐れているのです。何をおっしゃられるにしても、殿下のお心が決まるまで私は待つつもりです。ですが、こうして私宮で殿下とお会いし殿下の目を見て、殿下が私にお話になろうとしていることが、私の想像をはるかに超え、とても恐ろしくて口に出せないことであると感じています。ですが、それが何なのかはわかりません。だからよけい怖いのです、殿下。」
「覚えているか?ずいぶん前、私はお前の居処へ会いに行った。そのとき私はお前に言った。一緒に逃げないかと…。そうだ、それは私の本心だった。お前と一緒にいられるのなら、平民のように暮らしても構わない。もしそれができるのなら、喜んで全てを諦められると思ったのだ。私の考えは、あれから何年にもなるが、今でも変わってはおらぬ。私にとって、お前は感謝と慈しみを感じる人間なのだ。お前はここで暮らす。だが、それはお前一人だけではないのだ、トンイ。私も、一緒にここで暮らすのだ。」
「殿下!それは一体どういうことでございますか?殿下もここでお暮らしになると?」
驚くトンイ。
チョンスの話に驚愕するヨンギ。
「都事!今何と言ったのだ?殿下が何をなさるだと?…都事!」
トンイはスクチョンに言います。
「殿下、話して下さい。今殿下のおっしゃったことは、一体どういうことですか?」
「お前が私に言ったのだ。世子とヨニングンと二人とも王位に上がらせるようにと…。それだけが、皆が生き残れる方法なのだと。それは、お前の初めて見せた欲だったのだ。そして私も密かに夢見ていたことだったのだ。ヨニングンは、もちろん偉大な王になるだろう。だからあの子が世子になれればどんなに素晴らしいか…。私はずっとそう思っていたのだ。だが、君主になる国本は、一度に一人しか存在できない。これだけが、その人間が王室の権威を保ち、朝廷を支配する方法なのだ。わかるか?私が王でいる限り、世子もヨニングンも王位を継ぐことはできないのだ。」
「殿下!そのようなことをおっしゃってはいけません。」
「そうだ。だから私は世子に王位を渡し、禪位(선위:ソニ)するつもりだ。私が王位を退けば、世子が君主になる。同時に、ヨニングンは世弟になるのだ。最後には、ヨニングンは王になることができるのだ。」
「ですが、殿下!禪位(선위:ソニ)とは…。どうしてそのようなことを…?殿下!」
椅子に座り込むヨンギ。
「禪位だと?それは一体…。」
「ですが、これは間違いなく殿下の決められたことなのです。そして既にすべてを準備なさっているのです。」
<回想シーン>
「お前と内禁衛将、そしてシム・ウンテクは、しばらく低い地位に下がってもらわねばならぬ。だが、これは他の者達を欺くためのことだ。全ての準備が終わるまで、誰にも知られてはならんのだ。」
「殿下!その命令にを受け入れるわけには参りません。禪位などと…。それはいけません!」
「そうだ。教旨が発表になれば誰もがそう言うだろう。それは既に考えたことだ。これは、国家と朝廷を守るために決めたことなのだ。自分の子を守りたい父親として、妻を守りたい夫として、私は自分の意志を変えるつもりはない。」
内禁衛の訓練を疲れた表情で見守るスクチョン。
会場を出ようとしたスクチョンは、足元がふらつき倒れ込みます。
慌てて駆け寄り、医官を呼ぶように叫ぶ側近達。
「大丈夫だ。突然火熱が出たようだ。よくあることだ。少し休めば大丈夫だ。」とスクチョン。
「ですが、殿下。御医の診察をあおがれるべきです。」とヨンギ。
そこに一人の内官がやって来ると、スクチョンに耳打ちします。
「秦請使が立った今到着されました。」
「そうか?内密に大殿に通すのだ。」
秦請使は言います。
「清国の使者がOnyangに到着しました、殿下。」
「思っていたよりことが早く進んでいるようだ。直ちに御医を呼べ。そして、明日心火症を治すためにOnyangに行くと知らせよ。」
ヨンギに耳打ちするウンテク。
二人はすぐにどこかに出て行きます。
それを見つめるミン軍官に、何かを知らせる兵士。
「何か起きていると言うのか?」
ムヨルは、小論派首長に言います。
「大監、殿下が城を出られたことをご存じですか?」
「殿下が心火症にかかられたことを見たではないか。それでその治療に行かれたのだ。」
「どうやら、治療のためにそこに行かれたのではないようです。何か特別な理由があるのです。」
「そうだ。治療でないとすれば、何か他の理由があるはずだ。お前も知っているだろう。殿下が何か大きな決断をなさるときには、私宮に行かれることを。」
「淑嬪の側近をすべて朝廷から追い出す計画なのです。」
「そうだ。承旨は、既に彼らの解雇の命令を受け取っている。」
首長は言います。
「殿下は、ご決断なされたのだ、参判。淑嬪とヨニングンの周囲の者をすべて排除するおつもりなのだ。」
ふに落ちないまま外に出たムヨルは、ミン軍官に言います。
「大殿からの命令はすべてが秘密のままだ。そしてたったひとつ明かされたのが、彼らの解雇とは…。昨夜のあの御令はどこに保管されている?」
「GongWenYuan、ShiYuan。そしてイエジョと春秋館です。ですが、どのような命令なのか知るすべはありません。」
「春秋館?そこへ行くのだ。その4つの部署の中で一番警備が手薄なのが春秋館だ。そこから盗み出し、内容を手に入れるのだ。」
「ですが、ヨンガン。もし見つかったら…。」
「ことは既に悪い方に向かっている。殿下が何を考えているのかを知らねばならぬ。」
トンイは、スクチョンに会いに来ます。
「申し訳ありませんが、殿下はもう出発なさいました。」
「何?だが、巳の刻に出るはずだったのでは…。」
「ですが、辰の刻に出発なさったのです。」
「そして、これは媽媽へと残していかれたものです。」
とトンイに手紙を渡す内官。
トンイは、その手紙を読みます。
「これは長い旅になるはずだ。私が戻る頃には、お前は城を出ているだろう。だが、私が言ったことを忘れないでくれ。お前を一人でそこに行かせはしない。お前は前に私に言っただろう、トンイ。お前は チュンジョンの地位を諦めると。世子とヨニングン、そして私を守るために…。だから、今度は私の番だ。…、私は残りの人生をお前と共に生きて行くつもりだ。私を信じ、耐えてくれ。私は誰も傷つけさせたりはしない。お前が叶えたかった夢、私がそれを実現させる。」
Onyangで清の使者と向かい合うスクチョン。
一方、ムヨルの命を受けたミン軍官は、部下と共に春秋館へ。
スクチョンの話を聞いた清の使者は、「禪位とおっしゃったのですか?殿下。」と。
「その通りだ。だから、清の皇帝の承認を得ることを決め、こうしてお前に会いに来たのだ。」
記録を盗み出し、ムヨルに渡すミン軍官。
「これです。殿下の御命は、この書物を準備させるものだったのです。」
「これは、太祖と太宗の史記だ。それでは殿下は、これらの記録を書き変えるために御命を下されたのか?太祖と太宗…。どうして突然このようなものを…。待てよ…。と言うことは。そんな…。」
「ヨンガン、どうなさいました?」
「馬だ。馬を用意しろ。…大監に会わねばならぬ。」
ムヨルの話に驚く小論派首長。
「何?これは一体…。」
「これだったのです。殿下の決断は…。殿下の決断は禪位なのです、大監。」
「あり得ない。どうしてそのようなことが…?」
「いいえ。殿下のご意志は、世子殿下を王位に上げ、ヨニングンを世弟にすることだったのです。禪位のための基盤を作るために出発なさったのです。止めなければなりません。ヨニングンが王位に上がることを阻止せねばならないのです。」
言葉を失う首長。
ヨンギは、警備を徹底するようにと。
そのとき、夜空に流れ星を見るヨンギ。
ムヨルは言います。
「ヨニングンが世弟になり淑嬪が力を得たら、すべてがおしまいだ。そうなったら、彼女は最初に、私を始末するだろう。だが、私は死なぬ。これは私にとって危険なことだが、それは相手にとっても同じことなのだ。」
「ヨンガン、どうなさるおつもりですか?」
「殿下は今宮中にいない。そしてその健康もよろしくない。つまりチュンジョンが力を持っているということだ。そしてそのチュンジョンは私の手中にある。私はチュンジョンを利用して全員を倒してやる。淑嬪とヨニングンだけでなく、その周りにいる奴らもすべてだ。」
ウナクの話に驚くチェジェン。
「ですが、禪位とは…。師匠様、それはあってはならないことです。」
「なぜだ?お前もそうなったときの心の準備をしておかねばならぬ。太祖と太宗も禪位なされた。それをどうしてあってはならぬことだと申すのだ?」
「師匠様は、忠臣でありながらどうしてそのようなことを?」
「だいぶ前に忠臣としての自分の義務など忘れてしまった。私にとって気になるのは、現実?だけだ。それを考えると、殿下の今のご計画はとても賢いものだったのだ。たとえ禪位なさっても、殿下は背後にいらっしゃる。世子殿下がひとり立ちなさるまでは、殿下が国事を執り行うだろう。世子殿下が王位に上れば、クム媽媽が世弟になれる。わからぬのか?全ての者を守ろうという嬪媽媽の夢を、殿下が実現しようとしているのだ。」
ハンは、ヨンギに言います。
「流れ星をご覧になったのですか?」
「そうだ。流れ星は、悪いことが起きる前兆だとか。それを見た者は死ぬと人々は信じているそうだ。」
「ヨンガン!どうしてそのようなことをおっしゃるのですか?」
「ただ言ってみただけだ、案ずるな。ただ、禁軍を始めすべての兵が宮中を出ている。これが不安なのだ。宮中は最も危険な状態にあり、殿下もそこにはいらっしゃらない…。」
「宮中には、義禁府チャ都事がいらっしゃるではありませんか…。ご心配なさいませんように…。」
見回り中に、春秋館の警備兵がいないことに気付くチョンス。
そして彼は、足元に血を発見します。
ムヨルは、小論派重臣のところへ。
「間違いないのか?本当に、淑嬪が陰謀の準備をしているのか?」
「その通りです。」と手紙を重臣に差し出すムヨル。
「確証はありませんが、彼らの動きが普通でないことは確かです。」
「それでは、我々はどうすればよいのだ?」と重臣。
チョンスは兵士達に言います。
「何か怪しい動きがある。すぐに寶慶堂に兵を配置せよ。」
顔を見合わせ動かぬ兵士。
「何をしておる?なぜ動かぬのだ!」
「ナウリ。申し訳ありませんが、それをするのは無理です。我々は、都事ナウリからの命令には従わぬようにとの命令を今受け取りました。」
「それだけではありません。内禁衛の兵士は、禁軍?と交代するようにとのことでした。我々は、義禁府のチャン兵曹参判の命令にのみ従うようにとの命を受けております。」
「チャン・ムヨルヨンガンだと?どういうことだ?誰がそのような命令を出したのだ?」
そこに、「私だ。私がその命令を出したのだ、都事!」と少論派重臣。
「…大監!」
「何か問題があるか?」
チョンスは、ファンに様子を聞きます。
「兵曹も同じでした。彼らは、兵曹参判チャン・ムヨルにすべて従うよう命令されています。ナウリ、内禁衛軍事が宮中にいない今、ここに残っているのは兵曹と義禁府の兵士だけです。それが…。」
「そうだ。だが今彼らは全員チャン・ムヨルの命令に従っている。」
「そうなんです。すべての軍力がです。」
ムヨルは言います。
「これであとは、チュンジョンの動きを待つだけだ。」
ポン尚宮は、インウォンがやって来たことをトンイに告げます。
「媽媽が?このような時間にどうなさったというのだ?」
そこにインウォンが。
「淑嬪!私はお前に確かめたいことある。」
第58話に続く!
ヨニングンの結婚!?! 驚きましたね。
それにしても、トンイの気丈なこと…。
さらに、王気ですって…!!!
これらすべては、トンイが賎民の出身であることが引き起こした訳ですが、
彼女が賎民出でなければ、どうなるのでしょうか。
まぁ、それはそれとして(^^)
相変わらずクムのシーンはいいですね。
トンイは立派すぎて少々退屈でしたが、彼女の台詞には説得力がありました。
彼女の言う権力というものは、現代にも通ずるものがあると思います。
実際のところ、英祖の最初の妃となったのは、どういう素姓の娘だったのでしょうか。
これは後ほどゆっくりと調べてみようと思います。
56話の復習はこちらで!
レモン色の雲:第56回あらすじ
チャイミのベッドストーリー:第56部-スクビンが世の中に叫んだ一言の力
「チュンジョン媽媽、婚事とおっしゃったのですか?」
「そうだ、はっきりとそう言った。」
「ですが、媽媽。ヨニングンは、まだあまりにも幼過ぎます。」
「いや、十分に婚事できる年齢だ。そしてお前も知っているように、世子以外の王子は、婚事の後は私家に出ていかなければならない。」
「チュンジョン媽媽!恐れ入りますが、それはつまり…。」
「そうだ。私は、ヨニングンは婚事をし宮中出るのに十分な年齢だと言っているのだ。」
驚くトンイ。
スクチョンは、ハン尚膳からその話を聞きます。
「何?ヨニングンの婚事だと?」
「はい、殿下。チュンジョン媽媽が、ヨニングン殿下の婚事に関して殿下とお話しになるためにお見えになるとの知らせがありました。」
「ヨニングンの婚事とは…。だが、どうしてこんな突然に…。」
トンイは、インウォンに訊ねます。
「媽媽、宮中での噂のせいでこんなことをなさるのですか?ヨニングンが、世子殿下の地位を狙っているという噂のことです。」
「お前が自らそのことを言いだすとは思っていなかった。どうしてそのように気軽にそれを口にすることができるのだ?殿下のご寵愛を受けているからできるのか?そうだ、まさにそのせいだろう。単なる後宮が、君主の影響力を利用して、あたかもチュンジョンのように振舞い、世子を脅かしたりなどどうしてできるのだ?私がいる限り、決してそのようなことは許さぬ。」
「恐れ入りますが、媽媽。私に話をさせてください。宮中というところは、多くの根拠のない噂が作られ広まるところです。内命婦の首長である媽媽が、何が真実で何が真実でないかが見分けることができないとすれば、内命婦だけでなく朝廷や国家までもが不安定になることになります。どうか、それをお忘れなく。」
「何だと?恐れ多くもお前は私に説教をするのか?」
「はい、させていただきます。これが、内命婦の年長者としての私のチュンジョン媽媽への任務なのです。」
「淑嬪!」と声を荒げるインウォン。
外に出て来たトンイに、ムヨルが声をかけます。
「今どのようなご気分ですか?媽媽。後悔なさっているのですか?」
「ヨンガンの作った新しい巣は、中宮殿なのですか?ですが、用心してください、ヨンガン!弱い根を持つ木は、ほんの少しの風でも倒れるものです。」
「ええ、その通りかもしれません。ですが、風が私の方向に向かって吹くとは思えません。そうは思いませんか?」
スクチョンは、インウォンに言います。
「チュンジョン、お前の意とすることは理解できる。だが、ヨニングンはまだ幼いのだ。」
「いいえ、そうではありません、殿下。殿下もヨニングンの年齢でご結婚なさったではありませんか。殿下、王室の婚事は、内命婦首長であるチュンジョンの任務です。その私の任務をお止めになるのなら、私の立場は崩壊し、内命婦首長でいることができなくなります。これは、宮中の噂を全て消し去り、世子の立場を強固にするためなのです。どうか理解をお示しください、殿下。」
チョン尚宮の話に驚くユ尚宮。
「それでは、婚事が行われるのですか?ママニム。」
「これは名分にかなっているから、殿下もそれを止めることができないのだ。」
「でも、クム媽媽が宮中の外でお暮らしになれば、お命はまた危険にさらされるかもしれません。」
と言うチョンイムに、チョン尚宮は、「媽媽とお話しする必要がある。」と。
「私もご一緒します、ママニム。」とチョンイム。
「こんなことになると思ったわ。淑嬪媽媽に何かしようとしているのよ。」と言うイングムに
「気を付けるのだ。誰かに聞こえるかも知れぬぞ。」とユ尚宮。
「でも腹立たしいじゃありませんか。どうして自分がチュンジョンになったのかもわからないのかしら?淑嬪媽媽が、チュンジョンになることをお断りになったからなのに、感謝もしないで。」
「イングムの言う通りです。私も本当に腹が立ってます。」とシビ。
怒りの収まらないポン尚宮。
「私達は、やっと就善堂から手を引いたばかりなのに、また新たな女狐が現れて…。もう本当に腹立たしいわ。」
「ママニム、これからどうなるんですか?私達のクム媽媽は本当に追い出されるのですか?」
「わからないわよ!私に聞かないで!」
そこにウンテクが。
トンイの部屋に集まるヨンギ、チョンス、そしてチョン尚宮とチョンイム。
ウンテクは言います。
「媽媽、彼女はクム媽媽を追い出す考えなのです。どうしてこんなことができるのでしょうか。」
「この問題に関して、我々には彼女を止める名分がありません。」とヨンギ。
「媽媽!殿下とお話しになられたらいかがですか?」とチョン尚宮。
「いいえ、そんなことをするつもりはありません。殿下がヨニングンを守るために前に出ていらしたら、噂はさらに悪くなるだけです。」とトンイ。
「ですが、このままクム媽媽を私家に送り出すわけにはいきません!」とチョンイム。ウンテクも、
「その通りです、媽媽。就善堂が死んでまだ間がありません。クム媽媽に反対する少論派の重臣達は、遅かれ早かれクム媽媽のお命を欲しがるはずです。」
ムヨルは、少論派首長に報告します。
「幸い、チュンジョン媽媽は我々のために動いてくださっています。」
「そうか。お前がチュンジョン媽媽をうまく誘導してくれた。」
「私は自分の任務を行っているだけです。」
「南派と少論派は、これからは共に動いていかねばならぬ。世子殿下はお弱いかもしれぬが、彼の立場を満たす者が他に多くいるのだ。我々が王を選ぶのではないか?」
「はい。ですが、我々は決して賎民の出の王を選ぶわけにはいきません。必要なら、剣を抜かねばならないのです。」と言うムヨルに、
「これほど簡単にお互いを理解できるとは気にいったぞ。」と首長。
帰り道、襲撃されるムヨル達。
ヨンギは、ウンテクに言います。
「老論派の重臣達に会って、支援を得るよう試みるのだ。ぼやぼやしている時間はない。」
ぼんやりと立ちつくすチョンス。
「おい、チャ都事。一体何をそんなに考え込んでいるのだ?」
「ヨンガン!淑嬪媽媽は、皆のためにチュンジョンの地位を退けたのです。それなのに、彼らはどうしてこんなことができるのですか?」
「クム媽媽の存在が、彼らを脅かすからだ。宮中では、相手を殺さなければ自分が殺される。」
「その理由は一つだけでしょう。淑嬪媽媽が、賎民出身だからです。クム媽媽に、賎民の血が流れているからでなのです。これが、彼らが恐れ気に入らないことなのです。賎民の血を持つ者を王にすることを受け入れることができないのです。だから、彼らはクム媽媽を倒そうとしているのです。もし私家に送られたら、クム媽媽は長く生き延びることはできません。私は、そんなことを許すことは決してできません。」
考え込むトンイに、声をかけるポン尚宮。
「ヨニングンはどうしている?」とトンイ。
エジョンから話を聞くクム。
「私が結婚するということか?いつだ?」
「揀擇令(간택-령: カンテクリョン)が明日発っせられます。」とエジョン。
「何?その後、私はどうなるのだ?私家に行かなければならぬのか?結婚した王子は皆出て行かなければならないんだ。私は、オモニなしで一人で暮さねばならんのか?」
そこにトンイが現れます。
「オモニ!私は結婚したくはありません。宮中を離れたくないんです。私はオモニの傍にいたいんです。アバ媽媽や世子殿下と一緒に暮らしたいのです。」
「そうだ、クム。心配するな。」とクムを抱き締めるトンイ。
「お前は宮中から追い出されたりはしない。私がそんなことはさせぬ。」
ハン尚膳の前で、怒りを表すスクチョン。
「慣例、慣例…!誰がそんなことを気にするのだ!どうして自分の息子を守ることができんのだ?」
そこにトンイがやって来ます。
「トンイ!私がこの道を抜け出す策を見つけ出す。だから…。」
「いいえ、殿下。そんなことはなさらないでください。殿下が婚事を止めようとなさるのではと、それを案じてここに来たのです。殿下がそうなさると、噂に火を注ぐことになります。より重要なのは、殿下がこのような情実を示されることで世子殿下が再び傷つかれるということです。前に私が申し上げたように、一番気遣わなくてはならないのは、世子殿下ではありませんか?また殿下を傷つけてはなりませんし、古い噂を蒸し返してはならないのです。ですから、このことは私にお任せください、殿下。私が問題を解決してみます。」
「だが、お前がどのように?」
「私は今では宮中のやり方に長けているのです。私がプンサンだったことをお忘れですか?私は、ヨニングンを私家に行かせたりはしません。あの子は私が守ります、殿下。」
寶慶堂に戻ったトンイは、ポン尚宮にチョン尚宮を呼んでくるよう命じます。
「監察府にある儀軌(의궤: ウィグェ)を見る必要がある。」
トンイから話を聞くヨンギとウンテク。
「つまり、揀擇令(간택-령: カンテクリョン)ということですか?」
「はい、その通りです。私は今まで宮中に起きたことのない事件を起こそうとしているのです。」
「ですが、媽媽。それは…。」とウンテク。
「このことは、以前からずっと考えていたことなのです。ですから、私の希望通りにしてください。私がこうすることでヨニングンが守られるかどうかは誰にもわかりません。ですが今は、これが最善の策なのです。」
インウォンは、官吏に言います。
「ヨニングンの婚事の揀擇令(간택령:カンテkリョン)だ。直ちにそれを実行してくれ。」
それを持って中宮殿を出て来た男を止めるトンイ。
トンイの話に驚くインウォン。
「何?この揀擇をお前がやりたいと言うのか?」
「媽媽のお望み通り、この婚事を進めます。ですがヨニングンの婚事は私に決めさせてください。」
「お前の厚かましさには、驚かされる。王室の婚事の決定は、チュンジョンの権限なのだ。それをお前は奪おうと言うのか?」
「それは間違っています、媽媽。」と冊子を取り出すトンイ。
「これは、監察府に保管されている王室の婚事に関する記録です。それをお読みになると、世子殿下以外の後宮の王子の婚事は、王妃よりむしろ彼らの母親によって決められたことがわかります。媽媽が慣例によってヨニングンの婚事を執り行いたいのであれば、はい、それに従います。それなら、媽媽も宮中の慣例に従うことに賛成するべきではありませんか?」
ムヨルから話を聞く少論派首長。
「それでは、媽媽もそれに賛成したと言うのか?」
「それは媽媽が選んだことではないのです。淑嬪の計画は、自分を支持する誰かと自分を連携させることに違いありません。ですが、ご心配はいりません、大監。我々のなすべきことは、ヨニングンを私家に追い払うことではありませんか。」と強気なムヨル。
市中に貼り出される揀擇令(간택령)を見つめる民衆達。
そこにテプン親子が。
「あれは何だ?また何かあったのか。」とテプン。
張り紙を見て驚くホヤン。
「父さん!ヨニングン媽媽が結婚するようです。」
慌てて家に戻り、着替えるテプン。
「私達も処女単子(처녀단자)に名前を載せるのですか?」とパク夫人。
「そうだ。我が一族の名誉を復活させることのできる一つの方法じゃないか。」とテプン。
「ですが、家には娘がいないのにどうするんですか?」
「我々には、甥の娘がいるだろう。何とかするのだ。家の養女にすることもできる。」
「それで、何をなさるおつもりですか?」
「凧の紐をたぐり寄せるのだ。」
「父さん、早く行きましょう。遅れちゃいますよ。」とホヤン。
「ヨンガン、凧の糸を切らないように気をつけてくださいね。」
二人は、掌楽院にやって来ます。
「いやぁ、掌楽院もずいぶん変わったな。」
「えぇ、妓生も前ほど綺麗じゃありませんね、父さん。」
「そうだ。我々はいいときにここにいたのだ。あいつらが壊してしまったのだ。」
そこを通りかかるジュシクとヨンダル。
「おや、あの二人じゃありませんか?」
「どうしてあいつらがここにいるんだ?」
「久しぶりだな、ファン主簿!」「やぁ、ヨンダル!」と二人に近寄るテプン親子。
「どうして、掌楽院にいらしたんですか?」とジュシクは訊ねます。
「実は、お前達に命令を与えようとやって来たのだ。」
「命令ですか?」と言うジュシクに、ホヤンは、
「お前達二人は、今でも淑嬪媽媽と親しくしているんだろう?」
「もちろん親しくしていますよ。家族と考えていますから。」とヨンダル。そして彼は、
「それで、どうしてそんなことを聞くんですか?」
「寶慶堂へ行ってだな、我々も候補者を出したことを伝えてくれぬか。我々への計らいを頼んで欲しいのだ。」
いきなり笑い出すヨンダル。
「つまりあなた方一族が、クム媽媽の姻戚になりたいと言うのですか?」
「そうだ。我が一族は間違いなく基準に達している。完璧な候補者なのだ。」
ジュシクは言います。
「くだらないことを言っていないで、お帰り下さい!こんなバカな話は聞いたことがありません。おい、この侵入者をつまみ出せ!」
「侵入者だと?気でも狂ったのか?私が誰か知ってるだろう?」とホヤン。
「誰なんだ?一体誰なんだ?仕事もない浮浪者じゃないか。」
「おいお前!私はここの僉正?だったんだぞ!」
「あぁ、お前はそうだった。だが今は私が僉正だ!」と言うジュシクに、ヨンダルも、
「その通りです。あの頃は、私達の上司でしたが、今はもう違うんです。」
「犬にでもその話をしてください。くだらない話は止めて出て行ってください。誰かこいつらをつまみ出せ!出て行かないなら、打ちのめせ!」
彼らを連れ出す掌楽院の下男達。
花嫁候補者の書類を見るトンイに、イングクは言います。
「資憲大夫(자헌대부 チャホンデブ)チャ・テウンと禮曹参判(예조참판 イェジョチャmパン )ク・ミンホは、しっかりした一族です。どちらの娘もよい性格だそうです。」
「これは、老論派からの一番の候補者ですか?老論重臣達は、ヨニングンに命を賭けていると聞きました。ですが、私は誤解をしていたようです。」
「あの、媽媽。この一族達にご不満なのですか?」とイングク。
「はい、大監、その通りです。私は全く満足していません。私は、老論重臣達に期待していました。ヨニングンのために素晴らし候補者を指名してくれるものと…。ですが、本当にがっかりです。」とトンイ。
イングクの話に驚く老論派重臣達。
「それは、本当なのですか?本当に、チャ・テウン様と礼曹参判を拒絶なさったのですか?
「そうなのだ。私は完全に恥をかかされた。媽媽は、クム媽媽の将来のためにもっと強力な支援者をお望みなのだ。」
「ですが、あの一族は、クム媽媽には十分過ぎるほどです。過ぎたるものは、余計な噂や問題を起こすかもしれません。」
「その通りだ。」とため息をつくイングク。
書類を見たポン尚宮は言います。
「媽媽!この候補者達は、皆最高の一族の出身ですよ。本当に断るおつもりですか?」
「そうだ。彼らの一族は、ヨニングンを守るには十分な力がないからだ。私は、政治を操るつもりだと話したであろう、ポン尚宮。ヨニングンの妻の実家は、ヨニングンの将来に重要な役割を担うのだ。私は、ヨニングンを助け強力な支えとなる人間が欲しいのだ。」
ヨニングンを寺に連れて行くウナク。
「ここはどこですか?師匠様。」
「ここは、私の師匠が祭ってある寺です。」
「師匠様の師匠様ですか?」
「はい。媽媽が落ち込んでいらっしゃるようなのでお連れしたのです。私がお祈りをしている間、景色を楽しんでください。」とウナク。
寺の周りでドングリを拾うクム。
そしてそれを一つ口に入れたクムは、思わず顔を顰めます。
そこに一人の男が。
「それはかなり苦いはずだ。見たところ両班の出のようだだが、どうしてそれを食べているのだ?」
「あぁ、これですか?この苦さを忘れないようにしているのです。この苦さは、人々の涙だと教わりました。」
そこに、「ここで会えたか!」とウナク。
「師匠様!」とクムと男。
ウナクは、男に訊ねます。
「何だ?私に失望しているのか?私がお前達全員に、政治には背を向けると言ったのに、私自身がその忠告に従わなかったからか?」
「違います。クム媽媽を見れば、師匠様がなぜそうなさったのかがわかります。」とソ・ジョンジェ。
「それでは、彼の性格もわかったのだな。」
「差し迫った結婚が、いろいろと騒動を起こしているようです。ご心配でしょう。」
「そうだ。城を出ると、命が危険にさらされることになる。このことが、あの素晴らしい性格を失うことにならぬかと恐れているのだ。」
クムの婚事のことを、インウォンから聞かされる世子。
「それでは、候補者が決まり婚事が済めば、ヨニングンは宮中を出ることになるのですね。」
「そうだ。だから世子はもう何も案ずることはない。私は、世子の味方だ。私がお前を守るから、私を信頼せねばならぬ。ところで、最近よく食事を拒んでいると聞いた。そのようなことはしてはならぬ。わかったか?世子。」
「はい、チュンジョン媽媽。」
世子の食事を見に来たトンイ。
「これが、東宮殿から戻った食膳か?これもお気に召さなかったのであろう。」
「媽媽!クム媽媽のことをあれほど心配なさっているのに、どうして世子殿下のことまでご案じになられるのですか?こんなことをする必要があるのですか?」
ポン尚宮を窘めるトンイ。
声をかける尚宮に、「邪魔をするなといっただろう!」と世子。
そこにトンイが食事を持って入って来ます。
「これは、海草の粥と梅です。梅はお身体にいいのです。どうぞ召し上がってください、殿下。梅は、食欲を促し失った活力を回復します。ですから、どうか召し上がってください。」
「どうしてこんなことをするのですか?私は、媽媽にとって消えるべき存在ではありませんか。それなのに、媽媽もヨニングンもどうしてこんなことをなさるのですか?お帰り下さい。そしてヨニングンにもう私を捜さぬよう言ってください。あの子が毎日、こっそり私に挨拶をしていることを知っています。それが煩わしいのです。私は、ヨニングンには会いたくないのです。」
「殿下!それが本心でないことはわかっています。あなたの苦しみが、ヨニングンを遠ざけていることを知っているのです。ですが、心の中では、ヨニングンのことを心配し、すまないと思っていらっしゃるのではありませんか。ヨニングンも同じ思いでいるはずです、殿下。」
東宮殿の入り口で中を覗き込むクム。
「殿下!私はまもなく宮中を出なくてはいけないと言われました。もう殿下と一緒にここにいることはできないと言うのです。」
<回想シーン>
「私はお前の兄ではない。お前が打ち負かさねばならぬ敵なのだ。そして、お前も私が破滅させねばならぬ敵なのだ。」と世子。
クムは、涙ながらに言います。
「私は、本当にヒョンニムが好きなんです。オモニやアバ媽媽と同じくらい、ヒョンニムが大好きなんです。」
トンイに書類を届ける男。
「これが、最後の候補者です、媽媽。」
ムヨルは、インウォンに言います。
「淑嬪は、宮中のしきたりをわかっています。一度見合う候補者が見つかれば、そう長く抵抗することはできません。どうかすべてをすぐに進めてください。」
「はい、それが私の計画です。ヨニングンが宮中を出て行くことは間違いありません。」
候補者を見終わったトンイは、
「ここには適した者はおりません。これらの候補者の中には、ヨニングンの妻として相応しい者はいません。」
「それでは、もう一度…。」
「いいえ、私が自分で花嫁を選びます。実は、私の目に止まった者がいるのです。ですが、その娘は指名されていませんでした。私が自分で出向いて、彼女に申し込んでみます。」
驚く男。
そのことをスクチョンに知らせるハン尚膳。
「何?淑嬪が宮中を出て行ったと言うのか?淑嬪の目に止まった娘と言うのは、一体誰なのだ?」
「それが…。」と言い淀むハン尚膳。
「彼女は、パク・ドンジュ大監の居処に向かわれたと聞いております。」
「何?パク・ドンジュ?」と驚くスクチョン。
少論派首長も、そのことを聞いて驚きます。
「大堤学パク・ドンジュ?淑嬪は、気でも狂ったのか?」
「その通りです。彼の一族は、国家の最高の一族のひとつです。」
「パク・ドンジュの儒学者達への影響力は、計りしれません。我々少論派の首長だったのですぞ。」
「どうやって、淑嬪が彼を説得できると言うのだ?そんなことが許されると思っているのか?」
ポン尚宮、エジョンを連れて宮中を出ようとするトンイを、
インウォンが呼び止めます。
「淑嬪!そこで止まれ!これが、お前が候補者を選ぶと申し出た理由なのか?最高の一族を自分の味方につけたかったのか?私がこの婚事を許すと思っているのか?」
「媽媽!媽媽は、ヨニングンの婚事について、私に選択を許されたのですから、決定した後に論議をすることも出来るのではありませんか??申し訳ありません、媽媽。約束がありますので…。」
そう言って立ち去るトンイ。
トンイを出迎えるパク・ドンジュ。
ムヨルは、ミン軍官に言います。
「대제학 テジェハk と懇意な 동지사 トンジサ 반두홍 パン・ドゥホンに会わなければ…。彼ならこの婚事を止めるはずだ。」
そこにチョンスが。
ムヨルは言います。
「どうやら淑嬪媽媽は、他の者達と何も違いがないようだ。権力を味方に付けようとしている。だが、彼女は婚事も、クム媽媽を宮中に残しておくこともできないはずだ。」
「いいえ、ヨンガン。媽媽はその両方を手に入れるはずです。そして、あなたは媽媽がそうすることを最後には助けることになるのです。」
「何だと?」と怪訝な表情のムヨル。
そこにミン軍官が戻って来ます。
「ヨンガン、悪い知らせです!」
二人は、すぐに倒れた兵士達のところへ。
ミン軍官は、男の胸元から手紙を取り出します。
「同じ奴だ。私に警告しているのだ。誰だ?誰がこんなことを?」とムヨル。
トンイは、ドンジュに言います。
「突然やって来て申し訳ありません、大監。」
「とんでもございません、媽媽。私は光栄に存じております。実は、我が一族も揀擇(간택:カンテク)を望んでいたのです。ですが、私達の娘では適さないだろうとしないことを決めたのです。それなのに、媽媽が自らこうしていらしてくれたことをこの上なく名誉に思っております。」
「申し訳ありませんが、大監。どうやら誤解なさっているようです。私は、大監に会うためにここに来たのではありません。」
屋敷を出ようとするソ・ジョンジェを呼びとめる男。
「ナウリ!これは今月分の給料です。」
中を検め、「5両多い。」とチョンジェ。
「大監が、お坊ちゃまに良くして下さることへの感謝としてそれを追加なさったのです。」
「いいのだ。私はただ約束したことをしているだけだ。子供達に一生懸命勉強するように伝えてくれ。」
そこにウナクが。
「金を受け取ればいいのだ。何という変わり者なのだ!」
「師匠様!どうしてこちらにいらしたのですか?」とチョンジェ。
トンイの話に驚くドンジュ。
「つまり、ソ・ジョンジェ先生(선비:ソンビ)のことですか?」
「はい。彼はあなたのお子様を教えていらっしゃると聞きました。」
「それじゃ、媽媽。つまり…。」
「はい。私は、ソ・ジョンジェの娘をヨニングンの妻に迎えたいのです。」
スクチョンも、ヨンギからその話を聞きます。
「何、ソ・ジョンジェ?それは誰なのだ?私は聞いたことがないぞ。」
「はい、殿下。彼は、単なる進士です。彼は司馬試に通った進士ですが、政治には関心がなく代わりに人を教えているのです。」
「一体どうしてそのような男を…?それで本当に淑嬪が選んだことに間違いないのか?」
「はい。媽媽は、チュンジョン媽媽が婚事を提案する前から、彼の娘に目を止められていたようです。」
トンイは、ソ・ジョンジェの家に行きます。
「このようなところにいらして頂き申し訳ありません。」とチョンジェ。
「いいのです。突然やって来た私を許してください。私があなたに会いたかった理由は…。」
「師匠様から全て伺いました。ここにいらして下さったことは大変名誉なことですが、我が一族は、王室と婚事するに値しておりません。クム媽媽をお助けできる権力のある貴族がたくさんおられます。私には、政治に対しての関心も経験もございません。」
「私は、それであなたを選んだのです。力のある一族と言いましたね?はい、ヨニングンにはそんな人物が必要なことには私も賛成です。ですが、その言葉通りの力を意味するのではありません。君臨して奪い取る力ではなく、他の者達と分かち合う力。善悪を見極める力。そしてなによりも、私達が手にしているものが無意味であることを知る力なのです。私は、そのような本物の力をヨニングンに与えたいのです。そして、そのような力が勝利をもたらすことも彼に示したいのです。ヨニングンに、そんな世界を夢見て欲しいのです。それで、あなたのような方にヨニングンの傍にいてもらい、それが単なる夢で終わらないことを確かめて欲しいのです。」
トンイの話に頷くチョンジェ。
トンイは、彼の娘に会います。
「ヘインというのだな?そうか、お前の目は澄んで輝いていることが見てとれる。」
二人を見つめるポン尚宮とエジョン。
そしてウナクは、チョンジェに言います。
「意地を張るな。私はお前の師匠だが、媽媽に逆らうことはできん。」
「師匠様。」とため息をつくチョンジェ。
イングクはウンテクに言います。
「お前はこのことを知っていて、媽媽をお止めしなかったのか?」
「先にお知らせせず、申し訳ありませんでした。」
「狂ってる。皆頭がおかしいのだ。進士だと?権力を持つ一族が必要なときに進士だと?これでどうやってクム媽媽を守ると言うのだ?これじゃ、私家に追い出すことになるぞ。一体どうするつもりなんだ?」
「そのようなことにはなりません、大監。ソ・ジョンジェ…がクム媽媽を守ってくださるでしょう。」
「それは一体どういうことだ?ソ・ジョンジェがクム媽媽を守るとは…?」
トンイは、ウナクに言います。
「あなたのお話の後始めてここに来たとき、このようにそれを利用するとは思いませんでした。」
「はい。私が話をしたあの日、私が冗談を言っているかのように笑っていらっしゃいました。」
「これがヨニングンを守ってくれることを願っています。」
話を聞いて笑いだす少論派首長。
「進士だと?賎民には完ぺきな組み合わせではないか…。そうは思わぬか?」
「我々は何も心配することはなかったのです。後は、婚事を待つだけです。」
「自分の分をわきまえてそうしたのか、あるいは愚か故にそうしたのかどうかは知らんが、これで平和に休むことができる。」
そこにパク・ドンジュがやって来たと男が知らせに来ます。
彼を出迎える少論派首長。
「大監。あなたとお話したいと思っていたのです。」
「右相、聞いたか?ソ・ジョンジェが誰か知ってるか?」
「えっ?それは一体どういうことですか?」
「知らぬようだな。のんびりしている場合ではないぞ。」
すぐ招集をかける少論派の重臣達。
「それでどうすればいいのでしょう、大監!」
「大監!問題とは一体何なのですか?」と駆け込んでくるムヨル。
「我々は、淑嬪にひっくり返されたのだ。」と言う首長の言葉に驚くムヨル。
「ソ・ジョンジェの家だ…。彼は王気の流れる場所に住んでいるのだ。」
「何ですと?王気ですって?」
ソ・ジョンジェの家を見つめる人々。
「それじゃ、これがクム媽媽がお住まいになる家なのか?」
そこにテプン親子が。
「どけ!これが、…という家なのか?」
「父さん!淑嬪媽媽は、とうとう頭がおかしくなったに違いありませんよ。」
民衆は二人に言います。
「そんなこと言っちゃいけませんよ。この家には、王気が流れているんです。」
「誰だ、お前は。どうして邪魔をするんだ?待て、今何と言った?王気だと?」とテプン。
「はい。ここは、成宗の父の義敬世子が勉強したという家なんです。」
「それだけじゃありませんよ!宣祖(선조:ソンジョ)もこの家で勉強なさったんです。」
「えっ?成宗殿下や宣祖殿下が?」と驚くホヤン。
「そういうことですよ。この木を見てください!これは、義敬世子(의경세자:Uigyeongセジャ)が自らお植えになった木で250年も経っているんですよ!」
その言葉に驚くテプンとホヤン。
「それは本当ですか?待てよ、その二人は、元々王位を継ぐはずのなかった王子だった君主じゃありませんか。」
「そうだ、その通りだ。いや待てよ!それはつまり、クム媽媽この家と혼맥 ホンメk 婚脈を結んだら…、君主として宮中に戻るということか?」
ムヨルは言います。
「そんなことは非常識です。そのような迷信に振り回されるのですか?」
「我々は、民衆がどう思うかを案じているのだ。民衆は力がある。だから我々は彼らを恐れているのだ。二人の王に関して、民衆がヨニングンに味方をしたらどうなる?彼らは、ヨニングンが王になると信じるだろう。」と首長。
「それでは、ヨニングンに宮中にいて欲しいのですか?民衆の考えのためにですか?」とムヨル。
「ヨンガンの言う通りです。ヨニングンを宮中に留めておくわけにはいきません。」と若い官吏。
「だが、彼が私家に行って力を得たらどうするのだ?民衆を見くびってはならぬ。」
「大監、そんなことにはなりません。」
意見がまとまらない少論派の面々。
ヨンギとウンテクは、トンイのところへ。
「様子はどうですか?」とトンイ。
「予想した通り、少論派の重臣達は、熱い議論を交わしています。」とヨンギ。
「ですが、それがクム媽媽の出閤(출합:チュラブ)を止めることになるのかどうかわかりません。止められなければ、もう他に道はないのです。」とウンテク。
出て来たムヨルは、
「一晩中話しあっても何も解決はしない。我々は、このときのためにやってきたのだ。そう簡単に諦めるわけにはいかぬ。行くぞ!木は私一人でも切り倒せる。」
そして夜、出かけようとしたムヨル達のところに現れるチョンス。
「お逃げください、ヨンガン!」と、ミン軍官はチョンスに向って行きます。
チョンスは、彼を倒すとムヨルに刀を向けます。
「私の警告に従うべきだったのです、ヨンガン。」
「それじゃこれはすべて…。このことから逃れられると思っているのか?」
「ヨンガンの命は、私の手の中にあるのです。」
そう言って、胸元から冊子を取り出すチョンス。
「それは何だ?」とムヨル。
「あなたのような男が過去に汚点がなかったはずはありません。ですが、あまりにもうまく隠してあったから、見つけるのに苦労しました。正直で誠実な評判とは裏腹に、あなたは開城商人との不正に関わっていたのです。そして、それを完全に秘密にしていました。よく聞いてください、兵曹参判。私は三度あなたに警告しました。あなたの嘘と汚職をいつでも暴露することができるのです。それに私はいつでもあなたの命を奪うことができることを覚えておいてください。ですが、ご心配はいりません。それは今日ではありませんから。先にあなたにやってもらわなくてはならないことがあります。それが何がを申し上げましょう。」
トンイに報告するポン尚宮。
「媽媽!重臣達が、クム媽媽の今後について話し合うために便殿に集まっています。」
「上手くいってくれると願っています。」と言うハンに、「私もです。」とファン。
そこにチョンスが。
「ナウリ、どこにいらしたのですか?宮中は大騒ぎですよ。」とファン。
「重臣達が大殿に集まっていると聞きました、ヨンガン。」
「そうだ。今は少論派がどうするか見ているしかない。」とヨンギ。
話し合いを続ける少論派達。
「どうしたらいいのですか?大監。」
「忘れることが一番だ。我々は民衆を怒らせてはならぬ。」
「ですが、南人派が問題ではありませんか。兵曹参判が頑張る限り、彼らはそのままの状態を続けるでしょう。」
困り果てる少論派首長。
チョンスの脅しに悩むムヨル。
「厚かましい奴だ。私に脅しをかけてくるとは…。」
こうしてスクチョンの前に集まる重臣達。
イングクは言います。
「殿下。クム媽媽はまだ幼いのです。婚事と出閤は、時がくればいつでもできることです。」
「ですが、それは慣例に反することです。一度婚姻したら、クム媽媽は出閤せねばならないのです。」
スクチョンは言います。
「私もそれはわかっておる。だが、私家に暮らしていたとき、ヨニングンの命は脅かされていたのだ。それを知っていて、どうして私が彼を送り出すことができようか。」
「殿下!どうしてこの慣例が存在するのかを思い出して下さい。これは、国本である世子殿下のためではありませんか。」
「その通りです、殿下。国本のことをお考えください!」
「殿下、例外などあってはなりません。どうか我々の進言をお聞きください。」
そのとき、ムヨルが口を開きます。
「殿下。必ずしもそうする必要はありません。中宗(중종:チュンジョン)殿下のご次男福城君(복성군:ポクソングン)媽媽は、婚姻の2年後に出閤なさいました。つまりこれは、慣例を破ることにはならないということです。」
ムヨルの言葉に、騒然とする少論派重臣達。
「殿下!私家?or私宮(사궁:サグン)でのクム媽媽は危険です。ですから、クム媽媽のためにも、ここに留まることをお許しなることが正しいと思われます。」
頷くスクチョン、都承旨、そして南人派達。
ウンテクの話に驚くトンイ。
「それは本当ですか?兵曹参判が本当にそう言ったのですか?」
通りかかったムヨルに、チョンスは言います。
「評判と自分の命以上に大切なものはないようですね。そうではありませんか?ヨンガン。」
「そうだ。お前の手にある二つの武器が、私の邪魔をしたのだ。だが、もっと早く私を倒すべきだったな。お前も知っているように、私はかなり優れた男なのだ。」
エジョンから話を聞き、喜ぶクム。
「それじゃ、私は出て行かなくてもいいのか?婚姻の後もここにいられるのか?」
「ええ、媽媽。その通りです!」
「本当だな!嘘じゃないな?」
「媽媽、私が嘘などつくものですか。」
世子も尚宮から、その話を聞いて笑顔を見せます。
「そうか。彼らが便殿でそう決めたのか?」
トンイは、スクチョンのところへ。
「殿下。便殿で起きたことを伺いました。」
「何をしたのだ?どうやって彼らを説得したのだ?」と笑顔のスクチョン。
「後ですべてお話いたします。」
「お前には驚かされるな。本当によかった。両手を縛られ、気が狂いそうだったのだ。だがもう、喜んでヨニングンの婚事を進めることができる。この婚事は盛大に執り行うぞ。私を止めようとしても無駄だ。わかったか?」
「はい、殿下。今度は私が引き下がります。」
クムの準備を済ませ、「終わった。座りなさい。」とトンイ。
「オラボニ!これもすべてオラボニのお陰です。」
「いいえ、媽媽。」とチョンス。そして彼は、クムに言います。
「いかがですか?媽媽。結婚することで興奮していますか?」
「よくわかりません、ウェス。私は、本当に結婚するのですか?」
「はい、媽媽。私の兄(先輩?)になるのです。私より先に結婚するのですから…。」
「えっ?私がウェスの兄になるのですか?」
トンイは、クムに言います。
「クム!私は、結婚が何を意味すると言った?」
「本当の大人になることだと…。ですから、私の考えも心もより深くならなければならないとおっしゃいました。」
「そうだ。お前はもっと大人にならなければならない。他人のことを気遣い、多くのことに責任を持たねばならぬ。」
「はい、オモニ。」とクム。
こうしてクムとヘインの婚姻の儀が執り行われます。
その夜…、トンイは、ポン尚宮に言います。
「ヨニングンは、もう休んだのか?」
「はい、エジョンが大変だったようです。花嫁がオモニに似て綺麗だと言い続けて、なかなかお休みにならなかったそうです。クム媽媽が早く15歳になってくればと思います。それで婚姻が完全なものになるのですから…。そして媽媽のような可愛い女の子が生まれることを願っているのです。」
「何ですって?まだ何年もあるぞ。」
「気が早すぎましたか?」
「そうだ、私はそんなに早くハルモニにはなりたくない。」
「嬉しいことはわかっていますよ!」とポン尚宮。
トンイの話を聞いたスクチョン。
「そうか、そういうことだったのか。」
「私がソ・ジョンジェの娘に決めることは、面白い話だと受け止めたのです。少論派に恐怖に落とせるかと。」
「その通りだ。彼らは、他の誰よりそう感じたことだろう。」
「約束を守ってくださって、ありがとうございました。殿下。ヨニングンの花嫁を選ぶことをお許しくださったこと、すべてを私にお任せくださったことも…。」
「それは男の約束だ。君主として、自分の約束を反故にするわけにはいかぬ。だが、ヨニングンには強力な一族の後ろ盾が必要だというのが私の意見だ。お前の意志はわかっている。だが、彼のこれから歩む道を考えると、彼は重臣達を支配できるようにならねばならぬ。」
「ヨニングンのこれから歩む道とはどういう意味ですか?殿下。」
「トンイ!少論派重臣達は、ヨニングンを放っておかないだろう。二人共、私の大切な子供だ。だが、彼らにとって、世子もヨニングンも自分達の権力を保護するために利用することのできる盾なのだ。少論派には世子が、そして老論派にはヨニングンが。彼らはこの戦い止めることはない。お前も、ヨニングンの歩まねばならない道、そしてあの子の運命がどのようなものかわかっているだろう。私は、お前にとても重要なことを訊ねる、トンイ。君主としてではなく彼の父として、彼の母であるお前に…。ヨニングンが封位されるべきだとは思わぬか?それだけが、あの子が生き延びる方法ではないのか?」
「殿下の次に王位を継ぐことができるのは、この国に世子殿下だけです。何があろうと、そうならなければなりません。ですが、ヨニングンを救う道がそれだけなら、ヨニングンもまた国本になる必要があります。はい、そのとおりです、殿下。あの子の母として、私が出した結論です。」
第57話に続く!
55話の復習はこちらで!
レモン色の雲:第55回あらすじ
チャイミのベッドストーリー:第55部-仁元王后より引き立ったスクビンの選択
「さらに就善堂ヒビン・チャン氏は、世子の母としての責務を怠り、この犯罪の全てを操ったのだ。彼女の罪もまた、許されるべきものではない。それゆえ、ヒビン・チャン氏に対して同じ裁定を下すものとする。本日1701年10月8日、彼女の称号をはく奪し、毒によって処刑されるものとする。」
衝撃に目を閉じる少論派首長とムヨル達。
知らせを聞いたトンイは、「毒ですか?」と。
「はい、媽媽。我々監察府は、今その命を受けました。」とチョン尚宮。
「いつです?いつ、それは実行されるのですか?」と言うトンイに、
「今日です、媽媽。」とチョンイム。
「殿下は、今日ヒビンの刑を執行するようお命じになりました。」とチョン尚宮。
驚くトンイ。
トンイは、スクチョンのところへ。
何も答えないスクチョン。
チョン尚宮は、監察府内人達に言います。
「御命により、本日午の刻、ヒビン・チャン氏の刑を執行する。準備しなさい、ナム尚宮!」
スクチョンは、トンイに言います。
「宮中内で屈辱と軽蔑を受けることは、ヒビンにとって死より辛いことであろう。私はその苦しみから早く解放してあげたいのだ。それが私の知るヒビンだから…。だが、本当はヒビンの命を助けたかった。彼女がほんの少しでも自責の念を表していたら、彼女の命を私の手で奪う必要などなかったのだ。」
オクチョンのところへ行くという世子を止める内人達。
「殿下、こんなことをなさってはいけません。どうか自重なさってください。」
「死罪だと?どうしてオモニが死罪になど…。そんなのだめだ…。下がれ!行かせてくれ!」
と外に走り出す世子。
現れた官吏にオクチョンは訊ねます。
「オモニとオラボニは、どうなったのですか?」
「今島に移送されているところです。そこで刑を執行されることになっています。」
泣き崩れるオクチョン。
檻に入れられ護送されるヒジェとユン夫人を詰る民衆達。
「ざまあみろ。天を恐れずにいたからこうなったんだ!」
そこにパク夫人達が。
「あれを見てください、ヨンガン。ユンさんとチャン・ヒジェですよ!」
経文を唱え始めるテプン。
パク夫人は、その列に向かって叫びます
「何をやってるの?このまま行かせるつもり?石をぶつけて殺してやるわ!」
「そうだ、そうだ!」と民衆達も一緒に石を拾い始めます。
「お前、どんなに憎くても、石を投げてはいかん。」とテプン。ホヤンも、
「そうですよ、オモニ。彼らはもう死んだようなものなんですから。」
「あなた達ったら、彼らが憎くはないんですか?彼らはソウされて当然なの。天罰を下してやらなくちゃ。」
彼女の声に、石をぶつけ始める民衆達。
世子は、スクチョンのところへ。
泣きながらスクチョンに会わせてくれと、ハン尚膳に懇願する世子。
そこにトンイが宮殿から出て来ます。
「媽媽。どうか私の母を助けてください。お願いですから、アバ媽媽を説得してください。媽媽の話なら、アバ媽媽は必ず聞いてくださいます。いえ、私が自分で話します。」
世子を止めるハン尚膳とトンイ。
「お願いです、アバ媽媽のところへ行かせてください。」
そして、トンイの前に跪く世子。
「殿下、こんなことなさらないでください。こんなこと、いけません!」
「お願いです、オモニを許して下さい。全て、私のせいなんです。オモニがこんなことをしたのは、全部私のためなんです。私のために…、だから…。」
涙するトンイ、そして内官達。
部屋で最後のときを待つオクチョン。
「こうして終わるのか?すべてはこのように終わりになるのか?」
世子を立たせるトンイ。
「こんなことをなさっていると、殿下の御体を損ねます。ですから、どうかすぐ立ちあがってください、殿下。」
そこにポン尚宮が駆け込んできます。
「媽媽!義禁府がこれから刑を執行するそうです。」
「だめだ!いけない…!」と走り出す世子。
チョンスは言います。
「御命により、午の刻に刑を執行する。行くぞ!」
就善堂から走り出すオクチョンを、兵士が止めます。
「下がれ。ある人に会わねばならぬ。」
「お下がりください。こんなことなさってはいけません、媽媽!」
「下がれ、無礼者!わからぬか、どうしてもある者に会わねばならぬのだ。すぐそこをどけ!」
そこに「オモニ!」と世子が。
駆け付けたトンイは、二人を遮る兵士達に言います。
「下がりなさい。世子殿下を最後に母に会わせてあげなさい。」
「申し訳ありませんが、媽媽。それはできません。」
そして兵士は、「何をしておる!世子殿下を東宮殿にお連れしろ!」と。
抗う世子を連れ戻す兵士達。
泣き出すオクチョン。
彼女は、「淑嬪!」とトンイを呼びます。
「お前は、世子を決して傷つけないと約束した。あれは本当真意なのか?私はお前に会いに行くつもりだったのだ。最後にお前に会いたかったのだ。お前は、全ては運命ではなく私が選んだのだと言った。」
そして、トンイの手をとるオクチョン。
「もしそれが本当なら、自分が選んだことの責任を私は受け止めるつもりだ。だが、私の犯した間違いをあの子に償わせるわけにはいかぬのだ。」
オクチョンは、とうとうトンイの前に座り込みます。
「言ってくれ!世子に機会はあるのか?あの子の将来を守るために私にできることはあるのか?そうだ、私はお前を殺そうとした。何度もそうした。だが今は、世子を守るよう頼めるのは、お前しかいないのだ。ずっと憎み続けて来たお前しか…!私は、死をもって全ての私の罪を償うつもりだ。だから、頼む!だから、世子を…。あの子を守ってくれ、淑嬪!おい、淑嬪。あの子を守ってくれ!私の最後の頼みだ。頼むから、私の最後の頼みを聞いてくれ。世子を、あの子を頼む。お願いだ、淑嬪…。」
何も答えぬトンイ。彼女にすがって泣き崩れるオクチョン。
監察府内人を連れたチョン尚宮は、「すべて準備が整いました。」と教旨?を持つ官吏に。
就善堂に赴く彼ら。
男は、白装束に身を固めたオクチョンに時のきたことを告げます。
「最後の頼みがある。」とオクチョン。
ハン尚膳から話を聞いたスクチョンは、
「最後の瞬間を私に見て欲しいだと?それがヒビンの最後の頼みとして言ったことなのか?」
「はい、殿下。」とハン尚膳。
オクチョンの部屋の外で声をかける男。
「ヒビン・チャン氏、外に出て教旨を受けよ。」
オクチョンは、静かに宮殿の前に置かれた毒薬の前に座ります。
教旨を読む兵士。
「ヒビン・チャン氏、内命婦の後宮及び、国本(국본:クkポン)の母后(모후:モフ)として、王位に背く許し難い罪を犯した。数え切れぬほどの企みで先の中殿に危害を加えようとし、最後には淑嬪とヨニングンの殺害を企てた。その罪は許し難いものである。それゆえ、本日死罪を受けるものとする。我が国と朝廷の安泰を回復するために。」
オクチョンは、男に訊ねます。
「殿下に話してくれたのか?」
黙って頭を下げる男。
スクチョンのいる宮殿の方を見上げるオクチョン。
「そこにいらっしゃいますか?殿下。どこかで、私を見ていらっしゃいますか?」
就善堂のほうを見つめるスクチョン。
オクチョンは、スクチョンに向けて礼をします。
「ええ、私は嘘をつきました、殿下。殿下を愛したことを後悔しているというのは嘘だったのです。私は全てを得ようとしましたが、殿下の愛を望むことが賢明ではないことをわかっていました。殿下を愛しているからこそ、自分が愚かで誤っていたことはわかっていたのです。ですから、このように殿下を苦しませた私をお許しください。私の最後の瞬間を見てくれと頼んだ私を許して下さい。最後に愚かにも我儘な行動をとった私を許して下さい。ですが私は覚えていて欲しいのです。私の最後の瞬間を、殿下に覚えていて欲しかったのです。ですから殿下、どうか私を覚えていてください、どうか…。」
そして毒の入った器を口に持って行くオクチョン。
それを見つめるスクチョンは、思わず目をそらします。
楽しかった頃の記憶と共に、息を引き取るオクチョン。
一人宮殿に佇むトンイ。
「どうか心安らかにお休みください、媽媽。もうこの世界の悲しみは全てなくなったのです。どうか安らかに…。」
雷雨の夜、慌ただしく動き回る医官達。
「殿下のご様子は?」
「変わらぬままです。」と医女。
「放っておいてくれ!聞こえぬのか?」と世子の声。
内人達に物を投げつける世子。
「お前達が目ざわりなのだ。一人にしてくれ!」
「殿下。血が流れております。すぐに治療をお受けにならなくては…。」
「黙れ!血が流れているから何だと言うのだ。死ぬつもりだと言っただろう。匹敵の水も口に入れるつもりはない。私は、オモニの後を追うのだ。出ていけ!一人にしてくれ。」
ウナクと勉強をするクム。
ウナクは、上の空のクムに声をかけます。
「媽媽!今日はもうお止めになりますか?」
「申し訳ありません、師匠様。」
「今日も世子殿下にお会いになれなかったのですか?」
「はい。東宮殿に行ったのですが、誰も中に入れるなというご命令で…。」
「私は、媽媽のお気持ちはよくわかります。ですが、このような時こそ、集中することが必要なのです。知識で気持ちを楽にして、他の物事を探し求めるのです。」
「はい、師匠様。」とため息をつくクム。
トンイは、その様子を遠くから見つめます。
ハン尚膳に訊ねるスクチョン。
「世子の様子はまだ変わらぬのか?」
「はい、殿下。侍講院(시강원:シガンウォン)へ行くことも拒まれ、食事も退けられていらっしゃいます」
突然現れた世子に「ヒョンニム!」と駆け寄るクム。
「ひょっとして、ヒョンニム様がここに来られるのではないかと待っていたんです。ヒョンニムのことがとても心配だったんです。何日も食事をとられていないと聞きました。ヒョンニム、そんなことをなさってはいけません。病気になったらどうするのですか?」
世子の手の傷に気付くクム。
「ヒョンニム!怪我をなさったのですか?どうなさったのです?」
「もうたくさんだ!」とその手を振り払う世子。
「ヒョンニム!」と驚くクムに、世子は言います。
「私をそう呼ぶな。そう呼ぶなと言っただろう!私はお前の兄ではない。私は、お前が破らねばならぬ敵なのだ。そしてお前も、私が破滅させなければならぬ敵なのだ。」
「ヒョンニム!一体どういうことですか?どうしてそんなことをおっしゃるのですか?」
「何も知らぬふりをするな。私の母はお前を殺そうとしたのだ。お前もそれを知っているだろう?」
「殿下、それは…。」
「だから、私をヒョンニムと呼ぶな。私に笑いかけるな。そして私を心配そうに見るな。私をお前の敵だと思うのだ!お前と私は、決して兄弟にはなり得ないのだ。我々は、王位をかけて戦わねばならぬ敵同士なのだ。これが、我々の生きる宮中というものなのだ。だから、もう二度と私を捜したりするな。わかったか?」
「ヒョンニム…。」と泣きながら歩くクムに声をかけるエジョン。
「媽媽、一体どうなさったのですか?」
「いや、何でもない!」と、慌てて涙をぬぐうクム。
戻って来た世子は、投げ壺の矢を手に、楽しかった昔のことを思い出します。
そして母オクチョンの言葉も。
「これを覚えておくのです。世子は揺れ動いてはなりませぬ。倒れてはならないのです。世子を守るために私がしたことを覚えていますか?ですから、世子は生きなければなりません。生きて、この国の王にならねばならぬのです。」
「オモニ!」と、泣き崩れる世子。
首長の家に集まる少論派達。
「我々は、新しい中殿を連れてくる必要があります、大監。」
「朝廷のほうはどうなっておる?」と首長。
「老論派は、淑嬪を中殿にさせようとしています。」
「いや、それは論外だ。賎民出身なのだぞ。そんなことはあってはならぬ。」
「それだけではありません。もしヨニングンが君主になれば、賎民の血を受け継ぐ君主が生まれることになるのです。」
「何があろうと、それは止めなければならぬ。賎民の血を引く君主だと?我々が、どうやってそんな君主に頭を下げられると言うのだ!」
「おっしゃる通りです、大監。」
ウンテクは、イングクのところへ。
「中に入れ。老論派達が中で待っている。」とイングク。
ウンテクは、トンイに報告します。
「老論派重臣達は、決意が固まりました、媽媽。彼らは、媽媽を中殿にし、クム媽媽を世子にすることに命を賭けているのです。」
「持平!?その話は、はっきりと終わりだと申したはずだ。」
「媽媽!あなたは否定なさるかもしれませんが、ヨニングン殿下が、世子殿下の敵であることは、民衆でさえ知っていることです。それを否定なさるおつもりですか?多くの人々が、クム媽媽を将来のわが国の王として見始めてしまったのです。老論派は、クム媽媽を支持することを決め、少論派は彼に対抗することを決めたのです。これが、クム媽媽の定められた道なのです。もしクム媽媽が王にならなければ、その命は危険にさらされることでしょう。」
深くため息をつくトンイ。
スクチョンを前に、言い争う少論派と老論派の重臣達。
「我々には、新しい中殿が必要なのだ。」と少論派。
「淑嬪媽媽がここにいらっしゃるのに、どうしてそのようなことが言えるのです?」とイングク。
「ですが、淑嬪媽媽は賎民の生まれなのです。」
「何ということを…。」
「殿下、賎民出身の淑嬪媽媽がどうして中殿になどなれましょうか。非常識です。」
「Finance Minister! 淑嬪媽媽は、我が国の後宮媽媽ですぞ。媽媽は、中殿になる権利があるのです。」
「殿下。中殿は、我が国の全ての人々から尊敬されなければなりません。それなのに、賎民がどうしてその役割を担うことなどできましょうか。それは王室の尊厳を損なうものであります。」
ウンテクは言います。
「人民を言い訳にするのはお止めください、大監!中殿として淑嬪媽媽に仕えたくないのは、あなた方重臣と両班達だけではありませんか。王室の尊厳を損ねているのは、あなた方なのです。王室の後宮を賎民だとはなんと無礼な!」
「何という物の言い方だ…。」
そのときスクチョンが、「たくさんだ。もうたくさんだ!」と声を荒げます。
「殿下。我々が反対していることは、これだけではありません。ヒビン・チャン氏亡き後、世子の安全に関する噂が都城で広まっているのです。もしこのような時期に淑嬪媽媽を中殿にご指名なされば、世子殿下の地位を危機にさらすことを宣言することにはなりませぬか?殿下!世子殿下のためにも、新しい中殿を指名なさらねばなりません。どうかお聞きいれください。」と少論派首長。
「殿下、本末転倒です。内命婦には、既に後宮媽媽がいらっしゃいます。どうして新しい中殿が必要なのでしょうか。」
トンイは、ヨンギとチョンスに言います。
「少論派重臣達が正しいのです。もし私が中殿になったら、私がどれほどそれを拒もうと、老論派は、世子殿下を退けようとするでしょう。」
「ですが媽媽。媽媽とクム媽媽の幸せはどうなさるのです?世子殿下を守るために、それを諦める必要はありません。」とチョンス。ヨンギも
「チャ従事官の言う通りです、媽媽。世子殿下が君主になるときのみ安全であるように、クム媽媽も王になられたときだけ無事でいられるのです。」
「それでは、皆が王になる必要があります。どうして、彼らのうちの一人だけが王になれると思うのですか?世子殿下とヨニングンが、二人とも生きられる方法があるはずです。」
「媽媽、つまり…。」とヨンギ。
「私は、何も諦めるつもりはありません。私はすべてを失っても構わないのです、称号も必要ではありません。私の命も含め、自分の力に全てを賭けるつもりです。世子殿下とヨニングンの二人を守るために…。」
ぼんやり考え込むクムにトンイは訊ねます。
「そうか、今日も東宮殿に行ったのか?」
「はい。殿下のお身体の様子を外から訊ねたのです。もう自分を捜すなと殿下がおっしゃいました。でも私は殿下の弟ではありませんか。殿下はもう私をお嫌いかもしれませんが、私は…。」
「クム。殿下は、お前を嫌いなのではない。殿下は、ご自分のことを悩んでおられるのだ。だから、本当にお辛いのだ。お前のことは全然憎んでなどはおらぬ。」
「本当ですか?オモニ。本当に、ヒョンニム様は私を憎んでいないと思いますか?また投げ壺のやり方や古典の勉強を教えてくださると思いますか?」
「そうだ、きっとそうして下さるはずだ。殿下は、またお前の兄に戻ってくださるはずだ。」
嬉しそうなクム。
「母を信じてくれるな?母が約束する。私が、お前と世子殿下を二人とも守ると。」
トンイは、クムをしっかりと抱き締めます。
帝王訓育(제왕 훈육:チェウォン フニュk)を投げ捨て、それに火を付ける世子。
「放せ、放せ!全てを燃やすのだ。」
「いけません、殿下。この書物は、帝王学?に使うものではありませんか。」
「だから燃やすのだ。もう私には何の役にも立たぬ。」
そこにスクチョンが、「一体何をしているのだ?世子!」と。
「これはもう私には用のないものです。だから燃やそうとしていたのです。」
「何だと?燃やすだと?」
「はい、そうです。淑嬪媽媽が中殿になられたら、私は放り出されるのです。もう私には、用のないものなのです。」
「世子!すぐにこれを止めるのだ。どうしてそのようなことを言うのだ?」
「皆が言っていることです。そしてそれがアバ媽媽の望まれていることでしょう?私とヨニングンを取り変える、それがアバ媽媽の望みなのでしょう?」
あまりのことに愕然とするスクチョン。
トンイはスクチョンのところへ。欄干に座って話をする二人。
「世子殿下のお気持ちを理解してあげてください。そうしなければならないのです、殿下。今一番傷ついていおられるのは、世子殿下なのですから。私は、中殿にはなるつもりはありません、殿下。」
「だが、トンイ。」
「これだけが、この悲劇を終わりにすることができる方法なのです。後宮が中殿になれるという可能性があったために、ヒビンはその人生のすべてを野望の虜として過ごすことになったのです。だから今、皆が苦しんでいるのです、殿下。それでもし私が、後宮が中殿になれば、この国の王室でこの悲劇が繰り返されるのです。」
「それでは、お前はこれを終わりにすると…?お前の手の届くところにあるものを全て捨てるというのか?」
「それは、もっともっと価値のあるものがあるからなのです、殿下。物を得たり地位を手に入れるよりもずっと貴重なことがあるからなのです。どうか、それを私に失わせないでください。意味のない地位や品物よりずっと価値のある大切なものを私に守らせてください。そして、この悲劇が二度と起きないようにしてください。お願いです、殿下。」
報告を聞いて驚くムヨル。
「何?殿下が新しい中殿を指名なさるだと?」
「はい、ヨンガン。新たな中殿をお迎えになることの教旨を下されました。」
都承旨は、重臣達に教旨を発表します。
「それゆえ、これによりThe Ministry of Personnelが命を実行し、中殿が指名されることになる。さらに、国家の威厳を回復するために、これ以後後宮は中殿になることはないものとし、この法は破られることはない。」
ムヨルは、トンイの前に進み出て言います。
「媽媽がなさったことですか?中殿になることを媽媽が拒否なさったのかと聞いているのです。」
「ええ、その通りです。」とトンイ。
「後悔なさることでしょう。私に背いたこと、そして目の前にあった権力を突き放したことをきっと後悔なさいます。」
「そうですか、本当にそうでしょうか?ヨンガンは、私を愚かで浅はかだと考えているかもしれませんが、それは私があなたについて思っていることです。あなたは、野望を追いかけ、人を裏切り、血を流しました。そして、復讐のために再び血を流しているのです。ですが、それがすべてではありません。誰もがあなたのようだと考えないでください、ヨンガン。他人を踏みにじらない人間も、世の中にはたくさんいるのです。彼らは、自分の持つ物を他人と分かち合い、見知らぬ人を受け入れる…。それを幸福への道筋と考える人間がたくさんいるのです。政治ですか?それが宮中でのあり方ですか?いいえ、そうではありません。私が皆に見せてあげます。あなたのやり方ではなく、政治を利用して宮中で事を成し遂げられるということを。」
そう言って立ち去るトンイ。
ムヨルは、その後ろ姿を見つめながらこう言います。
「彼女が愚かだとわかっていたが、あのように繊細だとは予想していなかった。いいだろう。中殿が入宮されても、同じことが言えるかどうか見せてもらおう。」
トンイは、ヨンギ達との会話を思い出します。
<回想シーン>
「世子殿下は、何があろうと王にならなければなりません。これが私の意志なのです、持平。」
「ですが、媽媽。」とウンテク。
「ヨニングンも同様に王位を継ぐのです。そうなったときだけ、彼は生きていけるのです。」
「媽媽、それは一体…。」と言うウンテクに、ヨンギは、
「媽媽は、世弟のことをおっしゃっているのだ。媽媽は、クム媽媽を世子殿下の後継者にするとおっしゃっているのだ。」
驚くウンテク。チョンスは、
「媽媽のおっしゃる通りです。クム媽媽が世弟になれば、世子殿下もクム媽媽もどちらもお命が守られるのです。」
「それが私の望みなのです。これが、私が世子殿下とヨニングンを守る方法なのです。」
こうして、スクチョンは新しい中殿として、慶州金氏を迎えます。
教旨を読み上げる都承旨。
「王室の礼法教令によって、慶州金氏を中殿に冊封する。…。」
声を揃えて祝福する重臣達。
中宮殿にやってきた仁元王后(インウォン)を迎えるトンイ。
彼女は、トンイに目を止め彼女の前に。
「お前が、淑嬪だな。」
「はい、その通りでございます、チュンジョン媽媽。私、ご挨拶申し上げます。」
監察府に戻ったイングム達。
「見たでしょう?お前が淑嬪だな…。あの目を見たでしょう?」
「まったく、ほとんど漏らしそうだったわ。」とシビ。
「あの若さで、どうしてあんなに怖いの?淑嬪媽媽を食べてしまいたいようだったわ。」
「当然よ。淑嬪媽媽が中殿になることをお断りなったことは、誰でも知っていることよ。」
「これからどうなるの?ヒビン媽媽がいなくなったばかりなのに…。今度は中殿と対決しなくちゃならないの?」
とイングム。そこにユ尚宮が。
「何ということを口にしているのだ?」
「申し訳ありません、ママニム。ですが私は淑嬪媽媽が心配で…。」
「愚か者!お前がそういうことを言えばいうほど、媽媽のお立場が悪くなることがどうしてわからぬのだ?」
そこに現れたチョン尚宮。
「もうよい。行って自分の仕事をしなさい!」
出て行く内人達。チョンイムは言います。
「あの子達の言うことはもっともです。私達全員が今日見たように、明らかにチュンジョン媽媽は、淑嬪媽媽を最大の敵と考えているのではありませんか。」
必死でトンイに訴えるポン尚宮。
「彼女は、媽媽を侮辱しようと考えていたんです。自分はチュンジョンだと、媽媽に言ったんですよ。」
「ええ、彼女は若いかもしれませんが、とっても几帳面で口うるさいと言われてるんです。既に候補者になっただけで、それを気取っていたと聞きましたよ。」とエジョン。
「言葉に気を付けるのだ。チュンジョン媽媽にたいして何ということを口にするのだ?」
「ですが、媽媽。もしあの女狐が…。」
「ポン尚宮!」と窘めるトンイ。
片づけられる家具を見ながら、インウォンは言います。
「これほどの家具の数々は、私の到着前に内需司(내수사:ネスサ)に戻しておくべきだったのだ。内人についても同じだ。規則に反するどんな装飾も許さぬ。だからお前から皆に警告しておくのだ。」
そこにインウォンの父キム・ジュンシン(金柱臣)とムヨルが。
「私は、参判チャン・ムヨルでございます。だいぶ前に、私が全羅道(전라도:チョンラド)の暗行御史
(암행어사:アmヘンオサ)だったとき、あなたのお父様とお近づきになりました。」
「兵曹参判ほど頼りになる者はおりません、媽媽。彼がSeacret Inspectorだったとき、私は彼について感銘を受けたのでございます。」
「それは身に余るお言葉です、大監。」
「それが褒めすぎかどうかは、私にはすぐにわかる。」
「媽媽、私、誠心誠意お仕えいたします。」
「実は、私が宮中に入る前から知りたかったことがあったのだ。」
「何でしょうか、媽媽。」
「寶慶堂(보경당:ポギョンダン)とヨニングンに関する噂が本当かどうかを知りたいのだ。」
ユ尚宮は、トンイのところへ。
インウォンは話を続けます。
「私がチュンジョンとして最初にしようと思っていることは、内命婦を正すことだ。より重要なのは、世子の地位を安定させたいということなのだ。それが、チュンジョンとしての私の務めだと信じている。だが、淑嬪が殿下の寵愛を利用して、ヨニングンを世子にしようとしているという噂を聞いた。それは事実なのか?」
うっすらと笑みを浮かべて中宮殿を出るムヨル。
ユ尚宮は、トンイに書状を渡しながら言います。
「これが、センガッシ(女官見習い)となった内人達の名簿です。」
「前回より多いようだな。」
「はい。我々は得点の高い娘を選び、それぞれの部署に配置いたしました。チュンジョン媽媽をお迎えしたことで、さらに内人が必要かもしれません。」
「わかった。…式はいつだ?」
ヨンダルはジュシクに訊ねます。
「今日の式に、チュンジョン媽媽は出席するんですか?」
「考えて見れば、出るだろうな。先のチュンジョン媽媽は、淑嬪媽媽にすべてをお任せになっていた。だが慣習に従えば、チュンジョン媽媽が内命婦の首長なのだ。」
「淑嬪媽媽がチュンジョン媽媽になればよかったのに…。そうじゃありませんか?ナウリ。」
「その通りだ。だが、それは死んだ男の足を折るようなものだ。今頃言ってみてもどうなるというのだ?」
「死んだ男の足を折るですって?何て恐ろしいことを!」
「何だと?私がそんなことを言ったか?」
こうして儀式が始り、トンイがそこに現れます。
「媽媽、よくいらっしゃいました。」とチョン尚宮。
「あぁ、ご苦労であった。」
挨拶をする新しい内人達を前に、トンイは言います。
「これでもう、お前達は正式に宮中の内人になる。皆本当にご苦労だった。」
「どうぞお座りください。まもなく式を始めます。」とユ尚宮。
「式を始める?チュンジョン媽媽がまだいらしていないが…。」
「えっ?」と驚くユ尚宮に、トンイは、
「どういうことだ?もしや、中宮殿に知らせなかったのか?」と。
「それは…。先のチュンジョン媽媽は、いつもこのような行事の全てを淑嬪媽媽にお任せになっていましたので…。それで私達は…。」
「ユ尚宮!」
そこにインウォンが。
「これはまた奇異な…。内命婦の首長不在の内定式とは。おおかた、お前が内命婦の首長だと考えているようだが…。」
言葉を失うトンイ達。
インウォンは、トンイとチョン尚宮を前にこう言います。
「今日のことでお前の性格はもうわかった。」
「チュンジョン媽媽。これは監察府の過ちなのです。淑嬪媽媽は、そのようなお考えでは…。」
と言うチョン尚宮に、インウォンは、
「これはお前の口を出すことではない。お前も自分の過ちを償うことになるのだ。お前はもう下がってよろしい。」
「媽媽!」とチョン尚宮。
「下がれと言っているのだ!」
外に出て来たチョン尚宮に、
「ママニム、どうしてお一人なのですか?媽媽は?」とエジョン。
「どうやら大事になりそうだ。チュンジョン媽媽は大変な思い違いをなさっているようだ。」
トンイはインウォンに謝罪ます。
「申し訳ありませんでした、媽媽。これはすべて私の過ちです。どうか、彼らの責任は問わないでください。」
「そうだ。私はほんの数日ここにいただけだが、お前は多くの問題を起こしていたようだ。だから、私がその問題をひとつずつ修正していくことにする。そしてお前がここにいるのだから、お前に言っておきたいことがある。それは、ヨニングンの結婚のことだ。」
「チュンジョン媽媽、結婚とおっしゃったのですか?」
「そうだ、はっきりとそう言った。」
「ですが、媽媽。ヨニングンは、まだあまりにも幼過ぎます。」
「いや、十分に結婚できる年齢だ。そしてお前も知っているように、世子以外の王子が結婚したら、宮中を離れなければならない。」
「チュンジョン媽媽!恐れ入りますが、それはつまり…。」
「そうだ。私は、ヨニングンは結婚して宮中を去る年齢だと言っているのだ。」
第56話に続く!
同伊の怪我は大事に至らず、スクチョンはオクチョンの悪事を知ることになります。
そして彼女の罪を許すことはできないものの、自害をするよう最後の情けを…。
しかしそれを断るオクチョン。
レモン色の雲:第54回あらすじ
チャイミのベッドストーリー:54部-世子の涙、ヒビンの号泣、光ったイ・ソヨン
一人クムを捜すトンイは、倒れている内人達を見つけ驚きます。
そこに「オモニ!」というクムの声が。
クムに刀を振り下ろす男の前に走り出るトンイ。
男の刀は、彼女の背中を斬りつけます。
そこにチョンスが。
男達を倒し、トンイを抱き起こすチョンス。
「医官?を呼べ、早く!」
「ヨニングンは…。」とクムを案じながら、意識を失うトンイ。
ヨンギは、ハンとファンに命じます。
「宮中の門を全て閉めるのだ。誰ひとり通すてはならん!」
逃げるヒジェの男達。
「我々は兵に捕まるわけにはいかん。捕まったら、自害する必要がある。わかったな!」
ハン尚膳から話を聞いたスクチョン。
「そうか。それでは世子は書庫にいたのだな?」
「はい、殿下。もう安全な場所に移られました。」
安堵のため息をもらすスクチョン、そこに都承旨がやって来ます。
「殿下!すぐに寶慶堂(보경당:ポギョンダン)に行かねばなりません。淑嬪媽媽が危篤状態でございます。」
驚くスクチョン。
トンイの治療をする医官。
「出血が止まりません、ヨンガン!」と医女。
医官は、薬(早蓮草と黄蓮解毒湯)を用意するよう指示をします。
「どうして出血を止められないのですか?」と言うチョンスに、
「主要な欠陥が破裂されているのです。このまま出血が続くと、お命が危険にさらされるかもしれません。」と医師。
そこにスクチョンが。
「トンイ、トンイ!一体どうしたのだ?どうしてこんなことに?」
怒りに震えるチョンス。
不安そうに彼に声をかけるウンテクとポン尚宮に、チョンスは言います。
「私は、彼らにこの償いをさせてやります!」
薬を取りに咳を立つ医官。
スクチョンは、トンイに声をかけます。
「トンイ、聞こえるか?トンイ、辛抱してくれ、頼むから。」
一人宮殿で結果を待つオクチョン。
男達は門まで逃げて来ます。
門衛に指示を出す兵士。
「門を閉めて、誰も通さないようにしろ。わかったか?」
それを見た男達は、「ここはだめだ。Yongju門へ行こう!」と。
Yonju門の前では、閉ざされた門の前で「出してくれ!」と民衆が騒いでいます。
その中に紛れ込む男達。
「一体どうしたんですか?我々は火を消したのに、どうして出られないんですか?」と男。
「命令が下りるまで出られないと言ってるじゃないか。」
「出なくちゃいけないんだ。皆、出るぞ!」と民衆を煽る男。
そこに、「止まれ!」とチョンスが兵士達と。
「お前達は、生きて宮中を出るわけにはいかないんだ。寶慶堂を襲った男達だ!ひっ捕らえよ!」
「どういうことですか?ナウリ!私達が襲ったとは…。」
チョンスは、男に刀を向け、
「その靴だ!奴らは毛麻鞋(모마헤:モマヘ)を履いている。捕らえよ!」
抵抗する男達を倒すチョンスは、毒薬を飲もうとする男の胸倉を捕まえます。
「だめだ。誰がお前にこのことを命令したかを白状するまでは…。お前を死なせるわけにはいかんのだ。」
知らせを受けるヒジェ。
「失敗?失敗しただと?誰か捕まったのか?」
「男達は自害に失敗し、義禁府都事に捕まりました。」
言葉を失いよろめくヒジェ。
ヒジェはすぐにオクチョンのところに。
「媽媽、逃げなくてはなりません。」
「淑嬪はどうなったのです?死んだのですか?」
「媽媽、それどころではありません。」
「淑嬪とヨニングンはどうなったのです!?!」と叫び声をあげるオクチョン。
寶慶堂の前に詰めているウンテクのところに、ヨンギが。
「ヨンガン、捕まりましたか?」
「奴らの何人かを拘禁した。」とヨンギ。
「媽媽は?媽媽はどうなのです?」と言うチョンスに、俯くウンテク。
医官は、スクチョンに言います。
「出血は止まりました。もう状態は安定しています、殿下。」
目を開けたトンイに声をかけるスクチョン。
「トンイ!大丈夫か?私がわかるか?」
「殿下、ヨニングンは?ヨニングンは?」
エジョンと言い争うクム。
「どくのだ!寶慶堂へ行くのだ。オモニ様に会いに行くのだ!」
「媽媽、なりません。まだ危険です。淑嬪媽媽はきっとご無事です、ですから…。」
「オモニ様は、剣で刺されたのだ、エジョン。オモニ様は私のために…。だから、どいてくれ、エジョン!オモニに会いたいのだ、寶慶堂へ行きたいのだ!」
と泣き出すクム。そこにスクチョンが。
「アバ媽媽!オモニ様が意識を失って…。」
クムを固く抱き締めるスクチョン。
血の付いたトンイの韓服を手にしたスクチョンは、怒りを表しチョンスに訊ねます。
「その者達は、チャン・ヒジェの男だと言ったのか?都事!」
「はい、殿下。そのとおりでございます。」
「彼をここに連れて来い、都事。私の前に連れて来るのだ。」
起き上ったトンイは、ポン尚宮に言います。
「ヨニングンを連れて来てくれ。王子の無事を確認しなければならぬのだ。」と。
そこにクムが。
「オモニ!もう大丈夫ですか?回復されたのですか?」
「あぁ、オモニは大丈夫だ。どこも怪我はなかったか?」
「媽媽は、お怪我はありませんでした。」とエジョン。
「ありがとう、無事でいてくれてよかった。」とクムを抱き締めるトンイ。
ヒジェは、オクチョンに言います。
「媽媽、私が個人兵を準備しました。彼らと一緒にお発ちください。私が捕まれば、媽媽も無事ではいられません。ですから、私と一緒に…。」
「いいえ、私は行きません。オラボニ。」
「ヨンガン!ここにいる時間はありません。兵士達がもうまもなく到着します。」と部下。
「行ってください、オラボニ。お願いですからオラボニだけは生き残ってください。」
就善堂を包囲するよう命じるチョンス。
ヒジェは言います。
「私一人で逃げろと言うのですか?媽媽とオモニを置いて、私に一人で逃げろとおっしゃるのですか?」
「私はもう逃げられませんが、オラボニは生きていなければなりません。そして世子を守らなくてはならないのです!」
「いいえ!彼を守らなくてはならないのは、媽媽なのです。それができるのは媽媽だけなのです。私は、自分が生きて宮中を出られないことを知っています。私が個人兵を準備したのは、媽媽のためなのです。ですから、約束して下さい。私が全ての責任を取ります。媽媽は生きて、世子が王位を継ぐのを見届けてなくてはなりません。聞こえましたか?」
そのとき、「罪人チャン・ヒジェが中にいる!」とチョンスが入って来ます。
「罪人チャン・ヒジェを捕まえろ!」
「媽媽、私が話したことを覚えておいてください!」
連行されるヒジェ、泣き叫ぶオクチョンにチョンスは言います。
「媽媽は今、就善堂を出ることはできません。そしてすぐ戻ってまいります、媽媽。」
外に出たチョンスは、兵士達に指示を。
「この瞬間から、誰ひとり就善堂への出入りは許されぬ。」
ウンテクから、呪いの人形と木札を見せられるスクチョン。
「彼らは、チュンジョン媽媽を害するために、このような残虐な方法を用いたのです、殿下。淑嬪媽媽はこの事実をご存じでしたが、世子殿下のために、就善堂のヒビン媽媽にもう一度機会を与えようとなさったのです。ですがヒビン媽媽は、淑嬪媽媽とクム媽媽に危害を加えようとしたのです。」
「どうして…、どうしてこんなことができるのだ?」とスクチョン。
夜中に襲われた時のことを思い出すトンイ。
「もう許すことはできません、媽媽。もう媽媽を許すわけにはいきません!」
ジュシクは言います。
「こうなると思っていたんだ。あいつら!それで、媽媽は大丈夫なのか?私達の淑嬪媽媽は無事だったのだろう?」
「はい、幸い傷は深くなかったとか。すぐ回復されるそうです。」
「何て奴らだ!煮て皮を剥がれるべきだ。我々の淑嬪媽媽とクム媽媽をずっと追いかけてきて…。」
「その通りです。もう彼らはおしまいですよ。あとは、チャン・ヒジェもユン氏も首を刎ねられるだけです。」
「待て!どうして彼らだけなのだ?就善堂のヒビン媽媽は?」
「えっ?それじゃヒビン媽媽も罪に問われると思ってるんですか?」
「当たり前だ、当然だろう!おい、ヒビン媽媽が知らなかったと本当に思ってるのか?すべての命令を下したのは、ヒビン媽媽じゃないか。何だと?ヒビン媽媽だと?何がヒビン媽媽だ。チャン・オクチョンと呼んでやるわい。」
慌ててジュシクの口を押さえるヨンダル。
「おい、私を止めるな!私がチャン・オクチョンをこの手で殺してやる。チャン・オクチョンの奴!」
とヨンダルの首を絞めるジュシク。
「どうして私にこんなことをするんですか?」
「すまなかった。チャン・オクチョンはどこだ?」
「チャン・オクチョンには近づけませんよ!」
スクチョンは、重臣達を前にこう言います。
「昨夜宮中内で、悲惨な事件が起きた。それは、王位と朝廷を侮辱する想像を絶するものであった。この事件は、我が国家の平和と安定を揺るがすものである。私は決して許すわけにはいかぬ。淑嬪の私家に火を放ち、ヨニングンと淑嬪に危害を加えようとする企てもあった。そして、チュンジョン媽媽に害をもたらず呪いも行った。さらに最後にはその罪を隠すため、淑嬪とヨニングンを殺そうとしたのだ。誰がこれに関わっていようとも、私はその全ての者を一人残らず捜し出す。そしてそれが誰であろうと、その命をもってその罪を償わせるつもりだ。」
拷問を受けるチャン・ヒジェとユン氏夫人。
「媽媽は何もしらないのだ。何度いったらわかるのだ?私を切り刻むことはできるが、私からは何も聞き出せぬぞ。」と叫ぶヒジェ。
考え込むスクチョン。彼は、現れたヨンギに言います。
「就善堂を尋問してよい。」
オクチョンを迎えるチョンスは、「媽媽をお連れしろ。」と部下に。
「下がれ!心配いらぬ、義禁府都事、私は一人で行ける。」
ポン尚宮は、トンイにそのことを知らせます。
「今ヒビン媽媽が尋問室へ連行されました、媽媽。」
義禁府兵士の前を歩くオクチョンを見つめる宮中の人々。
拷問に耐えるヒジェ達に、ヨンギは言います。
「待て!無駄なことをするな。もう終わったのだ。もうヒビン媽媽の罪を隠すことはできぬ。」
「無駄なことをしているわけではない。お前達のような奴らが、ヒビン媽媽を破滅させることができると思っているのか?」とヒジェ。
「そうか?媽媽がここにやって来てもか?」とヨンギ。
そこにオクチョンが現れます。
拷問を受ける母と兄のもとに駆け寄るオクチョン。
「お前達!一体どうして媽媽をここに連れて来たりできるのだ?このままでは済まぬぞ!死から蘇ってお前達を殺してやる!」とヒジェ。
「黙れ!拷問の椅子の準備をせよ!」と言うヨンギに、叫ぶユン夫人。
「だめだ!私を先に殺してくれ!」
それを聞いたオクチョンは、言います。
「待て!私に触れるとは何事だ!私はこの国の嬪で世子の母親なのだ!その私を拷問するとは何事だ!」
「媽媽、ここは추국장(チュグkチャン:義禁府の尋問場・拷問場)です。媽媽は罪人としてここに連れて来られたのですぞ。」
「罪人?あぁ、罪人は私だ。全ての命令を下したのは私なのだ。チュンジョンが死ぬよう、呪いをかけるために巫女を連れて来たのも、淑嬪の私家に火を放ち、殺すよう命じたのも私だ。わかったか?チュンジョンと淑嬪とヨニングンを殺そうとしたのは、この私なのだ。これで満足か?だから、私を捕え、オラボニとオモニをすぐ釈放しろ。」
「いえ、私なのだ。火を放ち呪いをかけたのは私だ。」とヒジェ。ユン夫人も、
「いいえ、私だ!私が全部したのだ!」
「お前に必要なのは、私だけだ。だから、オラボニとオモニを釈放するのだ。早く!、早くしろ!」
そこに「ヒビン!」とスクチョンが。
「はい、殿下。これが殿下の捜しておられた真実なのです。再びチュンジョンになるために、私がチュンジョン媽媽を殺そうとしたのです。そして、世子を守るために、淑嬪とヨニングンを殺そうとしたのです。これで満足ですか?望んでいた答えが得られましたか?殿下。」
言葉を失うスクチョン。
彼はよろめくように外に出て行きます。
座り込み、泣き崩れるオクチョン。
世子は、オクチョンに会いに行きます。
「いけません、殿下。東宮殿にお戻りください。」と兵士。
「下がれ!オモニに会わねばならんのだ。」
現れた世子に驚くオクチョン。
「オモニ。どうか私を許して下さい、オモニ。全て私の責任なのです。オモニ様に起こったことは、私が悪いのです。」
「行きなさい、世子。ここはあなたの来るところではありません。わからないのですか?こんなことをしたら、あなたも無事ではいられません。」
「私も罰を受けます。オモニがこうなったのは、すべて私が悪いのです。」
「いいえ、そんなことを言ってはいけません。私を見て、世子。これを覚えておくのです。揺れ動いてはなりません。倒れてはいけないのです。少論の重臣達が、世子を守ってくれます。ですから、諦めてはなりません。世子は王位を継がねばならないのです。私が世子を守るために何をしたか覚えていますか?ですから、世子は生きなければなりません。生きて王になるらねばなりません。王になると約束してください。そして私の心の苦しみを和らげてくれることを、私と約束してください、世子。そうしてくれると約束してくれますね。」
世子を抱き締めるオクチョン。
トンイの話を聞いたクム。
「オモニ、それは本当に事実なのですか?ヒビン媽媽が、オモニと私を殺そうとしたのは本当に事実なのですか?どうしてですか?なぜそんなことをなさったのですか?どうして私をそんなに憎むのですか?私が何かいけないことをしたのですか?」
「いいえ、クム。」
「でも、私を憎んでいるのは事実ではありませんか。だから私を殺そうとしたのではないのですか?東宮殿の内人達が言っていました。私が、世子殿下の地位を狙っていると。だから、媽媽が私を憎んでいると…。でも、それは事実ではありません。私は一度もそんなことを考えたことなどないのです、オモニ。どうしてそんなことを考えるのかわらないんです。オモニ様は私に、世子殿下のよい弟になるようにと言いました。でも、ヒビン媽媽はどうして…?」
そう言って涙ぐむクムに、かける言葉もなくただ抱き締めるトンイ。
クムは自分の宮殿に戻り、また涙します。
決意を固め、宮殿を出るトンイ。
「媽媽。そのようなお身体でお出かけになってはいけません。」とポン尚宮。
「媽媽とお話せねばならぬ。媽媽と話して、何とおっしゃるのかを聞かねばならぬ。ヒビン様は、ヨニングンと私を殺そうとしたのだ。どうしてそうしなければならないと考えられたのか、私はその理由を聞かねばならぬのだ、ポン尚宮。」
トンイは、オクチョンを訪ねます。
「お前が私のところに現れるとは驚きだ。私がどれほど惨めな状態かを自分の目で確かめに来たのか?そうでなければ、私がお前の前に跪き、許しを請うことを期待していたのか?」
「はい、そうです、媽媽。あなたは、私とヨニングンを殺そうとしました。どうしてこんなことをなさったのか、その理由を聞かせていただく必要があるのです。私に許しを請いて貰わなければならないのです。どうしてなのですか?ヨニングンは決して世子殿下を脅かすことはないとお話ししたはずです。私の望みは、世子殿下とヨニングンがよい兄弟でいられることだけだとお話ししたはずです。それが私の心からの願いでした。どうしてそれを信じられなかったのですか?」
「本当にその理由を聞く必要があるのか?それは、私が政治を信用していないからだ。宮中を信用していないからそうしたのだ。わかるか?お前の言葉など何の意味もないのだ。権力を欲する男達は、世子に対してヨニングンを利用する。そしてお前も最後には、それに屈するのだ。私に許しを請いて欲しいだと?何一つ、私は間違いなどしておらぬ。わかるか?ただひとつ残念なのは、お前とヨニングンを自分の手で殺せなかったことだ。それだけだ。」
ため息をつくトンイ。
「結局、こんなふうに終わるのですね。こうなるしかなかったのですね。何とかできたはずなのに…。私に会いに来られた時、あなたは運命について話されました。私達のどちらかが光となり、もう一方は影になる、それが運命だと…。ですが、それは違います、媽媽。そのような運命などないのです。これはあなたご自身が選ばれたことなのです。」
「何だと?」
「ですから、政治や宮中、運命やその他のもののせいにしないでください、媽媽。実は、このように終わる必要などなかったのです。もし媽媽が違う選択さえしていれば…。ですが、今ようやくわかりました。どうやっても、これは救う方法などなかったということが。」
トンイの言葉を思い出すオクチョン。
「それは違います、媽媽。そのような運命などないのです。これはあなたご自身が選ばれたことなのです。」
苦しげに部屋に戻るトンイ。
テプンの家。
「父さん、それはチャン・ヒジェとヒビン媽媽が終わりだということですか?」とホヤン。
「そうだ。これがいわゆる業というものなのだ。」
「こうなって、私は神の存在を信じますよ。」
「だから、いつも行いをよくし、神を畏れなければ
ならんのだ。」
「…、でも何か妙な感じです。皆が死んでいくじゃないですか。」
「そうだ。私もそれはいい気分ではない。」
「あっ、父さん。何の臭いですか?」
「何か、肉を焼く臭いのようだな。」
外で料理の支度を仕切るパク夫人。
「オモニ、何をしているのですか?」とホヤン。
「祝宴の準備ですよ。えぇ、ユン氏とヒビンが処刑されるんじゃありませんか。だから、皆と喜びを分かち合いたいのですよ。」
「おい、人が死ぬと言うのに…。それはいいことではないぞ。」
「何がよくないんでうすか?私は、あの人達が処刑されるまで、毎日祝宴を開きますからね。そしてその日は、一番前で見届けるつもりです。」
あきれるテプンとホヤン。
「ホヤン、お前の母親は、このことでばちがあたると思うぞ。恐ろしや、行こう。」とテプン。
ユ尚宮は、チョン尚宮に訊ねます。
「ヒビン媽媽への処罰はまだ下されないのですか?」
「殿下はまだご決断なさっていないようだ。」
「えっ?どうしてですか?当然死罪にするべきではないのですか?」とシビ。
「その通りです。彼女の罪は大きいものです。もしその全てを数えたら、彼女は10回、いえ20回処刑されるべきではありませんか?」とイングム。
「ヒビン媽媽は、世子殿下の母上なのだ。おそらく殿下はそのことでお辛い時をお過ごしのはずだ。」
「ええ、宮中では、まだYonsan殿下に起きたことを覚えております。」とユ尚宮。
「もし母親が処刑されたら、世子殿下に大きな傷を残すことになります。」とチョンイム。
納得するシビとイングム。
「世子殿下は、もう3日も悔い改めの儀式をなさっていると聞きました。お身体が弱いのに、健康を損なわれるのではと心配です。」とユ尚宮。
仁政殿の前に座り込む世子。
「アバ媽媽!どうかオモニにお慈悲をお与えください。全ては私の責任なのです。お願いですから、オモニの命を助けてください。アバ媽媽、どうかご慈悲を…。」
「世子は、まだ大殿の外にいるのか?」とスクチョンは、ハン尚膳に。
「はい、殿下。3日も食事を断っています。」
世子の姿を見つめるクムとウナク。
「師匠様、殿下が倒れられたらどうしたらいいのですか?」
「私も心配です、媽媽。」
夜になっても大殿の前から動こうとしない世子。そしてとうとう倒れてしまいます。
スクチョンは、都承旨に言います。
「行って、私が言ったことを伝えよ。彼に、ヒビンを許すことはできないと伝えるのだ、だから…。」
そこにハン尚膳が世子が倒れたことを知らせに来ます。
世子を診察する御医。
現れたスクチョンは、「世子!しっかりするのだ!」と。
「アバ媽媽、どうかオモニを、オモニを!」と。
知らせを受けるトンイ。
「何?世子殿下が倒れられただと?それで、ご容体は?危ないご様子なのか?」
「幸い、最悪の状態は脱したようです。」
御医は、スクチョンに言います。
「もうご心配はいりません、殿下。世子殿下は、気力を回復なさいました。」
「よくやった、ご苦労だった。」
世子を気遣うスクチョン。
スクチョンは、意識を取り戻した世子に言います。
「お前には、何と言えばいいのかわからぬ。これがどれほどお前にとって辛いかは、私にもわかっておる。それ故に、このことは避けたかったのだ。だが世子、お前の母ヒビンは、お前の母ヒビンは、許されざる罪を犯したのだ。彼女のしたことは、許されることではない。」
世子を抱き締めるスクチョン。
「すまない、世子。どうしようもないのだ、許してくれ。世子!」
スクチョンは、オクチョンのところへ。
「最初は、お前に腹を立てていた。どうしてこのようなことができたのか、理解できなかったのだ。世子と私に、どうしてこんなことをしたのかと…。お前に怒りを感じていた。だが、お前だけが悪いのではないと気付いたのだ。お前はかつて、明るく輝いていた。この責任は私にもあるのだ。だが、全てを許すことはできぬ。お前は、あまりにもやり過ぎてしまったのだ。だから、お前は自害せねばならぬ。これがお前に対し、私のできる最後のことなのだ。」
「自害ですと?いいえ、殿下。そんなことはできません。私は、殿下の手で死にます。どうか私に毒による死を下してください。」
「ヒビン、それは…。」
「私は、何も後悔はありません。たとえ、私達が後戻りしたとしても、同じことを選択するでしょう。ですが、ひとつだけ後悔していることがあります。殿下を心から愛したことです。そうするべきではなかったのです。そうしなければ、私はここまですることもなく、淑嬪をここまで憎むこともなかったのです。ですから、私の犯した過ちをひとつだけ償わせてください。私に死罪を述べてください。苦しみを避けずに、私に死罪をお与えください。少なくとも、それだけはおできになるのではありませんか?何年も前に、ほんの少しでも私を愛したことがおありでしたら…、殿下はそのくらいはなさるべきです。」
返す言葉のないスクチョン。
都承旨はスクチョンに言います。
「殿下。重臣達が大殿に集まっております。」
チョンスはヨンギに言います。
「ヨンガン。お聞きになりましたか?殿下が、採決を下すそうです。」
トンイも、エジョンから知らせを聞きます。
重臣達を前にスクチョンは言います。
「今日、私は王位を脅かそうとした罪人達への罪を申し渡す。チャン・ヒジェとユン夫人は、国家に対する許し難い罪を犯した。そして、チュンジョンの死を呪うための儀式、淑嬪への殺害までも試みた。どうして彼らを許すことなどできようか。それゆえ、私はこれらのすべてに関わったチャン・ヒジェとその母に、死罪と追放の命を下す。さらに、就善堂ヒビン・チャン氏、世子の母としての責務を怠り、この全ての罪を操ったのだ。彼女の罪もまた、許されるべきものではない。それゆえ、ヒビン・チャン氏に対し、同じ判定を下すものとし、この10月8日、彼女の称号をはく奪し、毒によって処刑されるものとする。」
連行されるチョ尚宮達。
知らせを聞いたトンイは、「毒ですか?」と。
「はい、媽媽。我々監察府は、今その命を受けました。」とチョン尚宮。
「いつです?いつ、それは実行されるのですか?」と言うトンイに、
「今日です、媽媽。」とチョンイム。
「殿下は、今日ヒビンの刑を執行するようお命じになりました。」とチョン尚宮。
驚くトンイ。
第55話に続く!
視聴率はまた下降線を!
とうとう20%前半まで下がってしまいました。
ニュースもとっても少なくて^^
過去2回の展開の影響だとしたら、今夜はまた盛り返すかもしれません。
さて、53話・・・、当然のことながら^^字幕なしでの視聴。
なかなか緊迫感もあり、面白かったですね。
クムを助けるためにスクチョンに自分の病を告白する世子。
あの母、そしてあの叔父が周囲にいたにもかかわらず、
どうしてこんないい子に育ったのでしょうか。
そして怒りを抑えきれないスクチョンは、
とうとうオクチョンを問い詰め、すがりつく彼女を突き放します。
これはもう仕方のないこと…。
テプン親子の活躍(^^)で、オクチョン母も追い詰められることに。
いよいよ切羽詰まったヒジェはとんでもないことを思い付いて。
悪あがきもここまでくれば、もう口があんぐりですよ^^
結局はどうオクチョンを断罪することになるのかが気になるところ。
世子の病を隠していたことだけでは、死罪にはならないでしょう。
チュンジョンの死に関与したことを明かさないことには…、
と思うのですが、それはトンイ次第。
史実ではトンイがスクチョンに告げ口するようなのですが、
ビョンフン監督のシナリオはいかに!?!
しかし、いくら東宮殿が火事だとしても、
一番危険なクムを一人放置するのは、あり得ませんね。
そしてそこにトンイもまた一人で戻ってくるとは…。
なぁんて、少々意地の悪いことを言ってみたりして^^
とにかく今夜はとても楽しみです!
53話の復習はこちらで!
レモン色の雲:第53回あらすじ
チャイミのベッドストーリー:第53部-誰がヒビンを悪魔にしたのか
9/16の記事ですが、クム役イ・ヒョンソクくんのインタビュー!
「ジャイアント」押した同伊息子イ・ヒョンソクくん!
オクチョンは言います。
「お前がどうしてここに来たのだ?聞こえなかったのか?淑嬪。お前がどうして東宮殿にやって来たのだ?」
「世子殿下は、ご自分の病のことをご存じだったんですか?媽媽。世子殿下は、ご自分の病に気付いていらっしゃったのかとお訊ねしているのです。」
「お前がどうしてそれを?答えるのだ、淑嬪。お前がどうして知っているのだ?」とオクチョン。
「殿下が今朝早く私に会いに来られたのです。殿下は世子の資格はないと、そしてヨニングンを傷つけられることはないとおっしゃったのです。それが何を意味するとお思いですか?媽媽。」
言葉を失うオクチョン。
スクチョンは世子に訊ねます。
「世子。それは一体どういうことなのだ?病を隠していたとは…。」
トンイの話を聞いたオクチョン。
「お願いです、世子。そんなことをしてはなりません。絶対に、絶対にいけません!」
トンイも、「大殿に行かれたとは、もしやこのことを殿下にお話しに行かれたと…?」
「媽媽。それでは、私達はこれからどうすれば?」とポン尚宮。
スクチョンと話を終えた世子のところにオクチョンが。
何も言わず俯く世子。
「世子。殿下にお話しになったのですか?」
「最初から、してはならないことだったのです。母上。このような大きな問題を隠すべきではなかったのです。私にも、アバ媽媽にも…。」
「世子!それでは、全てを話してしまったのですか?殿下に?そんな…。どうして?世子、どうしてこんなことをなさったのです?誰のために私がこうしたと?世子のためだったのですよ。世子を守りためだったのです。それなのに、すべてを殿下に話してしまうなんて…。私が命がけで守って来た秘密を自分の口で話してしまうなんて…。」
「私のためだなんて言わないでください。母上が私のことを本当に思っていたなら、こんなことをするべきではなかったのです。私は、この国の世子なのです。君主になれないなどと一度も考えたことはありませんでした。アバ媽媽のように民のことを考え、この国をより強くし、良い王になりたかったのです。そんな王に本当になりたかったのです。ですが母上は、私を王室と朝廷に対する罪人にしようとしたのです。私を愚かな王にさせようとしていたのです。」
世子の言葉によろめくオクチョン。
「終わってしまった。すべてが終わったのだ。」
呆然と世子の言葉を考えるスクチョン。
<回想シーン>
「世子、それは一体どういうことだ?痿症?お前がどうして…、どうしてそんなことに?」
「違います、突然ではないのです。アバ媽媽。もう何ヶ月にも渡って、私はこの病の治療のための薬を飲んできたのです。私は子孫を作ることができない可能性があるのです、アバ媽媽。これが私の持つ病なのです。それなのに、誰もこのことを知らなかったのは、その薬が宮中の外から持ち込まれたものだったからなのです。アバ媽媽…、母上が一人こっそりと薬を外から持ち込んだ理由は、ただ恐れていたからなのです。私のことだけを案じていたからなのです。ですから、どうか母上を許して下さい。母上が、このことをずっと隠しているつもりがなかったことは間違いありません。」
スクチョンは呟きます。
「痿症?世子がどうして…?」
チョンスはウンテクに「それは本当ですか?殿下が全てを知られたと言うのは。」と。
「急いで中に入ろう。内禁衛将もお待ちだ。」とウンテク。
トンイはヨンギに言います。
「世子殿下は、そのすべてをご存じでした。それで私に会いに来られたのです。私はあまりにも迂闊でした。私が、私が殿下をお止めするべきだったのです。」
「どうしてこれが媽媽の責任でありましょうか。このような問題を起こした原因は、就善堂にあるのです。」
そこにチョンスとウンテクが。
怒りを抑えきれないスクチョン。
ヒジェは、オクチョンに言います。
「媽媽、このようなことに負けてはなりません。ここまで頑張って来られたではありませんか。ここまで来るのに多くのことに耐えて来られたではありませんか。」
「これ以上続けて行く理由がありません、オラボニ。世子が、世子が負けてしまったというのに、他に何の意味があるというのです?」
「媽媽、そうではありません。殿下は他の誰よりも世子殿下を愛しておられるのです。ですから、世子殿下を見捨てるはずがありません。」
「いいえ、そうではないのです。オラボニ。殿下は君主なのです。父としての義務を果たす前に、まず君主としての義務を果たさねばならないのです。」
そこにスクチョンがやって来ます。
外に出て、「これをどうしたらいいのだ?」とヒジェ。
スクチョンは、オクチョンに言います。
「ことの全てはいつから始まったのだ?世子の症状はいつから悪くなったのだ?」
「1年前、世子が高熱を出したときからです。」
「1年前だと?そんな前から、お前はそれを、父親の君主である私に隠してきたと言うのか?ヒビン、お前は自分が何をしたかわかっているのか?」
「私が治してみせます、殿下。本当に世子の病を治してみせます!殿下、ですからどうかしばらく時間を頂けませんか。清からの薬を宮中の外から持ち込んで使っています。それを使えば、この病を治すことができるのです。ですからお願いです。私に世子を治す機会をお与えください、殿下。」
「止めろ、止めるのだ、ヒビン。清の薬を使うだと?私家がそれをこっそり買ったのか?そして、王室の最高の御医を拒否し、ナム医官を特別に使ったのか?世子は国本(국본:ククポン)なのだぞ。それをヒビン、どうしてお前が自分の判断など用いることができるというのだ?国本の病をどうしてお前が隠したりなどできるというのだ?それが世子の病を悪化させるとは思わんのか?どうしてそんなことがわからぬのだ?お前の行動のせいで、世子の病が悪化したのだ。」
「世子の病は完全に治すことができるのです。今しばらくお時間を機会をお与えください、殿下。」
「何だと?もう既にこうなってしまって、お前はまだ機会を与えよと申すのか?こんどは何をするつもりなのだ?君主を裏切り、王室と朝廷を嘲笑したのだ。世子まで傷つけ、まだ機会が欲しいだと?!それで私が機会を与えたら、お前は世子を脅かすヨニングンに対し行動を起こし、計画どうり彼を追い出すつもりなのか?私が知らないと思っているのか?ヨニングンに害を及ぼそうとしている重臣達の背後にいるのが誰かを、私が本当に知らぬと思っているのか?すべてはこのことのためだったのだ。世子の病の…。それでお前は、幼い無垢なヨニングンをあのような状況に追い詰めたのだ。」
そう言い捨てて部屋を出て行くスクチョンに追いすがるオクチョン。
「殿下、お願いでございます。私に何があろうと恐れはしません。どのような罪も喜んで受けます。ですが、世子はいけません、殿下。お願いですから、世子にはお慈悲を!殿下。お願いですから、世子の今の地位をそのままにしてあげてください、殿下。」
「本当にそう望んでいるのなら、このようなことをするべきではなかったのだ。何があろうと、このような結果をもたらしたのは、ヒビン、お前の責任であることを覚えておくのだ。」
泣き崩れるオクチョン。
ミン軍官から報告を受けるムヨル。
「そうか、便殿の外にいた重臣達は引きさがったのか?」
「はい、ヨンガン。なぜ突然引きさがったのかはわかりません。」
ヒジェに問いただす少論派の長。
「引きさがった方がいいというが、理由は何だ?」
「後ほど詳細はご説明いたします。今のところは私の支持に従ってください、大監。」
「おい、お前!」
「今この場で殿下に怒りを向けている余裕はないと申し上げたのです。」
「何事が起ったのか?」
「いいえ、問題などあるものですか。ただ今はその時期ではないと感じたのです。ですからどうか少しお待ちください。それでは…。」と立ち去るヒジェ。
「大監。一体これはどういうことでしょうか。」と訝しがる男達。
そこにムヨルが現れます。
「何が起こっているのかお知りになりたいですか?大監。私がすべてをご説明して差し上げましょう。」
世子のところに走って来たクム。
「ヒョンニム!ご存じでしたか?重臣達が全員立ち去りました。もう誰も私を罰しようと要求する者はおりません。」
「そうか。」
「はい。どうしてかはわかりませんが、便殿の重臣達が殿下への要求を取り下げたのです。もう皆私のことを許してくれたようです、ヒョンニム。」
「本当によかった、ヨニングン。」と世子。
一人考え込むスクチョンのところにトンイが。
「私は世子殿下のご病気を知っていたにもかかわらず、私も殿下にそのことを話すことができませんでした。どうかお許しください、殿下。」
「お前は、世子とヨニングンのためにそうしたのであろう。お前が悪いのではない。もし誰かを責めなければならないのなら、それは私自身。私が悪い父親で、悪い君主だからだ。どうすればいいのだろうか。世子がこのような深刻な病を抱えていると知っても、それを無視するべきなのだろうか。心の中では、何があろうと彼を守りたいのだ。だがいつかは、誰もが真実を知ることになる。たとえ彼が王位を継いだとしても、結局世子は…。」
スクチョンの言葉を思い出すオクチョン。
「これが世子の病を悪化させたことがわからぬのか?お前は私が知らぬと思っているのか?ヨニングンを傷つけようとする重臣達を背後で操っているのが誰かを…。お前は本当に私が知らぬと思っているのか?」
「父さん、これで元に戻れますね?」とテプンに言うホヤン。
そこに軍官が。
「ヨンガン、またいらしたのですか?我々は今調査中なのです。ですからどうか…。」
「今日は、お前にそれを言うために来たのではない。お前達の仕事を減らしてあげようとやって来たのだ。1ヶ月の間お前達は頑張ってもその人物を見つけられなかったが、我々はとうとう奴らを見つけたのだ。」
「それは本当ですか?」
「そう言ったじゃないか。私は彼らに血を流させるのだ。もう奴らは死ぬ寸前なのだ。」とホヤン。
「えっ?そんなことはしてはいけませんよ。」という兵士にテプンは、
「息子はあの事件のせいで正気ではないのだ。とにかくそんなことはどうでもいい。今日我々は、とても重要な情報を報告にやって来たのだ。あの悪党ども、あいつらが私の息子をこんなふうにしたのだ。奴らは本当に死ぬべきじゃないのか。」
「それで、それは誰なのですか?」
軍官に耳打ちするテプン。
「それは本当ですか?本当にあの夫人が?」と驚く軍官。
笑いながら帰るテプンとホヤン。
「父さん、今度はチャン・ヒジェと夫人もおしまいですよね?」
「もちろんだ。あいつらのせいで受けた全ての屈辱を思うと、彼らを汁に煮立てて飲んだとしても、まだ気持ちがおさまらんわい。」
「父さん、今日から私はチャン・ヒジェが罰を受ける日を数えて待つことにしますよ。これでやっと生き返ったような気がします。」
とパク夫人を捜す二人。
一方パク夫人は、ユン夫人のところへ。
「ユンさん、ユンさん!この古狸がどこに隠れているの?今日はあなたの顔を見なくちゃいけないのよ。まだ出て来ないつもりなの?今日こそあなたに教えてやるわ。」
「一体何事なの?」と現れるユン夫人。
「あぁ、ユンさん。とうとう会えたわ。」
「何ですって?ユンさん?」
「そうよ!ユンさん!」
「お前は死にたいのか?ここに来てこんな騒ぎを起こして…。」
「あんたのせいで、私の息子は死にかけたのよ。私があんたを恐れているとでも思ってるの?」
「くだらないことを言っていないで、さっさと帰らぬか。何をしている。すぐにこの女を連れ出すのだ。」
「いいえ、今日は簡単には帰らないわよ!今日こそ決着を付けるんだから、ユンさん!」
とユン夫人に掴みかかるパク夫人。
「気でも狂ったのか?何をしているのだ?さっさとこの女を連れ出さぬか。」
必死でパク夫人を止める下女。
「放して!私の息子を殺そうとした人間に、私が情けをかけるとでも思ってるの?」
「い、一体何をくだらないことを言うのだ。」
「何ですって?くだらない?この期に及んでも、まだそれを否定するの?淑嬪媽媽の私家に火を放っただけじゃ足りなくて、その罪を私の息子に着せようとしたのは誰なの?ふん!この一家がどうなるかも時間の問題ね。今、義禁府と捕盗庁がこの問題を調査しているのよ。あんたを捕まえるためにね!」
驚くユン夫人と下女。
「何だと?今何と言ったのだ?」
「私の息子を泣かせて…。今度はあんたが血の涙を流すのよ、ユンさん!」
言葉が出ないユン夫人。
トンイはスクチョンの言葉を考えます。
「どうしたらいいのかわからぬのだ。だが、いつかは誰もが真実を知ることになる。たとえ王位を継いだとしても、結局世子は…。」
そこにクムが入って来ます。
「オモニ!聞きましたか?重臣達はもう私を罰するよう要求しないのです。ヒョンニム様、いえ世子殿下がそうしてくださったのです。」
「そうだ、クム。母もそのことは知っている。」
「私はこれからは、世子殿下がこんなお辛い目に遭わせるようなことはしません。本当です。オモニと約束します。」と嬉しそうなクム。
「そうか。」とため息をつくトンイ。
そこにウンテクが。
「媽媽。宮中の様子が尋常ではありません。」
「何があったのです?」
世子を見ながら、あれこれ噂をする内人達。
「何?世子殿下が、不治の病だと?」とジュシク。
「はい。どんな病かは知りませんが、東宮殿で国葬が行われるのもそう先のことではないという噂です。」
「こいつ。チュンジョン媽媽が亡くなられてまだ間もないというのに…。」
「私もそう思いますよ。ですが、どうも単なる噂ではないようなんです。それに、殿下は最近あまりお元気がないようですし、だから就善堂はクム媽媽を宮中から追い出したいんじゃないんですか。」
「一体どういう病なんだ?」
ウンテクの話を聞いたトンイは、
「それでは、もう宮中に世子殿下の病に関する噂が広まっているのですか?」
「はい、その通りです、媽媽。」
「ですが、一体どうしてそのようなことが?内人から広まるはずはありません。それじゃ誰が?」
ハッと何かに気付くトンイ。
「まさか彼が…。」
トンイは、ムヨルのところへ。
「ヨンガンが噂を広めたのですか?私は世子殿下の病のことを訊ねているのです。宮中にそれを流したのは、ヨンガンなのでしょう。」
「世子殿下のことは、単に個人の問題ではありません。これはわが国の王室の将来に関わることなのです、媽媽。隠しておくことのできるような問題ではないのです。」
「国の将来?自分の身を守るための言いわけに、王室の将来を使わないでください。あなたをこのままにはしておけません。あなたは私に医女を利用させようとしましたね。そうです、私はいつでもそうできることを覚えておきなさい、あの医女を利用しようとしたこと、兵曹参判が世子殿下を脅かすために私に寄越した医女のことを殿下にお知らせできるのです。わかりましたか?」
出て来たトンイは、ウンテクに言います。
「噂の広がるのを止めなければなりません。チョン尚宮とナム尚宮を連れて来てくれ。まず、内人達にこの話を止めさせるのだ。」
トンイに言われて「はい」とポン尚宮。
ウンテクは言います。
「こんなことを言うべきではありませんが、媽媽はこれまで世子殿下のためにいろいろと悩んでこられました。もうここまでする必要はないのではありませんか?」
「私は、この国の後宮なのです。これは、ヨニングンの無事を案じるからでも、世子殿下が哀れだからでもなく、もし国本が揺れ動いたら、王室も朝廷も破滅するのです。この全てを守ることが私の責務なのです。」
少論派長と話をするオクチョンは、
「世子に関する噂ですか?」
「世子殿下が病のために王位を継ぐことができないという噂です。それは本当ですか?媽媽。」
「いいえ、違います。そんなことがあるはずがないではありませんか。」
「それが事実ではないとおっしゃるのですか?これは、隠しておけるようなことではないのですぞ!媽媽。」
「隠しているですと?私ははっきりと申し上げました。世子には何も問題がないと。」
「これは、我が国の王室の将来に関わることです。もしこれが事実なら、我々はもはや世子殿下を支えていくわけにはいきません。」
「大監、これは世子を脅かそうとする寶慶堂(보경당:ポギョンダン)の策略です。わからぬのですか?兵曹参判チャン・ムヨルは我々を裏切り、淑嬪の側へ行ったのです。それなのに、どうして彼の言葉を信じて、私に背を向けたりできるのですか?大監!」
そこにヒジェが駆け込んで来ます、彼の様子を見た首長は、
「どうやら何か問題が起きたようですな、媽媽。先の計画を立てやすいように、私は失礼します。」
と、引きとめるオクチョンに構わず出て行きます。
オクチョンは、ヒジェに言います。
「少論派が私達に背を向けようとしています。もし彼らが私達から離れたら、もうどうすることもできません。」
「媽媽、少論派など今問題ではありません。今度は母上が大変なのです。」
「母上が?どうしてです?何のために?」
頭を抱えるユン夫人に、声をかける男達。
「急ぎましょう。兵士が来る前にここを出なければなりません。」
「どこへ?どこへ行けるというのだ?」と泣き崩れる夫人。
ヒジェの話に驚くオクチョン。
「えっ?捕庁が母上を逮捕するのですか?」
「はい。淑嬪の私家での火災の背後に彼女がいたことを調べ出したのです。今頃、逮捕の命令が実行されているはずです。」
船着き場にやって来たユン夫人。
「向こう岸で、我々の仲間が待っています。」
「マニム、急がなくてはなりません。」
「だが、もし私がこのように行ってしまったら、ヒビン媽媽はどうなるのだ?媽媽が責めを受けたらどうするのだ?」とユン夫人。
「マニムが捕まれば、もう本当にどうにもなりません。何をしておる。早くマニムをお連れしろ。行きましょう、マニム。急いで!」
そこに兵士が現れます。
抵抗する男達を倒したチョンスは、刀を抜き、
「命が惜しければ、その綱を放せ。」
「そこをどくのだ!私が誰かわかっているのか?」とユン夫人。
「淑嬪媽媽とクム媽媽を殺害しようとした罪人だ。早く捕らえよ!」
連行されるユン夫人達。
シビの話を聞いたユ尚宮。
「それでは、先日の淑嬪媽媽の私家の火災の黒幕は、ユン夫人だと言うのか?」
「はい、そのとおりです、ママニム。」
「逃げようとしているところを逮捕されたんです。」とイングム。
「行きましょう。淑嬪媽媽にお会いせねば…。」とチョン尚宮。
連行されて来たユン夫人のところに駆け付けるオクチョン。
彼女はチョンスに言います。
「一体お前達は何をしているのだ?これは私の母上だ。世子殿下の祖母なのだぞ!」
「その前に、罪人なのです。媽媽!」
「何だと?黙れ!罪人だと?誰が罪人だと言っているのだ?さっさと縄を解くのだ。今すぐ彼女を自由にするのだ!」
とユン夫人にすがりつくオクチョンを引き放す兵士達。
その場に座り込むオクチョン。
トンイは、チョン尚宮から話を聞きます。
「私とヨニングンを殺そうとしたのは、ヒビン媽媽の母親だったと言うのか?」
「全てが明るみになったのです。もうその罪を否定するものは何もありません。」とチョンイム。
ヨンギは、スクチョンに報告します。
「捕盗庁は、既に府夫人の男達からの自白を受けています。後は府夫人の自白を待つだけです。」
「淑嬪とヨニングンを殺そうとしたのは、世子の祖母だというのか?世子はこのことを知っているのか?」
一人部屋で涙する世子のところへやって来たスクチョン。
「アバ媽媽、これはすべて私のせいなのです。母も祖母も、すべて私のためにしたのです。」
「いや、そうではない、世子。これはお前のせいじゃないんだ。」
「アバ媽媽、この罪を私はどうすればいいのですか?この罪をどう洗い流せばいいのですか?」
世子を抱き締めるスクチョン。
必死で男達を説得しようとするヒジェ。
「これは、寶慶堂(보경당:ポギョンダン)の陰謀なのです。世子とヒビン媽媽を破滅させようとしているのです。このままでは、ヒビン媽媽が無事ではいられません。ですからお願いです。ヒビン媽媽を守ってあげてください。」
「だが、ほとんどの少論派の重臣達が既に彼女に背を向けたと聞いています。わずかな者しか残っていないときに、南人派に他に何ができましょうか。」
「それでは、自分達の命を守るために、これまであなた方を保護してきた媽媽を裏切ると言うのですか?」
「裏切るですと?こんなことになったのは、府夫人とヒビン媽媽のせいなのですぞ!」
そう言う男に掴みかかるヒジェ。
「何だと?誰がお前をその地位にしてやったのかわかっているのか?それをそんなことを…!」
そしていきなり刀を抜くヒジェ。
「どうする?今ここで死ぬか、それともすべての命をかけるか?」
「気が狂ったのか?」と男達。
「そうだ、気が狂ったのだ。だから、私がお前達全員を殺す前に、ヒビン媽媽を助ける方法を考えろ。」
慌ててヒジェを止めるヒジェの部下達。
着替えて出かけようとするオクチョンを止めるチョ尚宮。
「媽媽。誰もが就善堂を見張っています。今こうして出かけるのは危険です。」
「もう既に危機に瀕しているのだ。私は少論派の支持を取り戻さねばならぬ。彼らなしでは、もうおしまいなのだ。」
少論派首長の家に向かうオクチョン。外で待たされるオクチョンに、
「媽媽をこのように待たせるなんて、どうしてそんな無礼なことを?」とヨンソン。
「騒ぎを起こすでない。今は、もし彼らが私の心臓を要求するなら、私は彼らに渡さねばならぬのだ。」
そこに男が。
「申し訳ありませんが、大監はもうお休みになられています。」
「おい、これは緊急事態なのだ。今会わねばならぬのだ。もう一度伝えてくれ。」とオクチョン。
「申し訳ありません、媽媽。大監様は、もう遅い、すべては終わったのだだけ伝えてくれと私にお申し付けになりました。」
「どうしてこのようなことを…?」とよろよろと外に出るオクチョン。
チョン尚宮は、監察府内人に言います。
「義禁府は、ユン夫人の取り調べを始めるよう御命を受けた。それと同時に、監察府も関係者の捜査を始めることになる。」
「ママニム、関係者と言いますと…。」とユ尚宮。
「まず、就善堂の内人から始めます。」とチョンイム。
就善堂に向かうユ尚宮達。
「彼らを監察府に連れて行くのだ!」とユ尚宮。
内人達は、チョ尚宮とヨンソンを連行します。
チョンスの命令で、ユン夫人を連れ出す兵士達。
ヒジェは、オクチョンに言います。
「媽媽、気を強く持たねばなりません。何があろうと生き残らねばならないのです。」
「生き残ってどうなるのですか?私は世子の将来をだめにして、自分の母親も連れて行かれました。それで、何のために生き延びなければならないのですか?」
「復讐のためです!このすべてを彼らに仕返しするためです!復讐のために生きなければならないのです。」
「復讐?そう、そうです。私はまだ復讐が終わっていません。オラボニ、私は自分の物を全て奪われるわけには絶対にいかないのです。私がそうなるのなら、淑嬪もそうならねばならないのです。もし世子が破滅するなら、淑嬪の息子もそうならなければなりません。」
ヨロヨロと就善堂を出て行くヒジェ。
トンイは、「捜査は始ったのか?」とポン尚宮に訊ねます。
「はい、媽媽。」とポン尚宮。
そこへチョンスが。
「オラボニ!これは一体どういうことですか?なぜ寶慶堂(보경당:ポギョンダン)に兵士が?」
チョンスの話を聞いたトンイは、
「私とヨニングンが危険にさらされていると言うのですか?」
「就善堂は追い詰められています。次に何をしでかすのかわからないのです。」
部屋で考えるオクチョン。
「オモニ!私は、オモニに後悔を残したまま行かせるわけにはいきません。淑嬪とヨニングンの首をオモニに見せてあげます。」
燈燭房(등촉방:トンチョクバン)から油を盗み出す男達。
「これで十分か?」と男。
「はい。これは燈燭房で最強の油です。」
「急いで、移動しろ。」
ヒジェの様子を窺うハンとファン。
そこに男がヒジェに「全ての準備が整いました。」と報告を。
それを見ていたファンは、「何かありそうですよ。」と。
二人はすぐヨンギに知らせます。
「チャン・ヒジェとその部下が燈燭房の付近をうろついていただと?」
「何か警戒しているようすでした。」とハン。
「この時間にまだ宮中にいるなんて妙です。何か企んでいるのは明らかです、ヨンガン。」とファン。
「今度は一体何を企んでいるのだ?」と言うヨンギに、チョンスは、
「間違いなく淑嬪媽媽とクム媽媽に何かするつもりでしょう。寶慶堂へ行かなくてはなりません。」
寶慶堂にやって来たヨンギとチョンスは、怪しい人影を目撃しあとを追います。
「誰だ?」と男に刀を向けるチョンス。
「わ、私はただ仕事をしているだけです。どうしてこんなことを?」と男。
そこへ「オラボニ!ヨンガン。どうしたのですか?」とトンイが。
二人の話を聞いたトンイは、
「チャン・ヒジェヨンガンが、私とヨニングンを?」
「はい、媽媽。間違いなく何か企んでいます。」
「ですが、殿下も宮中におられるのです。彼らもそんな無茶なことはしないでしょう。」
「彼らは今、追い詰められているのです。どんなことでもやる可能性があります。」とヨンギ。
「はっきりするまで、媽媽はより安全な宮殿に一時的に移動したほうがいいと思います。」
「そうなさってください、媽媽。」
トンイは、エジョンに言います。
「クムを、急いでここに連れて来てくれ。」
「オモニ、突然どこに行かれるのですか?」とクム。
「別の宮殿に行くのだ。」
「なぜですか?何か宮中にあったのですか?」
「クム!母の言うことをよく聞くのだ。今日お前は母の傍を離れてはならぬ。」
「えっ?はい、オモニ。」
「何があろうと、母の傍にいなければならぬぞ。わかったか?」
「わかりました、オモニ。」
二人を案内するヨンギ。
そのとき、「火事だ!火事だ!すぐに火を消して!」と言う内人の声が。
赤く染まる空を見上げるトンイ達。
「あれは、東宮殿ではありませんか?」
大騒ぎの宮中の内人達。
東宮殿の尚宮は、内侍に「殿下はどこにいるのです?」と。
「まだ、どこにいらっしゃるのかわからないのです。」
「わからないだと?それはまだ逃げ出していないということか?何をしておる?殿下をお捜しするのだ!」
ハン尚膳から知らせを受けるスクチョン。
「一体どういうことだ?東宮殿が火事だと?世子は?世子はどうなのだ?」
「申し訳ありませんが、まだ世子殿下の居場所はわかっておりません。禁軍が捜しております。」
ウンテクはトンイに状況を知らせます。
「火災は、想像以上に広がっています。Fire Guardが消火に努めていますが、消える様子がありません。」
「殿下はどうなのですか?殿下は安全なところに逃げられたのですか?」とクム。
「まだ殿下の居場所は確認できていないようです。」と言うウンテクに、驚くトンイ。
「それでは、殿下はまだお逃げになっていないということですか?」
「禁軍が捜索していますが、まだ誰にも殿下の居所はわかっていないのです。」
チョンスは、ハン達に訊ねます。
「捜査の様子はどうだ?殿下の居場所は?」
「義禁府の助けを借りて捜索しているところです。」
そのとき、人を集める鐘の音が。
「あれは、疊鐘(첩종:チョブジョン)ではないか?」
「火が手に負えないのでしょう。それで疊鐘を鳴らして、人手を集めているんですよ。アイゴー、どうしたらいいんでしょう、ナウリ。」とファン。
城門の前に集まってくる民衆達。
兵士に様子を訊ねるヨンギ。
「どうだ?準備はできたのか?」
「今は、できるだけ人手を集めているところです。」
「今夜は風が強く、火はどんどん広がっている。急がねばならぬ。」とヨンガン。
その様子を見つめていたヒジェは、手下に言います。
「行動を開始しろ。」
<回想シーン>
オクチョンの話を聞いたヒジェは、
「ですが、寶慶堂は警備兵で溢れています。寶慶堂だけでなく宮中の他の場所も厳しい警備が敷かれているのです、媽媽。それをどうやってくぐりぬけるのですか?」
「火災です、オラボニ。宮中で火災が起こりそれが手に負えなくなれば、疊鐘が鳴らされ、民衆が宮中に入って来ます。大きな火災を起こし、城門を開けるのです、オラボニ。そうなれば、大勢の人々が宮中になだれ込んで来ます。この騒動の中で、淑嬪とヨニングンは民衆を装った盗賊に殺されるのです。わかりますか?」
民衆に紛れ込んで宮中に入り込むヒジェの手下達。
「オモニ!世子殿下はどうなったのですか?ヒョンニムはご無事ですよね?」とクム。
それを聞いたトンイは、チョンスに言います。
「オラボニは、東宮殿に行ってください。世子殿下にお怪我があってはなりません。ですから、殿下を必ず見つけ出してください。」
「ですが、媽媽。」
「私とヨニングンは大丈夫です。ですから禁軍を連れて行ってください。急いで!」
「ウェス、殿下をお助けしなければならないんです。お願いです、ウェス!」
「わかりました、媽媽。ご心配いりません、媽媽。世子殿下はきっと大丈夫です。」
チョンスは、部下に指示を。
「お前達二人はここに残り、残りの者は私を一緒に東宮殿に向かうぞ。」
燃え上がる東宮殿の炎を見て、「世子!」と中に入って行くスクチョン。
ハン尚膳は慌てて彼を引きとめます。
ヒジェの手下とすれ違ったチョンスは、
「あれは、毛麻鞋(모마헤:モマヘ)ではないか?」
「毛麻鞋といいますと、靴底に毛を張り足音を消す盜兒(도아:トア)の履く靴では?」
不安そうにつぶやくクム。
「ヒョンニム様は、ご無事だといいんだけど…。」
そこにエジョンが。
「媽媽!準備が全て整いました。今から別の宮殿にお移りいただかなくてはなりません。」
「待て、エジョン。私は大丈夫だから、東宮殿に行って様子を見て来てくれぬか?お願いだ。火事が消えたのか、殿下がご無事なのかどうかを見て、それから移動することはできぬか?」
「はい、媽媽。」と出て行くエジョン。
入れ替わりに進入するヒジェの男達。
トンイは、警備兵に言います。
「お前達はここの警備をしていてくれ。」
内人達を斬り、クムに刀を向ける男達。
慌てて逃げ出すクムを、男達は追いかけます。
クムの宮殿にやって来たトンイは、「ヨニングン!エジョン!」と名前を呼びます。
「一体どういうことだ?」とトンイ。
「ひょっとして別の場所に移動したのではありませんか?」とポン尚宮。
「行って見て来てくれ。」
一人クムを捜すトンイは、倒れている内人達を見つけ驚きます。
そこに「オモニ!」というクムの声が。
クムに向かった刀を振り下ろす男の前に走り出るトンイ。
男の刀は、彼女の背中を斬りつけます。
第54話に続く!
Author:momochi
韓流ドラマに関する
覚え書きです。
更新も内容も気ままですが、
どうかよろしくお願いします♪
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